環境汚染にもどる
t10101#環境二の次・経済性優先の建設資材再資源化法案#00-04
3月半ばに、建設省と厚生省は「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設資材再資源化法)案」を提出しました。この法律の目的は、土木建設に関する工事に使用する特定の資材について、分別解体等と再資源化等を義務づけることによって、解体廃棄物の減量と資源の有効利用、廃棄物の適正処理を図り、生活環境の保全及び国民経済の健全な発展に寄与することにあるとされています。主旨としては、まことに結構なことのように思えますが、条文をよく読んでみると大きな問題があることがわかりました。
★建築物の基準は未定
まず、【建設資材】とは 土木建築に関する工事に使用する資材をいうとありますが、対象となる建築物その他の工作物が何かというと、これがはっきりしません。第九条で、その規模に関する基準以上のもの(対象建設工事)の受注者や自主施工者に分別解体等が義務づけられますが、具体的な基準は、今後政令で定めるとなっており、都道府県が条例で、独自の基準を定めることができるとの条項もあります。
また、第三条では、基本方針として、【特定建設資材】について、分別解体等及びその廃棄物の再資源化等を促進することがうたわれており、すべての建設資材に法の網をかけるのではなく、建設資材廃棄物全般については、単に排出抑制があげられているだけです。そのため、特定建設資材とは何かが大きな問題となります。
★特定建設資材は、コンクリート・木材だけ
条文によれば、【特定建設資材】とは、『コンクリート、木材その他の建設資材のうち、建設資材廃棄物となった場合におけるその再資源化が資源の有効な利用及び廃棄物の減量を図る上で特に必要であり、かつ、その再資源化が経済性の面において制約が著しくないと認められるものとして政令で定めるものをいう』とあります。いまのところ、政令では、アスファルトが指定されるようです。建設資材の中で、多く使用されている金属、ガラス、プラスチック類については、果たして、特定建設資材として指定されるのでしょか。このままでは、分別に人手とお金がかかる資材について、『経済性の面において著しく制約がある』として、切り捨てられそうです。
次に『分別解体等』とは、どういうことでしょう。条文では、
@『建築物その他の工作物の全部又は一部を解体する建設工事で、建築物等に用いられた建設資材に係る建設資材廃棄物をその種類ごとに分別しつつ当該工事を計画的に施工する行為』や
A『建築物等の新築その他の解体工事以外の建設工事で、当該工事に伴ない副次的に生ずる建設資材廃棄物をその種類ごとに分別しつつ当該工事を施工する行為』
を意味することになっており、古い建物を壊す時にでる資材廃棄物だけでなく、新築の建設途上で生ずる資材廃棄物も対象になるようです。
★再資源化等では、再利用は×、焼却は○
さて、【再資源化等】の中身をみてみましょう。条文では、再資源化等とは再資源化と縮減を意味するとあります。
【再資源化】は、@『分別解体等に伴なって生じた建設資材廃棄物について、資材又は原材料として利用すること(建設資材廃棄物をそのまま用いることを除く)ができる状態にする行為』とA『分別解体等に伴なって生じた建設資材廃棄物であって燃焼の用に供することができるもの又はその可能性のあるものについて、熱を得ることができる状態にする行為』の二種をさします。
また、【縮減】とは 『焼却、脱水、圧縮その他の方法により建設資材廃棄物の大きさを減ずる行為』をいうとしています。
この法案では、循環型経済社会のキーワードとされる3R、すなはちRecycle(再資源化)、Reduce(減量)、Reuse(再利用)のうち、前2者のみにしか目が向けられていないことが歴然としています。古い民家を解体して得た梁や板などを使ったり、サッシの窓などを再利用することは意図されていません。再利用するには、丁寧に分別解体を行なう必要があり、一気に建築物を壊せないから勧められないというわけでしょうか。また、建設廃棄物を燃やして熱源としたり、圧縮して減量化することも、再資源化等になるということは、てっとり早く建設廃棄物の容量を減らしてしまおうという行政や業界のあせりの現われかも知れません。
そのことは、第十六条にも見られます。『主務省令で、定める距離に関する基準の範囲内に当該指定建設資材廃棄物の再資源化するための施設が存しない場所で、工事を施す場合その他地理的条件、交通事情その他の事情により再資源化をすることは、相当程度に経済性の面での制約があるものとして主務省令で定める場合には、再資源化に代えて縮減をすれば足りる』とあります。近くに再資源化施設がなければ、燃やしていいというわけです。なんとも安易なことかと、あきれはてます。
★全く抜けおちている有害な建設資材廃棄物による環境汚染防止対策
経済性優先が強調されるい一方で、建設資材廃棄物による環境汚染防止の問題は全く省みられていません。
主務大臣が定める基本方針で、環境に関するする文言は第三条五項に『環境保全に資するものとしての特定建設資材に係る分別解体等、特定建設資材廃棄物の再資源化等及び特定建設資材廃棄物の再資源化により得られた物の利用の意義に関する知識の普及に係る事項』があるだけです。建設資材廃棄物の危険性については何もふれられていません。
現在の住宅には、多くの有害物質が使用されています。特定建設資材の木材についていえば、既に、私たちは、1994年7月の第5回「もうごめんだ!街の農薬汚染集会」で、建設省に要望書をだしましたが、その中で、有害物質を含む木材廃棄物をそのまま焼却処理することの危険性を指摘しました(下記要望書抜粋を参照)。
再資源化等に際しては、処理される建設廃棄物の中に有害な化学物質・放射性物質・病源体などが全く含まれないことが必須条件です。このことを忘れた法律は環境保全としての意味をなしません。
有害物質を除去して、建設廃棄物をリサイクルしようとすれば、分別解体の経費を押し上げ、結局、建築物の発注者の負担が大きくなるでしょう。
環境に優しい建設廃棄物の再資源化をスムースに進めるには、解体や修理しやすい建築物を設計する、建材に有害物質を使わない、分別が困難な複合材の使用はやめる等々を原則とした健全な家づくりからはじめることが必要です。
今回提案された法律は、建設廃棄物の最終処分場が満杯になったため、その容量を減らすことを至上命令に、つけ焼き場的に作ったもので、環境問題の真の解決策とはほど遠いものといえます。
当グループは、建設資材廃棄物の再資源化が、さらなる環境汚染につながらないよう、今後とも、行政に対してもの申していく積もりです。
★参考:建設省への要望書抜粋
次に問題視せねばならないのは、薬剤処理された木材が、廃棄・焼却処理される時に生成するさまざまな有害物質による環境汚染についてです。
建築廃材は、『廃棄物の処理及び清掃に関する法律』(『廃棄物処理法』)による規制を受け、既存の建築物を取り壊した時に生ずる廃材は産業廃棄物として扱われ、事業者がその責任で処理・処分をすることが義務付けられています。
廃材には、木くずのほか、金属くず、ゴムくず、コンクリートやレンガの砕片、廃プラスチック、ガラスくずなどが含まれます。これらを分別し、それぞれに応じた処理・処分の仕方がなされる必要があります。
木くずについては、『廃棄物処理法』施行当初は、一般廃棄物とされていましたが、83年の法改定で、建設業に係るもの(工作物の除去に伴なって生じたものに限る)木くずは、産業廃棄物の扱いを受けることになっています。
しかし、現行法でも、新築現場で生ずる木くず等の廃材(型枠、足場、大工・建具等の残材、包装、ダンボール、壁紙くず、廃ウエス、現場内で生じた燃えがら、ほか)は、依然として一般廃棄物としての規制しか受けません。
厚生省産業廃棄物対策室は90年5月31日付けの通達『建設工事等から生ずる廃棄物の適正処理について』の中で、木くず等について『(1)排出事業者は、木くず等を作業所(現場)内において、分別し、再生利用を図る。(2)再利用できないものについては、原則的に焼却処理し、できるだけ埋立処分しない。(3)木くず等の焼却は焼却施設を用い行なう』と指導しています。
同通達の木くず等の焼却処理の項で、『木くずには、構造材をのぞき、プラスチックとの複合材が多い。これらの焼却方法が適正でないと、環境汚染が生ずる恐れがあるので、適切な処理施設を有する焼却施設で、焼却し、野焼きは行なってはならない。』の記述がみえるものの、防腐・防蟻処理木材の焼却処理により新たな有害物質が生成する危険性については、何もふれていません。特に問題になるのは、CCA防腐木材と有機ハロゲン(塩素や臭素などを含む)系薬剤で防腐・防蟻処理された木材についてです。
CCA系水溶液は、重クロム酸塩、無水クロム酸、硫酸銅、砒酸などを含む薬剤です。防腐剤としての使用量は年間9万トン前後で、他の薬剤に比べ抜きにでています。発癌性のあるクロムや砒素化合物を成分としますから、処理工場での職業病やたれ流し公害のほか、火災や処理木材の廃棄焼却で生ずる重金属類の環境汚染が懸念されます。
塩素や臭素を含む有機ハロゲン系化合物は、ダイオキシン発生源として問題となります。PCP(ペンタクロルフェノール)などのフェノール系化合物は、それ自身の中にダイオキシン類を不純物として含みますし、他の有機塩素系の薬剤(BHC、クロルデン、ディルドリン、クロロナフタレン、その他塩素を含む化合物)も燃焼反応によりダイオキシン類を新たに発生すると考えられます。BHCやクロルデンやディルドリンはいまは使われていませんが、過去に使用されたものが木材中に残存しているはずです。また、有機塩素系薬剤に代わって登場した有機リン剤のなかにもクロルピリホス、テトラクロルビンホスのように塩素を含む物質があります。そのほかにも、塩素やその他のハロゲンを含む化合物が認定薬剤として使われています。これら薬剤で処理された木材の焼却は、ダイオキシン類の環境汚染、人体汚染へとつながる恐れがあります。
廃木材だけでなく、すべての建築廃材の処理については、環境汚染防止のための対策がぜひとも必要です。
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作成:2000-04-28