農薬の毒性・健康被害にもどる
t10205#跡を絶たない農薬事故・事件特集A農薬廃容器の不法投棄:クロルピクリンで人体被害#00-05
 5月1日、長野市大豆島にある長野市清掃センターで、不燃物を運び込んでいた業者や市民計7人が目や鼻、のどの異常を訴え、4人が入院するという事件が起こりました。市環境部の調べで、大気中から高濃度の土壌処理用殺虫剤クロルピクリンが検出されました。付近には、他に発生源がないことから、清掃センターに持ち込まれたゴミの中にクロルピクリン容器が混入していたものと思われます。
 この農薬は毒劇法で指定された劇物であり、被害者もでているため、法律違反の事件として、警察が捜査していますが、5日現在、まだ、容器は発見されていません。
 当グループは、農水省と厚生省へ事実関係をきちんと調査するよう申し入れています。

★業界による農薬空容器の処理案−紙袋は一般ゴミへ?
 ところで農薬容器の処理に関しては、昨年12月に発足した農業生産資材適正処理全国推進協議会農薬適正処理部会(構成メンバーは農薬工業会、緑の安全推進協会、JA全農、全国農薬協同組合の4組織で、農水省植物防疫課もオブザーバーに名を連ねている)が、3月に『農薬空容器の適正処理システム確立のための手引き』を作成しています。
 この手引きは、廃棄物処理法の改定に伴ない農薬容器(対象はプラスチック、金属、アルミニウム袋)が産業廃棄物として管理を義務づけられ、農家が個々に投棄したり焼却処理できなくなったことへの対応策を指針としてまとめたもので、農薬容器の収集・処理に関する実務マニュアル(産業廃棄物管理票、処理を委託する産業廃棄物業者との契約書、収集・処理のモデル体系、容器処理手順など)が示されています。
 注意すべきは、これがあくまでも空容器の処理についてあれこれ述べたものであることです。包装に残存農薬が付着しないよう、プラスチックボトルの場合は、空容器を水により少なくとも3回洗浄し、洗浄液は散布液として使いきることが前提になっているのですが、この指示がどの程度遵守されるのか疑問です。
 農薬工業会の調べによると、農薬容器の種類は、下記のようになっています。
  紙袋(プラスチック・アルミニウム箔ラミネート含):37.7%
  プラスチック袋:9.0%、 アルミ袋:17.1%
  プラスチックボトル:31.4%、紙パック:1.0%
  プラスチック缶:0.2%、金属缶:1.3%
  ガラス瓶:0.5%、その他:1.8%
 最も量の多い紙袋類は、市町村によっては一般廃棄物として処理可能であることが示唆されており、地域によっては収集・処理の対象外となる場合もある点が問題として残ります。

★残った農薬はどうするか
 さらに、問題なのは、使用残農薬(使用されないまま、開栓又は開封した農薬容器・包装内に残された農薬))については『農薬空容器と処理手法が異なる場合があることから、原則として収集の対象外として取り扱う。処分業者によっては、使用残農薬を処理できる場合もあるので、そのような場合には使用残農薬も収集対象として差しつかえない。』とされているだけで、手持ちの使用出来なくなった農薬を具体的にどう処理するかは明確でないことです。
 農家が収集処理経費の負担を避けるため、農薬が残ったままの容器を不法投棄する恐れも充分あるのですが、その防止対策は、何もないのです。そのことが、現実になったのが、長野の事件だといえます。

 農薬製剤については、農家の納屋に放置されたまま、3年間の最終有効期限がすぎてしまったり(当然、農薬の成分は変質し、農作物に薬害をおこしたり、人や環境に有害な物質が生ずることもあるので使用できない)、あるいは、保管期間中に毒性が問題となって農薬登録が失効してしまい、場合によっては使用規制されることもあります。これらの農薬の処理がでたらめに行なわれてしまっては大変です。使用禁止になったBHCや回収指示されたCNPを未だ保有している農家もあるのです。業界や農水省は、まず、農家の納屋に使い残しの古い農薬や有効期限切れの農薬がどの程度残っているかの実態を調査し、それを回収・処理するためのシステムを早急につくる必要があります。
購読希望の方は、〒番号/住所/氏名/電話番号/○月発行○号からと購読希望とかいて、 注文メールをください。
年間購読会費3000円は、最初のてんとう虫情報に同封された振替用紙でお支払いください。
作成:2000-06-28