室内汚染・シロアリ駆除剤にもどる
クロルピリホスよる健康被害を告発する『床下の毒物シロアリ防除剤』

t10502#クロルピリホス禁止を求める要望拒否される−被害実態に眼をつぶる業界の面々と何もしない行政#00-08
 シロアリ防除剤や農薬として製造・販売されている有機リン系殺虫剤クロルピリホスについて、アメリカで家庭用の製造・販売禁止と農業用の使用規制が強化されたため、私たちは、日本でもその使用禁止を求めて、関連業界と行政に対して要望書を送りました(記事t10301)。期限までに、回答がないため、何度か電話で催促した結果、日本しろあり対策協会(白対協)とダウ・ケミカル日本(株)から以下のような返事をもらいました。

【白対協は、認定取消と回収拒否】
 白対協には、クロルピリホスを含有するシロアリ防除剤の協会認定の取消と製剤回収を求めましたが、7月17日付けの回答で、二つの要望が拒否されました。

★EPAのQ&Aを都合のいいところだけ引用
 まず、アメリカでの措置に対する見解を
『今回の米国の措置は、クロルピリホスに新たな毒性が発見されたためではなく、多過ぎる使用量を減らして暴露量を軽減し、リスクを低下させようとするものです。
 使用規制の根拠として、食品については、従来動物実験で求めた体重当たりの無影響摂取量の100分の1を人間の許容摂取量としていたのを、脳の未発達な子供への影響を考慮して1000分の1に改めています。
 シロアリ防除処理の場合も、処理後1年間を通じての室内気中濃度の中央値が動物実験による無影響吸入濃度の100分の1以下としていたのを、同様の理由から、1000分の1以下として、使用規制の根拠としています。』と述べた後、
『今回の米国の措置は、同国内で汎用されているクロルピリホスの使用量削減により人間(とくに子供)への暴露を低減し、同等の効力を持つ代替薬剤への移行を意図したものであり、害虫の化学防除を否定したものではありません。
EPAがクロルピリホスの規制に関連して設けたホームページのQ&Aに、「すでにクロルピリホスで処理された食品を食べても安全ですか?」に対して「はい、安全です。今回の規制は現在の残留基準をさらに強化するためであり、いろいろな果物や野菜を子供に与えて健康な体を作るベネフィットは残留農薬にともなうリスクを上回ります」と答えています。
 また、「我が家はシロアリなどの害虫防除のため最近クロルピリホス処理をしましたが大丈夫でしょうか?」には「短期間の使用で現在の仕様通りに行なわれたことが確認されたら、差し迫った危険はありません。」としています。
 さらに「すでに出回っているクロルピリホス製剤の取り扱いをどうしますか?」には「購入してラベル通りの使用を行なうことは合法的で、重大な危険はありません。今回の規制は子供を守るためです。手持ちのクロルピリホス使用を止め、処分したくなったら、行政の担当部署や回収処理サービス機関に連絡をとってください」と答えています。』と、
 わざわざ、EPA(アメリカ環境保護庁)のQ&Aまで引用してくれました−しかも誤解を招くような都合のよい一部のみ−。

★EPAはシール剤で塞げなど具体的指示
 だいいち、シロアリ防除剤等で処理したが大丈夫かという質問で、直ちに危険でないといっているのは、短期の殺虫剤使用であって、5年間もの防除効果をねらうシロア防除剤のことをいっているのではありません。
 さらに答えの続きには「クロルピリホスで処理されたかどうかをを業者に尋ね、薬剤ラベルの注意書きとMSDS(化学物質安全データシート)を示すよう求めましょう。」とありますし、
 心配な人は「室内の換気をよくすること。シロアリ防除剤で処理した土壌に直接触れるような個所はシール剤などで塞ぐこと。床下などのダクトを点検し、開口部や接合部にシールテープを使うこと。」と具体的な指示もあります。
 また、日本では、クロルピリホスの室内空気汚染による経気摂取とともに、収納庫に入れた精白米などが二次汚染されることによる経口摂取も明かになっていますし、不用になった農薬を回収してくれる機関などどこにも存在しないことをお忘れなく。

  ★国が勧告しないから認定取り消しはしない
 白対協の文書はなおも続きます。
『日本におけるシロアリ防除用クロルピリホス原体の年間使用量は平成7年度で約470トン−全シロアリ防除剤原体の約60%−でしたが、現在のシェアは約20%以下に低下し、非有機リン系薬剤への転換が進んでいます。
 日本の人口は米国の約半分ですが、両国のシロアリ防除剤の一人当たり使用量を比較すると日本のそれが著しく少ないことは明かです。』とした上、
『認定取消は行ないません。認定取消は、@これまで知られていなかった健康障害のリスクがあきらかになり、国又は権威ある研究機関が使用禁止を勧告している。A環境への蓄積を含む同様の健康障害が明かになり、化審法の特定化学物質に指定されることになった。などの場合に行なうものであり、クロルピリホスはこれに該当しないからです。』と回答しました(同時に回収を行なう必要はないともいっています)。

★白対協は確信犯
 『米国の措置は、クロルピリホスの総使用量低減の一環として、シロアリ防除剤としての使用を規制するものです。
 日本では、住宅環境におけるクロルピリホスの使用量は米国よりはるかに少なく一般消費者が自由に購入し、使用できるようになっていません。当協会は同等以上の性能をもつクロルピリホス以外の防除剤も多く認定しており、すべての認定剤について毒性や安全性データシートを公表し、施工業者会員にはその他の性質を含めた説明を十分消費者に行なって、選択できるようにしています。
 非有機リン系防除剤のシェア上昇は、多くの防除剤の開発や各種の情報に基づく消費者の選択の結果であり、クロルピリホスに対して米国のような規制措置を取る必要はないと考えています。』ということです。
 白対協の会員業者が、クロルピリホスはその毒性が問題となりアメリカで使用禁止となりましたと、消費者に説明するなんて信じられません。
 非有機リン系薬剤のシェアが減ってきたのは、まず、被害者が多くでて、その声を私たちのような市民団体が、業界や行政に訴えた結果であることに何もふれず、これまで知られていなかった健康障害の毒性が明らかになり、国や権威ある機関が禁止を勧告しなければ、認定を取消さないという協会の態度には、激しい憤りをおぼえます。
 クロルピリホスを認定薬剤のまま放置するということは、認定薬剤だから安全だとの誤った情報を消費者に与え、確実に健康被害者を増やしていくことにつながるわけですから、協会はまさに確信犯だといえます。

【ダウ・ケミカル日本は、販売を継続すると回答】
 クロルピリホスメーカーのダウ・ケミカル日本は、7月13日付けで回答を送ってきましたが、販売を継続するという内容で、6月20日に報道向けに出された文書と同じものでした。
 同社はアメリカでのEPA(環境保護庁)との合意事項に触れたあと以下のように述べています。
『ちなみに日本では、クロルピリホスの使用は、農薬取締法によって、りんご、ぶどう等の果樹や茶・かんしょ等、及び芝での登録がなされております。
 したがって、これらの作物への使用は製品容器に添付されているラベルの使用方法、注意事項を遵守して使用する限り何ら安全性に問題はありません。一般の家屋周囲では庭等の芝生害虫への適用がありますが、これも農薬取締法に基づき使用が許可されております。
 また、建築中・建築後の家屋でのシロアリ防除剤としての使用は、日本しろあり対策協会の認定を受けております。
 これらの法律や認定に準拠し、当社は日本では、クロルピリホスを含有する農薬の販売を今後とも継続してまいります。』

★アメリカと日本は評価の尺度が違う
 ダウ社は、日本でもクロルピリホスによる健康被害が起こっていることにに眼をつぶり、自らの責任を転嫁するため以下のように述べています。
『米国と日本でクロルピリホス対応に異なった結果が生じたのは、その毒性試験の評価の違いによるものです。
 日米両国とも同一毒性試験成績を評価していますが、日本や世界保健機構(WHO)は個々の剤を評価の対象としているのに対して、米国では、同じ作用機作(効果が現われるメカニズム)を示す有機リン全体を一括して評価しているため安全性の尺度が異なったものです。』
 アメリカの毒性評価の仕方は、まさに、私たちが常日頃から主張しているやり方であって、多くの農薬を食べ物や水、空気から摂取している複合汚染下の現況では、個々の農薬に対して評価するだけの日本の方法より、ずっと科学的なものです。
 アメリカでEPAと合意したということは、環境保護団体の運動の結果、メーカーであるダウが総量規制をめざす安全尺度が妥当であると認めたことにほかなりません。

★いっぽうで薬剤大量散布は危ないと・・
 ダウ・ケミカル日本はクロルピリホス製剤の販売を継続するというものの、7月21日付けの化学工業日報にみるように
『薬剤を大量散布する従来工法。その安全性に対する不安の声があります。−床下や庭に殺蟻剤を散布するのが、一般的な防除工法。しかし、施工後に薬剤の臭いで気分が悪くなったり、目やのどが痛くなる例も、まれには見られます。シロアリを防除したいが、家族にアレルギー体質の人や小さな子供がいるため迷っている、そんな方にもお勧めしたいのがセントリコン・システムです。−』
 というクロルピリホスを使わない方法の宣伝をしていますから、何をかいわんやです。

【煮え切らない厚生省回答】
 クロルピリホス使用中止要望は厚生省、建設省にも提出しました。両省とも行政の常として文書回答はしたくないと頑張るので、とりあえず、口頭での回答を報告します。

★「ご懸念はよくわかります」と生活化学安全対策室
 VOCの指針値を検討している生活化学安全対策室は、村上室長が「クロルピリホスについて、ご懸念の点は私もまったく同感です。アメリカであれだけの措置を講じたわけですから、日本でも同じような考え方で対応しなければならないと私個人は考えています。
 防蟻剤についてはアメリカと同じようなスケジュールでだんだんなくしていくことは必要だろうと考えています。」と、述べ期待を抱かせました。
 しかし、具体的に何をするかということになると、シックハウス対策検討会で、すでに方針が決まっているクロルピリホスの室内指針値を設定することしかありません。
 この方針もアメリカでの規制が発表されて、急遽、決められたものです。
 直接的な法規制がないため、生活化学物質安全対策室でできることはこれくらいなのでしょうか。問題意識を共有していると主張する割にはやることが少ないではないかというのが感想です。

★残留基準を見直すと食品化学課
 クロルピリホスの残留基準を見直せという要望に対して、厚生省食品化学課は、「農産物の残留基準は既に設定されているものについても、順次、見直しを行っていくことになっている。クロルピリホスについても検討中」とのことでした。
 これはEPAが規制を強化したからというのではなく、98年に出された「残留農薬の基準設定における暴露評価の精密化」に基づいて行われるものだとのことでした。
 一応、クロルピリホスの残留基準の見直しは検討されているようですが(結果がでるのが早くて来年度という遅さであるが)、だからといって、基準が強化されるとは限らないわけで、グリホサートのように6ppmから一気に20ppmに緩和される場合もあります。食品衛生調査会を監視していく必要があります。

【薬剤の毒性を評価できないから何もしないと建設省】
 建設省は住宅指導課が担当とのことで、8月に入ってから電話をしてきました。
 本来、住宅指導課は白対協を指導する部署として、シロアリ防除剤に関して建設省に要望する度に「白対協に聞いてみる」「白対協がこうしている」と述べてきた部署ですが、クロルピリホスの認定薬剤取り消しを指導するようにという要望に対して、
「独立した組織である白対協に定款違反でもないのに指導はできない」と見解を変えてきました。
 建設省はクロルピリホスの人体への影響を評価できないとのことで、現在、国のどの機関も正式な評価がない段階で、クロルピリホスの規制は難しい。
 また、たとえ、厚生省のシックハウス対策検討会がクロルピリホスの指針値を出したとしても、ホルムアルデヒドのように、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」で建材を評価することも難しいのではないかと一歩後退した回答でした。
 そして、要望書の1、2、4、5に関しては建設省が答えることではないとして、3の「クロルピリホスを含む製剤の毒性について使用者に周知徹底させるべきと思いますが、どう考えられますか」という要望に対してのみ、
「白対協と話し合ってみる余地はあるが、白対協も一定のことはしている。毒性情報も公開している」と回答しました。
 指導できないといいながら白対協の弁護だけはしっかりやっているわけです。白対協の「毒性情報公表」がどの程度のものかは現在、調査中です。
 要するに、クロルピリホスに関しては建設省は何もしないということです。
「建設省は防蟻剤を使用するよう推奨しているではないか」と聞くと、「建設省は防蟻剤を使えとは言ってない、建築基準法には防蟻措置について『必要に応じ』とあるので、使用推奨ではない」と、今までのことはほおかぶりするつもりのようでした。

【業界・行政の回答をバネに有機リン剤の規制強化を求めていこう】
 サリンに代表される神経毒性を有する化学兵器の研究に端を発した殺虫剤クロルピリホスが有機リン剤特有の毒性を人体に示すことは、以前から知られていたことです。
 アメリカで、EPAとメーカーが合意したのは、環境被害や健康被害実態を調査した環境保護団体による規制を求める運動が行政をつきあげたのだということを忘れてはなりません。日本でもアメリカでも、有害化学物質について、国が法律制定や規制措置をとる前に、必ずといっていいくらい環境汚染や消費者・労働者の健康被害とう犠牲が存在してきたのです。
 白対協のシロアリ防除剤による健康被害に関する調査では施工一千戸に一戸、年間約200件の訴えがあるとしています(国民生活センターの調査では、5、6件に1件の割合で被害がある)。おまけに、シロアリ防除業者で白対協に加盟しているのは4分の1という現状では、クロルピリホス剤の製造販売がつづく限り、健康被害を受ける人は絶えることがありません。
 日本には、化学物質を規制する法律として急性中毒の防止を目的とする毒劇法と難分解性・蓄積性のある有害物質の製造販売の規制を目的とする化審法があります。
 しかし、人の生活環境で多用されるため、一般環境よりも高濃度で見出だされ、直接人の健康に被害を与えるシロアリ防除剤のような化学物質を取り締まる法律は、現行法として存在していないのです。
 業界は法がなければ、何をしてもいいというわけではないでしょう。自らが製造・販売・使用した化学物質による健康被害者の訴えに眼をつむり、法的規制がないのをいいことに、ひたすら企業活動つづけるという時代は20世紀で終わりにする必要があります。

★新しい毒性評価に立った法律を
 今回の回答をみると、白対協は、脳の未発達な子供に対する有機リン剤の毒性評価を従来の評価よりも10倍厳しくすることには異議がないようですし、ダウ・ケミカル日本は、有機リンの総量規制の有用性を指摘してくれました。
 これらの毒性評価法は、いままでになかったものです。このアメリカで定着しつつある評価方法を、日本でも実現させていく必要があります。クロルピリホスだけでなく、総摂取量規制の観点から、同じ作用機構をもつ有機リン剤とカーバメート剤全体についての使用規制を強化していくことがのぞまれます。
 もちろん、その場合、日本で多用されている有機リン剤のディプテレックスやスミチオンなどが規制対象に入ってくることはいうまでもありません。
 さらには、環境ホルモン作用等の視点も加えて、シロアリ防除剤のような生活環境汚染物質の規制をめざすための新たな法律の制定を求めて行きましょう。

購読希望の方は、〒番号/住所/氏名/電話番号/○月発行○号からと購読希望とかいて、 注文メールをください。
年間購読会費3000円は、最初のてんとう虫情報に同封された振替用紙でお支払いください。
作成:2000-08-25