農薬の毒性・健康被害にもどる
t10602#@武田薬品の殺虫剤「アリアトール」の回収について#00-09
 武田薬品がシロアリ・ワラジムシ退治用の殺虫剤の回収に乗り出したと速報(武田薬品)を前号に載せましたが、同社に宛てた質問状に回答がきましたので、その要旨を以下に示します。

<質問と回答>
【質問1】回収対象である3種のアリアトール製剤の成分は何か。
【回答】アリアトールAには、活性成分として有機リン剤ホキシム(バリサイド)が0.47%、またアリアトールSに は、有機リン剤MEP(スミチオン)とピレスロイド剤d−フタルスリンがそれぞれ0.70%と0.20%含有され、ほかにイソパラフィン/メトキシプロパノール混合溶剤とジメチルエーテル噴射剤が43ー56%含まれる。

【質問2】3種のアリアトールは薬事法らの対象となっているか。
【回答】いずれの製剤も対象が木材害虫や不快害虫であるため薬事法の対象製品ではない。また、シロアリ防除業者用の薬剤でないため日本しろあり対策協会の認定を受けたものではない。製品中の各成分は化審法をクリアーしており、製品は高圧ガス保安法、消防法、労働安全衛生法に準拠している。

【質問3】アリアトール製剤についてMSDSを送付されたい。
【回答】MSDSは、取り扱い事業者や医療機関に提供し、一般消費者には送付しない。

【質問4】アリアトール製剤の数量を月別都道府県別出荷数量を示されたい。
【回答】回収対象の総出荷量は1999年10月から2000年8月上旬までに製造したA剤300ml品13万本、S剤300ml品14万本、S剤420ml品8.5万本である。

【質問5】液漏れの欠陥がわかったの年月日をいつか。社内検査でみつからなかったか。
【回答】 製造工場での製品検査では、確認されず、 2000年7月26日、奈良県の消費者から製品欠陥の通知を受けたのが最初で、すみやかに原因究明した結果、一部製品のノズルのバルブ部分に亀裂が生じていることが判明し、8月4日に、回収する旨販売店に連絡した。

【質問6】アリアトール製剤の不良品数はどの程度か。
【回答】正確には不明。

【質問7】不良品によると思われる苦情や被害はいままで何件報告されていますか。
【回答】クレーム通報は7件でいずれもの噴射時の液漏れで、そのうち人体被害1件(発生年月日と場所回答なし)。噴射時にジメチルエーテルがの気化熱を奪い周囲を冷却したため1時間にわたる作業により凍傷を引き起こした。

【質問8】開封前及び開封後保管中に成分が漏れることはないか。
【回答】液漏れはおこることはない。

【質問9】今後の対策について。
【回答】ノズルバルブを改良した。

【質問10】回収と処理はどうなっているか。
【回答】消費者から販売店又はタケダ園芸を経て、製造工場に持ち込まれ、適切に処分される。

<法の網がかからないのが問題>
 今回の武田製品の殺虫剤回収事件は、幸い大きな人体被害につながりませんでしたが、薬事法や農薬取締法の対象とならない、農薬と同じ成分を含んだ木材や不快害虫用殺虫剤が、なんの規制もなく製造販売されており、欠陥商品がでてもメーカーまかせという無法状態で市場に出回っているいうことが明かになりました。
 また、殺虫成分ではない補助成分が、環境や人の健康に被害を及ぼすものであることを忘れてならないという教訓をも与えてくれました。このことは、農薬であれ、殺虫剤であれ、私たちの身の回りで安易に化学物質を使用することが、如何に危険であるかということを指し示すものです。
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作成:2000-09-25