行政・業界の動きにもどる
t10603#A農薬工業会の無登録農薬追放キャンペーンの真意はどこに?#00-09
 前号で、神奈川県の消費者団体が調べた無登録農薬の実態を報告しましたが、農薬メーカーの集まりである農薬工業会も、この問題に神経質になっていることがわかりました。
 福谷サンケイ化学社長が業界誌「農薬時報」520号で以下のように述べています。
「最近自宅のそばのディスカウトストアへ行くとミョーな除草剤が売られています。それは、500mlのボトル入りですが、聞いたこともないような会社名で商品名と除草剤としか表示のないもので、しかもべらぼーに安い。 −中略−
 これら農家が登録のない農薬を食用作物に使用することも充分予想できます。小生が最も恐れるのはこれを、一般消費者が知った時どのように感じるか。不安を感じると思います。これは、業界全体に対して、さらに悪いイメージを抱く結果になりかねません。」

★利益大事の農薬工業会の無登録農薬追放キャンペーン
 農薬工業会は本年度の事業計画の中に無登録農薬等の追放について、農水省、地方公共団体への要請及び関係団体と協調し対応について検討を図るとして、「無登録農薬対応部会」なるものをもうけ、5つの方針を打ち出しました。
@地方分権一括法の施行に伴ない、農林水産省へ農薬取締法に係る取締り・指導の明確化の要請。
A量販店への立ち入り調査、指導の徹底を継続要請していく。
B農薬危害防止運動実施要綱へ無登録農薬の追放を織り込むべき要請をする。
C「適正な農薬の販売について」地方自治体が取り組んでいる事例を全国に拡大を図る。
D関係団体と共同で役割分担を決め、無登録農薬の排除に努める。
 同工業会は、早速、4万2000枚の「無登録農薬に、安全性の裏付けはありません」というポスターを農協などに配布して、「農耕地に、無登録農薬を売らない、買わない、使わない」とのキャンペーンに乗り出しました。
 私たちがいくら求めても、農薬毒性・残留性データ・不活性成分や不純物の含有量は企業の財産であり、公開できないとする業界が「無登録農薬が野放しの状態でひろがって、ヒトや作物、環境に悪影響を及ぼしかねない」という資格があるのかどうか疑わしくなります。
 非農耕地用無登録農薬は現行の農薬取締法で規制できないので、誰でも合法的に製造販売できます。もし、無登録業者が、自分たちの販売する非農耕地用の薬剤は成分も組成も登録農薬と全くかわりません。効き目は同等、不純物はこんなに少なく、しかも値段は安いですと宣伝すれば、農薬業界が反論する余地はないわけです。
 問題は、無登録農薬を農耕地で使用することの是非にありますが、そもそもの農薬取締法の制定目的が、農家に高品質の農薬を供給することにあり、現行法では、農薬の製造販売の規制はあっても、使用する農家に対する罰則はありません。まあ、農家が不利益を被るとすれば、製剤がインチキで毒性が強かったり、作物栽培に対する効果がなかったり、薬害のため収穫が落ちたりするか、農作物への残留値が基準を越えて売れなかったこと等自己責任による損失ぐらいでしょう。
 農薬工業会が本気で、無登録農薬をやめさせようとすれば、非農耕地用農薬も登録がなければ、製造販売できないよう、また、無登録農薬を農作物に使用した農家が罰則を受けるよう農薬取締法改定すればすむことなのです。彼らが何故そういう本質的な要求をださないのか理解に苦しみます。農薬のような複雑な化学物質を簡単に合成することが出来ないことを思えば、農薬メーカーの中に無登録業者に活性成分を売って儲けているものがいる???って声が聞こえてきそうです。

 私たちは、法規制のない非農耕地用農薬にも新たな法の網をかぶせるとともに、人の健康や環境に悪影響を与える有害登録農薬の使用をできる限り減らしていくことを目標にした運動を進めていきたいと思います。
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作成:2000-10-25