食品汚染・残留農薬にもどる
t10605#東京都衛生研究所の1998年度農作物残留農薬調査報告から#00-09
 東京都衛生研究所は、同所年報50号で、98年4月から99年3月にかけて、東京都内で入手した農作物の残留農薬調査結果を報告しています。
残留分析の対象となった作物は
国産慣行栽培作物:    15種  47検体
無・減農薬栽培表示作物: 16種  36検体
輸入農産物:       68種 250検体
農薬の種類は
           国産作物 輸入作物
有機リン系農薬:   42種   41種
有機塩素系農薬:   26種   20種
カーバメート系農薬: 23種   24種
その他:       19種   24種
となっています。
表1には国産の、表2には外国産の農作物について、何らかの農薬が検出されものの検出値を示しました。
 表1 国産農作物の残留農薬調査結果 −省略−
 表2 輸入作物の残留農薬調査結果  −省略−

★国産野菜・果実
 分析対象となっている農作物は、慣行栽培野菜では、キャベツ・レタス・ピーマン・ホウレンソウ・コマツナ、食用菊と昨年とかわりませんでしたが、果実では、リンゴ・ナシ・ミカン・メロン・モモ・カキ・スイカと大幅にふえました。一方、無・減農薬栽培も対象作物の種類が前年の4種から16種に増えています。
 農薬の検出率は慣行栽培で、有機リン系21%、カーバメート系4%(前年25%)、有機塩素系38%、無・減農薬栽培では、全農薬で8%でした。

 表をみると、環境ホルモンの疑いのあるメソミル、エンドスルファン(=ベンゾエピン)、プロシミドン、クロルピリホスなどが目につきます。登録失効したはずのビンクロゾリンがホウレンソウで290ppbも検出されています。無・減農薬栽培では、キュウリ・トマト・ピーマンにメソミルやプロシミドンが検出されています。
   前年高濃度のイプロジオンとプロシミドンが検出された食用菊は、今年度は1検体のみですが、残留農薬はNDでした。

 果実については、今回、種類と検体数が多かったせいか残留農薬が多く検出されています。果皮を含む果実(全体)で、最も高かったのはナシのチオジカルブで980ppbでしたが、果肉では検出限界以下(ND)となっています。多くの果実と農薬で、果実(全体)よりも果肉中の残留農薬は低くなるかNDとなっていますが(表中の果実(全体)の項のみに数値記載のあるものは、果肉ではすべてND)、メロンのヘプタクロルエポキシドとメソミル及びモモのミクロブタニルは、果実(全体)も果肉も同程度の値で検出されています。

 複数の農薬が残留していたのは果実(全体)で52%、果実(果肉)18%でした。特にモモの場合は、78%と高い比率で、クロルピリホス80/プロシミドン380/ビテルタノール190各ppbという三農薬が残留した検体もありました。

★輸入農作物
 対象となった農作物のうち23種に28種の農薬が見出だされました。

 野菜30種については、中国産のオクラに3600ppbという高濃度のNACが検出され、とても食用に適さないにも拘わらず、市場回収が行なわれたかどうか不明です。中国及び台湾産サヤエンドウでは、トリアジメホンとトリアジメノール(これ自体農薬としても使用されるほか前者の代謝物でもある)の検出が目立っています。ジャガイモには、依然として、国内では適用が認められない発芽防止剤CIPC(クロルプロファム)が、カナダ産冷凍ポテトで540ppb残留しており、アメリカ産のマッシュポテトでも検出されました。

 柑橘類では、例年通り、OPP、TBZ、イマザリルの3種のポストハーベスト農薬が高い検出率で見つかっています。最高残留値を示したのはいずれもアメリカ産オレンジ(全体)のOPP6900、TBZ4300、イマザリル2700ppbで、果肉へも移行していました。ほかに、200ppbを越えて残留していた農薬は、オレンジのDMTPとNAC、グレープフルーツのエチオン、レモンの2,4−Dで、いずれもアメリカ産のものでした。

 柑橘類を除く13種の果実に、13種の農薬が検出されました。バナナでは、クロルピリホスが50%の高い検出率で見出されたほか、ミクロブタニルとビテルタノールが200ppbを越える数値で残留しているものもあり、一部果肉に移行していました。フィリピン産のパイナップルには昨年同様、トリアジメホンとその代謝物トリアゾメノールが、また、マンゴやライチには、日本では、使用できないメチルパラチオンほかの有機リン剤の残留がみられました。アメリカ産ブドウのNAC及びニュージーランド産イチゴのキャプタンはいづれも2000ppbを越える濃度で、前者は日本の残留基準1000ppbの2倍でした。

 7種の豆・種実類では、いずれもNDでしたが、中国産ウーロン茶とインドやフランス産の紅茶にDDTやジコホールほかの有機塩素系農薬が検出されました。ウーロン茶のジコホール1100ppbが高いのはDDTの代謝物なのかどうかを含め気になるところです。

 5種の穀類のうち、バクガには、ポストハーベスト農薬とみられる3種の有機リン剤の残留が認められたほか、オートミールにもMEPが検出されました。
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作成:2000-10-25