農薬の毒性・健康被害にもどる
t10702#農業現場での農薬中毒−三鷹市でクロルピクリン事故が−#00-10
 9月14日、東京の三鷹市で、農家が土壌処理に用いたクロルピクリンくん剤で、住民10数人が目やのどの痛みを訴え、救急車で運ばれるという農薬中毒事故が起こりました。東京近郊では、94年9月にも、東村山市で同様な事故が起こっています(消防庁の調べでは、同年度に発生したクロルピクリン事故は5件)。クロルピクリンは揮発しやすい刺激性劇物であるため、住宅近くでは、使用してはいけないことになっているのに、類似事故が何度も起こっているのは問題です。
 クロルピクリン原体は年間7376トンが国内で生産されているほか、2613トンの輸入品があります(いずれも97年)。また、日本で最も使用量の多い殺虫剤で、97年の都道府県別クロルピクリンくん蒸製剤出荷量は、群馬県(1596トン、茨城県(956トン)、長崎県(601トン)の順になっており、多用される地域での大気汚染も問題視されています。
 今後、地球温暖化ガスである臭化メチルの土壌くん蒸剤としての使用がモントリオール議定書により禁止されるため、その代替品としてクロルピクリンの名が上がっているので、使用量がさらに増加することが懸念されます。

★増えつつある農薬中毒事故
 ところで、農薬による事故件数はどのようになっているのでしょう。農水省植物防疫課の調べによる農薬中毒数の推移を表に示してみました。これらの数値は、農業現場での農薬使用による急性中毒者数で、農水省に報告があがったものだけです。実数とは離れている可能性が否定できないものの、一時期30人/年以下に減っていた中毒者数は、このところ増加傾向にあることがわかります。98年には、散布中の死亡事故も1件でています。
 てんとう虫情報では、農薬関連物質の被害例を何度もとりあげてきましたが、国の機関で、中毒統計をまとめているところはなく、あげられる数値は氷山の一角でしかありません。生活環境を有害化学物質から守る法律の制定のためにも、農業用以外に家庭用や防疫用薬剤、シロアリ防除剤などを含めた農薬関連物質による中毒被害の実態を明確にする統計資料が必要だと思われます。
      表 農薬中毒者数の推移(単位:人)
               -農水省植物防疫課調-

  年度        散 布 中        誤  用      合計
            死亡    中毒    死亡  中毒

  1985       4       87      7      8      106
  1986       3       53      3      8      67 
  1987       6       37      3      8      54 
  1988       1       33      6      5      45 
  1989       2       22      2      22     48 
  1990       1       78      2      4      85 
  1991       2       12      4      9      27 
  1992       0       14      3      3      20 
  1993       0       11      5      3      19 
  1994       0       7       3      15     25 
  1995       0       21      3      2      26 
  1996       0       60      2      6      68 
  1997       0       29      4      14     47 
  1998       1       44      2      6      53 
  1999       0       41      0      18     59 

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作成:2000-11-25