環境汚染にもどる
t11305#農薬の輸出と海外進出企業について農水省へ要望書#01-04
 海外に進出している日本の農薬企業の実態と農薬の輸出状況を知るため、「農薬の輸出入ついて」(54農蚕第6456号:昭和54年9月26日付)及び「農薬製造業の海外投資行動等について」(55農蚕第1204号:昭和55年3月5日付)の2つの通達を出し、業界を指導している農水省にいくつかの要望を行ないました。
★インドの農薬工場で殺虫剤パダンにより労働者死亡
 インドの農薬工場労働者からの2月23日付けの電子メールが転送されてきました。日本企業「タケダ」薬品(と思われる)がインドで製造しているパダンというブランド名の農薬を作る工場で働いていた労働者の組合からの手紙で内容は『1988年の操業開始以来、殺虫剤パダン製造工場の労働者がさまざまな健康被害に苦しむ中、一名が死亡したため、組合側が抗議したところ、企業側がインド北部に生産拠点を移し、工場関係者はすべていなくなってしまったため、Good Samaritan Advocate (イギリスの教会団体?)の助けを得て訴訟を起こしており、更なる支援を要請する。』というものでした。

 このような日本の農薬企業の海外での事故などに関して、農水省は、きちんと報告す るよう指導しているはずなので、早速問い合わせました。窓口との電話でのやりとりで 、農水省はタケダの事件を知らなかっただけでなく、前記の通達の存在も知らないとい うのです。
 さらに、昭和55年の通達は、一定期間の期限のもとに、効力がなくなっており、私たちの質問に答えるデータもないという返事です。海外投資についての農薬業界への通達に期限があり、あれは昔のことよなんていうのは、滅茶苦茶です。通達を廃止するには、その旨の別の通達がいるはずです。怒り心頭!この件では、別途、農水省の責任を追及する積もりです。
★ダイオキシン含有PCNBを輸出しているのは誰だ?
 ダイオキシンやHCBを不純物として含み、散布地域での環境汚染が顕著な殺菌剤PCNB(キントゼン)は、原体メーカーが製造を自粛し、2000年3月26日に登録失効していますが、農薬要覧を調べたところ、表1のように、国内向け生産が止まったあと、輸出が増加していることがわかりました。
 農薬取締法で、海外への農薬輸出は法の適用が除外になっていること自体が問題ですが、国内で製造をやめた有害農薬を海外へ輸出する企業の姿勢は許せません。
 国内での製剤メーカーの生産量は表2のように判明していますが、ダイオキシンを含有するPCNBの輸出をどのような企業が行なっているかを、明かにしていきたいとの思いにかられます。
 そこで、下記の要望書を農水省におくりました。
   表1 殺菌剤PCNB生産と輸出量推移(単位:トン)

   年度    原体生産量 製剤生産量 原体輸出量 製剤輸出量
   1992      753        5390       391         -
   1993     2356        4966      1298         -
   1994     2012        3395      1219         -
   1995     1636        2107      1244         2
   1996     1481        1244      1134         8
   1997*1   1126         444       992        15
   1998      932          -       1000         -
   1999*2   1294          -       1595         -
   2000        統計データ不明

 *1:環境庁がPCNBにダイオキシンが0.13ppbTEQ含有されていることを公表
 *2:当グループがダイオキシン問題で、原体メーカーのひとつ三井化学に
   「PCNB製剤について、製造中止された年月、及び回収された場合は、
   その量と処理方法を教えてください。」との質問状をだしたが、回答なし。

   表2 PCNB製剤上位六社の生産量  
             (単位:トン)
     製剤メーカー 1995年 1996年 1997年  
     北興化学      902    498    279    
     日本農薬      336    192      6    
     サンケイ化学  324    117     -     
     大日本インキ  295    226     -     
     北海三共       96    119    108    
     三明ケミカル   61     81     50
     注:原体メーカー別の生産量は不明
★農薬の輸出入及び海外での農薬生産について要望書
@「農薬の輸出入について」に関して、1980年以後いままでに輸出された農薬で、我が国で登録が失効した後に輸出されたものがあれば、年度毎に、その農薬の名称と製剤・原体別、輸出相手国別の数量を教えてください。

A同様に、1980年以後いままでに輸出された農薬で、我が国において登録されていない農薬(いわゆる輸出用未登録農薬)があれば、年度毎に、その農薬の名称と製剤・原体別、輸出相手国別の数量を教えてください。

Bこの通達以後、貴省が作成した農薬輸出入リストに記載されている農薬名を教えてください。現在にいたるまで、追加/削除されたものは、その年月日も併記してください。

C「海外投資行動等について」に関して、貴省に報告のあった海外投資先での労災事故、農薬工場周辺の環境汚染や人体被害について教えてください。1980年以後、現在にいたるまでの期間を対象として、以下の形式で回答をお願いします。
 発生国/発生企業(海外企業名と関連する日本企業名)/発生年月日/発生企業での生産内容/発生事故や環境汚染の内容と経過など/貴省の対応

D国際的な使用禁止条約が検討されている残留性有機汚染物質(いわゆるPOPs系農薬を含む)について、日本企業の海外投資先で、過去において生産していたところ、又は現在も生産しているところがありましたら、教えてください。1980年以後、現在にいたるまでの期間を対象として、以下の形式で回答をお願いします。
 POPs農薬名/国名/企業名(現地企業名及び関連する日本企業名)/生産量/生産経過(何年から生産して何年に止めたかなど)

E日本から輸出された農薬や海外投資先企業で生産販売された農薬を使用したために、現地で発生した人畜、農作物、水産動植物に対する危被害等の事故について、貴省に報告された事例を教えてください。1980年以後、現在にいたるまでの期間を対象として、以下の形式で回答をお願いします。
 農薬名/国名/企業名(輸出農薬の場合は日本の企業名。海外投資先の場合は、現地企業名及び関連する日本企業名)/発生年月日/事故内容/その原因と対策

F農薬製造業の海外投資について、貴省に報告されたものを教えてください。1980年以後、現在にいたるまでの期間を対象として、以下の形式で回答をお願いします。
 国名/企業名(現地企業名及び関連する日本企業名、日本企業の会社別出資率)/生産内容(農薬名や生産量)、生産推移(何年からどのような農薬を生産し、何年にやめたかなど)、生産経過(工場施設の増設や公害防止施設の整備など)

Gインドの農薬工場労働者から、殺虫剤パダンで被害を受けて、訴訟を起こしている旨のメールがきています。
 手紙の内容について、調査の上、事実経過がわかりましたら教えてください。

H殺菌剤PCNBは国内製剤生産量が97年の444トンを最後に、98年、99年はゼロとなっているにもかかわらず、海外へ原体輸出量は97年992トン、98年1000トン、99年1595トンと増加傾向にあります。
 日本の原体メーカーは輸出用に生産しているのですか。
 2000年を含め最近5年の輸出企業名別、輸出相手国別の数量を教えてください。同剤にダイオキシン類が含有されていることが、判明していますが、このことは、輸出相手国に知らされていますか。

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作成:2001-05-26