農薬の毒性・健康被害にもどる
t11806#三井化学からクロルピクリンとPCNBについて回答#01-08
 てんとう虫情報115号で報告したように、土壌くん蒸剤クロルピクリンの容器漏れとダイオキシン含有殺菌剤PCNBの輸出問題に関して、メーカーの三井化学に質問状を送りましたが、同社から7月5日付けの回答を受取りました。その要旨は以下のようなものでした。

★クロルピクリン漏れは10件14缶
 三井化学が自主回収を実施したクロルピクリン製剤の保管中の内容物漏れについては、いままで、次の10件14缶の報告があったということで、幸い、重大事故は発生していません。
     製品名   製造年月  発生年月  発生場所
     ドロクロール  00/08/01  00/09/29  茨城県
              00/09/04  00/10/03  青森県
              00/08/03  00/11/10  栃木県
              00/08/11  00/11/24  鹿児島県 
              00/08/30  01/03/26  長崎県
              00/08/03  01/04/23  栃木県
              00/09/05  01/04/28  青森県
              00/08/30  01/05/11  長崎県
     ネマクロペン  00/09/19  01/02/28  茨城県
              00/09/19  01/03/23  千葉県
    三井東圧クロールピクリンに関したクレームはない。
★昨年9月末に最初のクレームが−8ヵ月放置で農水省からお叱り
 表に示したように、ユーザーからのクレームが昨年9月末と10月初めにかけ、2件あったことがわかります。にもかかわらず、三井化学は「その後、充填後に製品全数について臭気漏れのないことを確認のうえ出荷してきた。」、「今回回収・交換対象とした製品に関しても、出荷時点での製品検査で臭気漏れは全くない」と答えています。しかし、今年に入っても、内容漏れクレームが、相次いででてきたため、最初の発覚から約8ヵ月後の5月25日になって、ようやく、農水省に届けでるとともに、自主回収に踏み切ったことがうかがえます。
 6月1日に三井化学大牟田工場と製缶会社が農水省と農薬検査所の検査を受け、さらに、 6月13日付けで、農林水産省生産局生産資材課長から社長宛ての書面「クロルピクリンを含有する製剤の容器の不良問題に対する対応について」で、お叱りを受けていたことがわかりました(下記【資料】参照)。
 6月30日までに回収された製品は
      ドロクロール:20県3013缶(回収対象13344)
      ネマクロペン:6県113缶(同2821)
      クロールピクリン:15県481缶(同8820)
で、内容漏れは発見されていないとのことです。回収製品は、最終的には大牟田工場の毒劇物倉庫に保管され、未開封品はクロルピクリンを抜きだし品質確認後に製造工程にまわし再利用、開封品は残薬を廃棄し、缶はすべて廃棄処分し、再充填はしないとしています。

★PCNBを輸出していたのは三井化学と判明−でも、輸出相手国は答えない
 クロルピクリンについては、製品中にダイオキシン類は検出されなかったとのことでしたが、土壌殺菌剤PCNBについては、ダイオキシンが検出されたことが明かになり、国内では、製造自粛(1997年)、その後、農薬登録失効(2000年)しています。
 ところが、PCNB原体の輸出量は97から99年にかけて、増加しているため、三井化学に生産状況等を問うてみました。  国内での製造販売自粛の理由として、同社は「1997年3月末、PCNBにかわる殺菌剤ネビジンは普及したので国内販売を終了」と述べているだけで、ダイオキシンのことは何もふれていません。また、PCNB原体の生産量と輸出量については、下記のような数値が示されました(単位:トン)。これらの数値を農薬要覧と照合すると、PCNB原体の生産・輸出したメーカー三井東圧(現三井化学)だけであることがわかりました。
     年度  生産量  輸出量   年度  生産量  輸出量
     1990   1291    255        1996   1481   1133.5
     1991   1100    221        1997   1126    992
     1992    753    391        1998    952   1000
     1993   2365   1298        1999   1294   1595
     1994   2012   1219        2000     0       0
      1995   1636   1243.5 
 輸出相手先は「営業上の理由により明かにできない」という回答でしたが、PCNBに含有されているダイオキシンのことは知らされていたのでしょうか。また、そこで、製造された製剤は、どこでどのように使用されたのでしょうか。三井化学の態度には、この問題を隠そうとする意図が感じられてならないのですが。

      **************************

【資料】クロルピクリンを含有する製剤の容器の不良問題に対する対応について
    (13生産第1946号:平成13年6月13日)
    このたび、貴社が製造する土壌くん蒸剤「三井クロールピクリン」
    「ドロクロール」「ネマクロペン」の3製品について、一部の製造
    ロットに使用された容器の不具合により、劇物に該当する内容物が
    滲み出すおそれが明かになった。
    貴社におかれては、容器の製法及び検査法を変更して再発の防止に
    努めるとともに、5月30日には、該当する製品を回収する旨の記者
    発表等を行ない、既に対策に着手していると承知している。
    しかしながら、滲み出しに関する最初の報告が貴社にあったのは昨
    年9月であるにもかかわらず、その後、滲み出しの原因が溶接の不
    良によるものであることが明かになった後も、出荷を継続し、回収
    等の措置をとらなかったことは問題である。また、この間当方に対
    する報告も一切なく、誠に遺憾である。
    結果的に健康被害は生じなかったものの、当該製品が劇物に該当す
    ること等にかんがみれば、事故の未然防止の観点から迅速に対応す
    べき問題であり、今回のように回収を決定するまでに長時間を要し
    たことについては、大いに反省すべきことと考える。
    今後は、二度とこのようなことのないよう、危機感を持って対処す
    るとともに、現在実施しいる該当ロットの回収作業を早急かつ徹底
    的に実施されたい。また、回収作業の進捗状況について随時報告さ
    れたい。

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作成:2001-09-27