空中散布・松枯れにもどる
t12001#来年度以降の農薬空中散布に関して農水省へ申し入れ−実施県へのアンケート調査を踏まえ#01-10
反農薬東京グループ、日本有機農業研究会、食農ネットの農薬空中散布に反対する3団体は9月21日、社民党の菅野哲雄議員とともに、農水省に対して農薬空中散布に関する要望書を手渡し、話し合いを行いました。
3団体は今年の6月に水田へ有人ヘリで農薬空中散布を行っている20道県に対してアンケート調査を行いました(記事t11602参照)。今回の農水省への要望はこのアンケート調査の結果を踏まえたものです。要望内容の要旨は以下の通りです。
1 生産局長通知の改善
本年2月に出された生産局長通知(「平成13年度農林水産航空事業推進方針」)では、実施団体が有機ほ場への農薬の飛来を防ぐ措置を講じなければならないことになっているが、周知徹底されていない。県への調査で農水省は実施団体と有機農家が話し合えはいいと指導していることが判明した。農水省は実施団体の責任を明確に規定し、必要な措置の中に十分な巾の緩衝地帯を必ず設置しなければならないことを明記し、新たに年度にかかわらない基本通達として出し強力に指導すること。
2 緩衝地帯の具体的な幅の設定
(1)早急に飛散距離を調査して具体的な緩衝地帯の数値を設定し、道県に対処するよう指示すべきである。
(2)また、公衆衛生関係の施設に対しても有機ほ場の場合と同様、緩衝地帯の数値巾を設定すべきである。
3 無人ヘリコプターによる散布の規制
無人ヘリコプターによる散布についても、有人ヘリコプターの場合と同様に、飛散距離を調査して早急に生産局長通知を出して規制すること。
4 今後の方向に関して
農薬の空中散布は、地域住民の健康や周辺の環境に悪影響を及ぼすばかりでなく、有機農業にとっても大きな障害となっている。自己のほ場を防除する必要があるからといって、他人の圃場を汚染したり、他人の健康を害する権利は認められない。農薬の空中散布を続けることは時代錯誤以外の何物でもない。農林水産省は、農薬の空中散布を中止させるよう施策を早急に講じ、この問題に積極的に対応する必要がある。
★緩衝地帯は有機認証機関が決める??
農水省植物防疫課の福盛田課長補佐が要旨以下のように回答しました。1については、局長通知で既に実施主体が必要な措置を講じるよう書いており重複して出せないが、会議の場などで周知徹底を図る。また、個別のトラブルがあれば情報提供をして解決を図っていきたい。
2の緩衝地帯の巾については、有機認証の認定機関から示してもらうものだと考えている。農薬の飛散は条件によって違うので全国一律には決められない。現在、農林水産航空協会に頼んで制度の高い航空防除の手法の検討をしている。その中で飛散に関する調査も行うよう頼んでいる。
3については、無人ヘリも有人ヘリもまったく同じと考えている。今後、会議の場、通知等を通じて指導の徹底を図りたい。
4については、農家の要望を受けてやっているので、農家からの要望があれは適正な方法でやっていく。と、以上のような回答でした。
まず、有機ほ場に農薬が飛来しないよう措置するのは実施団体の責任であることを認めました。これは実際に通知に書いてあるので当たり前のことですが、今まではそれすら「双方の話し合いで」とごまかそうとしてきました。この点は再度確認したわけです。今後、農水省は「話し合いで決める」ということは言わないことにしたそうです。
回答で驚いたのは、有機ほ場からの緩衝地帯の巾を、有機農家が認定を受けようとしている認定機関が決めるという新解釈を出してきたことです。これでは有機認証機関に責任を押しつけ、国や実施団体は責任を逃れることになります。
本来、農水省は空散農薬の飛散調査を行い、300メートル飛散することがわかったら、緩衝地帯を300メートル以上とすればいいわけで、それが事業を実施している側の責任です。空散でよけいな手間をかけられる認証機関に責任を押しつけるなどとんでもないことです。
第一、有機認証機関はそれぞれ独自の基準を決めており、品質課が調べた今年の空散の緩衝地帯の巾は10メートルから100メートルまで、実にさまざまでした。有機農家は認証機関を自由に選べますから、同じ地域に2軒以上の有機農家があって、2つ以上の認証団体が審査しても不思議ではありません。そこで、片方は10メートル、片方は100メートルと基準があったとしたら、実施団体はどうするのでしょう。
いずれにしても、突然、言い出した「緩衝地帯の巾は有機農業の認証機関に決めてもらう」という農水省の回答は、自分たちの責任を曖昧にするための単なる思いつきで、無責任きわまりないと言わざるを得ません。話し合いの結果、この件は、農水省がもう一度検討するということになりました。
緩衝地帯の具体的な数値の設定について、農水省は農林水産航空協会に飛散調査も含めた調査を依頼していると回答しましたが、今年どのような調査をしたのか分からないとのことです。そこで、早急に調査の具体的な内容、飛散調査の方法、データなどを確認して報告してもらうことになりました。
購読希望の方は、〒番号/住所/氏名/電話番号/○月発行○号からと購読希望とかいて、
注文メールをください。
年間購読会費3000円は、最初のてんとう虫情報に同封された振替用紙でお支払いください。
作成:2001-10-25