室内汚染・シロアリ防除剤にもどる
t12302#医薬品殺虫剤の安全性データ提出を厚労省に要望−北海道静内町特養老人ホーム農薬中毒事故で
本誌で何度も報告していますが、北海道静内町の特別養護老人ホーム静寿園での室内薬剤散布による健康被害に関連して、散布された農薬以外の医薬品殺虫剤の安全性の根拠となったデータを出すよう厚労省に要望しました。
この事件は業者がビニールハウス用の農薬を室内で使用したという重大な誤りを犯しており、厚労省は室内に薬剤散布する際には医薬品の殺虫剤を使用するよう2001年8月に通知を出しています(記事t11901)。
しかし、静寿園で使用された薬剤は農薬以外にも薬事法で承認された医薬品殺虫剤が2種類使用されていました。スミチオンMCとスミスリン乳剤です。これらの薬剤が、どのようなデータに基づいて室内で使用して農薬よりも安全と判断されたのかなどを、静内事件に関して質問主意書を提出し、厚労省の通知を出すきっかけを作った民主党の金田誠一議員を通じて質問しました。
金田議員の質問主意書(H13/06/15)と政府答弁書(H13/07/31)
★厚労省が安全を確認していると言うが・・
厚労省医薬局審査管理課は2001年9月に「殺虫剤の承認審査の際に提出が必要なデータについて」という文書回答で以下のように述べています。
「殺虫剤の承認申請に際して添付すべき資料については、薬事法施行規則(昭和36年厚生省令第1号)及び平成11年4月8日付け医薬安全局審査管理課長通知第666号において、以下の通り定められています。
イ 起源又は発見の経緯及び外国における使用状況等に関する資料
1,起源又は発見の経緯に関する資料
2,外国における使用状況
3,特性及び他の医薬品との比較検討等
ロ 物理的化学的性質並びに規格及び試験方法に関する資料
1,構造決定
2,物理化学的性質等
3,規格及び試験方法
ハ 安定性に関する資料
1,長期保存試験
2,苛酷試験
ニ 急性毒性、亜急性毒性、催奇性その他の毒性に関する資料
1,単回投与毒性
2,反復投与毒性
3,生殖発生毒性
4,変異原性
5,局所刺激性
6,その他の毒性
ホ 薬理作用に関する資料
1,効力を裏付ける試験
2,一般薬理
ヘ 吸収、分布、代謝、排泄に関する資料
1,吸収
2,分布
3,代謝
4,排泄
燻煙剤、エアゾール剤、蚊取り線香、電気蚊取りなど室内で煙霧、または揮散するタイプの殺虫剤についてはすべて、承認申請時に、上記資料中(ロ)の物理化学的性質並びに規格及び試験方法に関する資料の中で、噴霧時の室内の気中濃度についてのデータ、(ニ)の毒性に関する資料の中で、ラットにおける急性吸入毒性試験及び4週間以上の亜急性吸入毒性試験のデータを要求しています。
薬剤の用法・用量は、これらのデータをもとに安全性、有効性を審査した上で、設定されており、定められた用法・用量を守って使用されれば、人体に危険はないものと考えます。つまり、業者から出されたデータを厚労省が審査して安全性を確認している、特に、室内で煙霧、揮散するタイプの殺虫剤については室内の気中濃度についてのデータ、吸入毒性データ提出させ、それに基づいて用法・用量を定めているから人体に危険はないというものです。
★吸入毒性試験はやってない
そこで、静寿園で使用された医薬品殺虫剤のゴキブリ用スミチオンMCとスミスリン乳剤に関して、どのようなデータをもとにどのような審査がなされているか、特に室内濃度に関する安全の根拠を求めました。
2001年11月に両薬剤のメーカーである住友化学工業(株)から提出された「製造承認に関する添付資料概要」が出てきましたが、不開示部分が多く、まるで暗号のような文書でした。厚労省が説明した吸入毒性試験はメーカーが独自に「必要なし」とし、されていません。また、室内濃度に関してもゴキブリ用スミチオンMCは非常に不十分で、スミスリン乳剤に関してはデータさえ出されていませんでした。
このような不完全な資料をもとに医薬品の殺虫剤が安全だとされては困ります。もう一度詳しい質問をすることにしました。
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作成:2002-01-25