食品汚染・残留農薬にもどる
t12603#中国産野菜に基準以上の残留農薬検出−厚生労働省が37万トン出荷停止措置#02-03
 厚生労働省は、2月13日に「中国産野菜検査強化月間」で実施した残留農薬検査結果を公表しました。
 中国産野菜から安全基準を超える残留農薬が検出された旨の報道があり、中国政府が調査を行った国内流通野菜の50%近くから残留農薬が安全基準値を超え、その結果、多数の中毒患者が発生している等の事実が判明したため、1月4日から1月31日まで検査強化月間として、中国産の野菜について届出毎に100%のモニタリング検査を実施したということです。

★背景には、中国での残留農薬中毒が
 すでに、1999年、 在香港日本総領事館は、香港衛生署が作成した「野菜による農薬中毒防止パンフレット」を以下のように紹介し、中国在住日本人の注意を喚起していました。
『野菜(特に中国から輸入されたチョイサム(菜心)、ハクサイ(紹菜)、ホウレンソウ、トンチョイ(通菜)、春菊、クコ、ガイラン(芥蘭)等の「葉もの野菜」)による農薬中毒を防ぐために、次のような方法で野菜をきれいにしてから食べるよう呼びかけています。
(1)一番外側の葉は捨てる。(2)きれいな水で何度もよく洗う。(3)野菜を1時間くらい水に浸してから別のきれいな水ですすぎ洗いするか、1分間くらいお湯に浸す(後のお湯は捨てる)。(4)食べる前に十分火を通す。』
 さらに、産経新聞(2001年12月11日付朝刊)は、「中国野菜47%に残留農薬安全基準超す- 中毒症状で死者も 」という記事で、中国で使用されている有機リン系殺虫剤メタミドホス(日本では登録されていない。急性毒性は毒物相当。)などが、野菜・果実に安全基準を超える高濃度で残留しており、『中国本土で「問題菜」(香港では「毒菜」)と呼ばれるこれら汚染野菜や果物では、呼吸困難などの急性中毒症状で死亡するケースが中国国内で多数起きており、政府が調査と規制に乗り出していた。』と報じていました。

 農作物に残留した農薬で人が被害を受けた事例は、アメリカで85年、アルディカーブ汚染スイカ事件(カリフォルニア州を中心に、汚染されたスイカを食べて数千人が下痢、嘔吐などの中毒症状を訴え、6人が死亡したと言われている。てんとう虫情報3号)くらいで、あまり例がありません。
 中国では、恐らく、相当高濃度の毒性の強い農薬が残留していたと思われますが、どんな農作物にどの程度残留していたかは、わかりません。

★違反野菜はわかったが−ほかにも残留していた農薬はないのか
 厚生労働省は、1月に実施された調査で、検査件数2,515(重量約3万3280トン)のうち残留基準を超えた件数9(約37トン)の野菜について、食品衛生法違反で、出荷停止措置をとり、今後も違反のみられた農作物の監視を続けるとしています。
 違反事例の詳細については、表1に示した通りで、ピレスロイド系殺虫剤のフェンバレレート、有機リン系のクロルピリホス、DDVP、メタミドホスが検出されています。残留基準を超えた違反野菜で、もっとも多かったのは冷凍ニラ20トン、ついで生鮮ブロッコリーで12.2トンでした。
 検査にあたり、どんな種類の農薬を分析し、それぞれどの程度残留していたのかは、明らかになっていません。また、残留基準のない農薬が検出された農作物があったかどうかも不明です。基準がなければ、いくら残留していても、法律違反にならないため、出荷停止はできないというのが現行食品衛生法です。残留農薬についても、食品添加物並にポジティブリスト制度を実現させる必要があります。
   表1、 厚生労働省発表の違反事例

     品名       違反重量 検出農薬(検出量)   残留基準 
    生鮮オオバ       600kg フェンバレレート(0.67ppm)  0.50ppm
    生鮮オオバ     1,400   フェンバレレート(0.61)     0.50 
    生鮮オオバ       720   フェンバレレート(0.69)     0.50 
    生鮮パクチョイ     255   クロルピリホス(2.1)       2.0 
    冷凍ニラ      20,000   クロルピリホス(0.04)      0.01
    生鮮ニラ       1,672   クロルピリホス(0.02)      0.01 
    生鮮サイシン       180   DDVP(0.2)           0.1
    生鮮ケール        270   クロルピリホス(4.3)       1.0
    生鮮ブロッコリー 12,240   メタミドホス(1.3)        1.0
 農水省総合食料局も厚生労働省と同じ時期に、農林水産消費技術センターによる「輸入野菜の残留農薬に係る検査結果」を発表しています。こちらは、生鮮野菜の輸入が集中すると見込まれる13年12月〜14年3月を検査期間としており、2月の発表は同月15日までの中間報告です。
 産地別対象農作物の種類と検体数は、表2に示すようで、総検体数167件、分析対象となった農薬は、有機塩素系13種類、有機リン系31種類、カーバメイト系12種類、含窒素系21種類、ピレスロイド系10種類の合計87農薬、及びメタミドホスでした。
 報告では『(1)パラチオン、メチルパラチオン及びホレートについては検出されなかった。(2)メタミドホスについては、タイ産のオクラ(7検体)、中国産のサヤエンドウ(4検体、ネギ(3検体)等に検出された。』となっています。

   表2 農林水産消費技術センターの検査結果 −省略−

 今回、厚生労働省や農水省が素早く対応したのは、中国野菜に対するセーフガードがらみで、国内農家保護のために中国産の輸入抑制につなげようとの意図があったかも知れません。しかし、食糧輸入大国の日本は、常に、輸入相手国での農薬の使用状況(今回は、日本では使用されないメタミドホスが使われた)に注意を払わねばなりません。さらに、フェンバレレ−トのように日本で登録された農薬を輸出しても、それが相手国で不適正な使用がなされ、現地の人に被害を与えた上、輸入された農作物に基準以上残留してもどってくる、いわゆる農薬ブーメランを甘受せざるもを得ない状況があるというわけです。

★国産野菜にも、使われていないはずのメタミドホスが残留  厚生労働省のまとめた残留農薬調査(1997年)では、表に示すような結果が得られています。検出範囲()は輸入品で、それ以外は国産品ですが、日本では登録がないにもかかわらず、国産農作物にメタミドホスが検出されています。野菜の産地がごまかされているのでしょうか。それとも同じ有機リン剤アセフェートの代謝物として検出されたのでしょうか。真相はいずこに!

   表3 農作物中の残留農薬調査結果(単位:ppm)−省略−
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作成:2002-09-25