室内汚染・シロアリ防除剤にもどる
t12705#パラジクロロベンゼンの禁止はできないが、指針値以下にするよう指導する −文部科学省、「学校衛生管理基準に関する質問と要望」への回答#0204

 本誌記事t12501でお知らせしましたが、反農薬東京グループは2002年2月5日付で文部省が通知した「学校衛生管理基準」に関して、5項目の質問と要望を出していました。3月18日に文部省学校健康教育課の猪村担当官から回答がありました。以下、質問要旨と回答要旨、やりとりの一部をご紹介します。

【質問と要望1】指針値が線引きにならないか
 今回の通知により、厚生労働省指針値を絶対的な線引きと教育現場が考えないように願いたい。貴省は、数値だけでなく、シックハウス問題に関する検討会の指針値策定の主旨をきちんと伝えて、指導すべきだと思うがどうか。
【回答】厚生労働省の報告もセットで送っている
平成13年1月29日付けで「室内空気中化学物質の室内濃度及び総揮発性有機化合物の室内濃度暫定目標値等について」という文書を出した。これは厚生労働省が出している指針値の周知徹底が趣旨の通知だが、通知だけを単純に送っているわけではなくて、厚労省の報告書をセットにして各都道府県の方に送っている。数値だけではなくて、この数値がどういう経緯でどういうふうに定まったのかということも、すべて都道府県に送っている。
 その文書に書いてあるように、過敏症対策については個人差があるので、個別の例示をあげるのではなくて、そういう児童生徒がいた場合、支障なく学校生活がおくれるよう個別の配慮を行ってくださいという指導だ。
 どのくらい過敏症的な児童生徒がいるのかという話は、14年度以降に「シックハウスに係わる調査研究事業」を立ち上げた。その中で具体的な中毒症も含めて、過敏症についても取り上げて調査研究していきたい。

  【質問と要望2】より低い値をとるべきでないか
 判定基準は、厚労省指針値だけでなく、東京都衛生研究所の推奨値のように汚染実態から策定するという考え方もあり、私たちは、より低い値をとるべきだと思う。貴省はどうお考えか。
【回答】厚生労働省の数値を尊重している
 いろんな研究施設で積極的に化学物質、シックハウスに取り組んでいる先生方がおり、数値的なものを含めて研究の成果について発表している。その内容については見てるし、情報提供もあるが、今のところ厚労省の出している指針値を尊重している。
 ただし、過敏症対策は別で、平成14年度から事業を立ち上げるので、そちらでしっかり取り組んでいきたい。

【質問と要望3】パラジクは禁止すべきでないか
 汚染をなくす簡単で、確実な方法は、汚染物質を含む製品を使わないことだ。特に、パラジクロロベンゼンは用途が限られており、これらの使用を止めるよう明記して指導すべきと考えるが貴省の考えは?
【回答】規制されていないものを禁止できない
 パラジクロロベンゼンはトイレの消臭剤的な用途で用いられていることが多い。学校でもそうだ。私どもの方で、学校での空気中の化学物質の実態調査をやった。その中で、トイレも調査している。13か所のうち4か所指針値を超えていた。超えていたのはパラジクロロベンゼンを消臭剤として使っていた学校だ。使ってない学校からは指針値以上の値はでなかった。これはもう理由も明らかだし、文部科学省としてもパラジクロロベンゼンの指針値を示してそれ以下にしなさいと言っている。
 これはシックハウスの原因となるものだと明確に出して指導している。
 −やりとりは省略−

【質問と要望(3)】校舎新築などで資材に関する指導をすべき
          校舎等の新築・増改築・改修について、室内汚染物質を含有しない資材を使用するよう貴省も同様の指導をすべきと思うが、どうか。
【回答】学校設備整備指針を出した
 1月29日付の文書で、学校施設の整備に関してはシックハウスの発現物質がないように、もしくは少ない建材の採用について配慮しなさいということを書いている。
 それと同時に、平成13年の3月に学校の施設とか設計上の留意点を示した「学校設備整備指針」を出した。学校環境衛生基準とは別の施設の整備指針である。シックハウス対策として化学物質の発生がない、もしくは少ない建材を使って学校を建ててくださいという内容を指針の中に盛り込んでいる。その後、今年の2月に整備指針を踏まえたパンフレットを担当局が作った。それを都道府県に配布している。

【質問と要望4】理科のパラジクロロベンゼンを使った実験はやめるべき
 中学一年生の理科の教科書に、パラジクロロベンゼンを用いた融点実験が載っており、私たちは97年にこの実験をやめるよう関東各県の教育委員会に申し入れましたが、貴省はどのように指導され、その結果どうなったか。
【回答】14年度からやめることになっている
 これはご指摘いただいているとおりだ。事実としてそういう教科書があったという話を確認している。担当課によれば、平成元年に作られ、平成13年度まで使われる学習指導要領の中に、中学校の理科の沸点融点の実験が載っている。具体的な化学物質というのは例示してないが、ただ、指導要領には解説書というのが必ず、セットで作られている。その指導要領の指導書の中に、例えば、「ナフタレンや、パラジクロロベンゼンを用いて」という記述が実際にあったということだ。教科書を作る側はそういう指導書も踏まえて作っているので、パラジクロロベンゼンが載っていたいた教科書があったことは間違いない。
 その後、どういう対応をしたのかということだが、平成10年に新しい学習指導要領が告示された。平成14年度の4月から新しい学習指導要領に基づいて授業が進められる。この学習指導要領では融点沸点実験については引き続き載っていが、その解説書、指導書の中にはパラジクロロベンゼンというのは例示していない。実際に、教科書検定があり、合格した教科書全てにおいて、パラジクロロベンゼンについて記載されたものは一切ない。ですから、14年度以降、使用される中学校の理科の教科書には、パラジクロロベンゼンに関する記述は一切載っていない。

【質問と要望5】農薬も規制すべきだ
 室内空気汚染物質は、ホルムアルデヒドやパラジクロロベンゼン、VOCだけではない。農薬もターゲットにする必要がある。毒劇指定のある農薬、環境ホルモン系農薬、子供の神経系への影響が心配されている有機リン剤は早急に使用を止めさせるべきだ。貴省は、薬剤そのものを使用しないよう指導すべきだと思うが貴省のお考えをお示しいただきたい。
【回答】情報を集めて参考にしたい
 実施主体は厚生労働省と農林水産省だが、毎年、農薬危害防止運動というのをやっている。それに文部科学省も協力し、運動の趣旨について都道府県の教育委員会に毎年周知している。農薬危害防止について、適切な措置を講ずるよう通知している。あわせて、学校環境衛生の基準のなかで、衛生害虫の発生を見た場合は児童生徒に害のない方法で、駆除するようしている。害があったらまずいというところは基準の中で示して指導はしている。
 −やりとりは省略−

【その後の文部科学省の動き】
 ・「学校環境衛生の基準」の留意事項について(5月21日報道発表)

 ・シックハウス症候群に関する調査研究概要


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作成:2002-10-25