ダイオキシンにもどる
t13104#連載 農薬などに含まれるダイオキシン C農水省のダイオキシン分析法の問題点#02-08
農水省は、4月の『農薬に含まれるダイオキシン類に調査結果』の発表に先立つ、2002年1月10日付13生産第3988号 『「農薬の登録申請に添付する資料等について」の運用について』という通知で、登録申請時に提出すべき資料の中にダイオキシン類の分析データを添付することを求めていますが、その内容は、十分なものとはいえず、以下のような問題点があります。
★(4−1)低い分析精度で、29種のダイオキシン類しか報告を求めない
ダイオキシンの分析法に関する、昨年7月25日付けの農業資材審議会の答申について、私たちは、てんとう虫情報120号にダイオキシン分析についての意見を具申しました。
その中で、農薬製剤及びその活性成分(=原体)と補助成分のそれぞれについて、TEFが設定されているダイオキシン類だけでなく、その他の2〜8塩素化物についても、それぞれの検出限界を0.01ng/g以下として分析し、実測値を明らかにすること等を求めました。
しかし、前述の通知で、農水省は、農薬中のダイオキシン類の分析については、WHOが提案しているTEFがゼロでない29種のダイオキシン、ジベンゾフラン、コプラナーPCBに限り、しかも個々の同族体・異性体の分析定量下限値をTEQで0.1ng/gとすることで良しとしました。三井化学でさえ、定量限界を0.01ngTEQ/gにし、それ以上のダイオキシン類を含む製品を販売しないとしているにも拘わらず、また現在の分析技術からすれば、さらに精度を上げることが可能なのに、農水省が検出限界値を高く設定しているのは、とても納得できません。
もうひとつ、4月の調査報告を見るとき、念頭に置かねばならないのは、ダイオキシン類を0.1ngTEQ/g以上含有するとされたPCP、PCNB、CNPの3つの除草剤をはじめ、TEQで検出限界以下=NDとされた2,4−PA、MCP、TPNの各農薬について、残りの197種のダイオキシン類とPCB類の分析も毒性評価も全くなされていないということです。
ここでは、述べませんが、ダイオキシン類の毒性を29種の同族体・異性体に限ることの問題点は、てんとう虫情報120号に詳述していますので、参照してください。
(4−2)ベンゼン核に塩素を含むものだけを対象にする
1月の通知で、農水省は、農薬登録申請に際して、ダイオキシン類の検査が必要な農薬として以下のものを挙げています。
(ア)ベンゼン環に塩素が付いている化学構造を有する有効成分を含有する農薬の
原体であって、当該有効成分の合成過程において、ダイオキシン類が生成され、
又は混入するおそれがあるもの
(イ)合成過程において塩素が付いているベンゼン環が関与することが明らかな有効
成分を含有する農薬の原体であって、当該有効成分の合成過程においてダイオキ
シン類が生成され、又は混入するおそれがあるもの
(ウ)製剤化の工程でダイオキシン類が生成され、又は混入するおそれがある農薬、
(ア)(イ)はそれぞれ農薬原体そのもの及び原体の合成原料に塩素含有ベンゼン核構造を含む化合物を用いる場合に該当します。
しかし、(ウ)の内容についてはあいまいで、製剤の補助成分が塩素含有ベンゼン核を有する化合物である場合とか、原体がプレーダイオキシン構造(塩素化ビフェニル、塩素化ジフェニルエーテル、塩素化フェノール、塩素化ベンゼン)で加熱やアルカリその他触媒となる物質の存在下で製剤化する場合とか、複数の農薬を混合して製剤化する場合等に、新たなダイオキシンの生成を想定してのことでしょうか。
それとも、塩素含有ベンゼン核構造を有しない、たとえば、塩化ビニルやナイロン原料のε−カプロラクタム工場の排出物からもダイオキシンが検出されていることを思って、もっと幅広く、原体や製造原料に有機・無機を問わず塩素含有化合物を使用するすべての農薬について、工程廃棄物及び最終製品のダイオキシンチェックしろということでしょうか。
さらに、塩素含有農薬−特に、プレダイオキシン構造を含む薬剤−については、製剤の保管中や複数農薬の自家混合中におけるダイオキシンの生成が問題になりますし、農薬製剤残液の処理、田んぼや畑での農産廃棄物の焼却処理で、新たなダイオキシンの生成しないかどうかのチェックを必要だということを忘れてはなりません。
★(4−3)農薬など化学製品中のダオイキシン規制は法律で
今回の農水省のダイオキシン含有農薬についての指導は、0.1ngTEQ/g以上を含むものの製造販売を規制するという点が眼新しいといえます。しかし、この数値は、前述のようにメーカーですら、0.01ngTEQ/gにするといっているくらいですから、決して、厳しいものではありません。
しかも、この農薬におけるダイオキシン含有基準は単なる行政指導でしかありませんし、環境省管轄の「ダイオキシン類対策特別措置法」をみても、ゴミ焼却施設や特定施設からの排出基準が示されているだけです。特定施設だけでなく、塩素を含む製品を使用・生産するすべての施設に法律の網をかぶせた上、製品そのものついてのダイオキシン含有規制も法条文にとりいれるべきです。
国内だけでなく、海外での塩素含有製品の製造・販売・使用規制も、ダイオキシン類の地球規模の汚染防止のためには不可欠です。そのため、UNEP(国連環境計画)主導で昨年5月スウエーデンの外交会議で採択されていた超残留性有機汚染物質の環境汚染を防止するためのPOPs(ストックホルム)条約に実効性を持たせることが私たちひとりひとりに問われます。この条約の締結について承認を求める議案が7月25日に衆議院で可決されましたが、今後、対象となるPOPs系物質(非意図的生産物質としてダイオキシン類、PCB、HCBが入っている)についての国内関連法の整備を求めていかねばなりません。
一旦、自然界に放出されたダイオキシンを浄化することが、困難であることを思えば、現在TEF評価がなされている29種だけでなく、2から8塩化物を含む総ダイオキシン類の量的規制も視野にいれた上、農薬をはじめ、すべての塩素や臭素を含む化学製品について、ダイオキシン濃度を規制する法律の制定を実現できるよう、さらなる運動をすすめることが肝要です。
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作成:2003-02-25