改定農薬取締法関係にもどる
t13203#私たちの農薬取締法改定案#02-09
長年、無登録農薬の販売・使用を見逃されてきたことへの反省とその責任の明確化なくして、農水省が、ほんとうに再発防止に役立つ農薬取締法改定ができるかどうかは疑問です。そこで、私たちなりに、法に折り込むべく内容について、まとめてみました。
★販売・防除業は有資格者の許可制に
私たちは、すでに「生活環境で使用する殺虫剤等の規制に関する法律(仮称)」で、販売については、薬剤師のいる薬局で、防除については、国による資格を得るよう提案しています。
農薬取締法では、販売業者も防除業者も都道府県への届出制度(農薬について何の知識も要求されず、書式にあった届けをすればよい)となっています。いずれも、営業開始後、2週間以内に届けを出さないと無届け営業となり、処罰の対象となりますし、販売業者は農薬の譲受数量と譲渡数量を真実かつ完全に記載し3年間保存せねばなりません。しかし、これは建て前であって、行政官により検査を受けることめったにないとのことです。
また、農薬の通信販売業者や輸入代行業者は、販売業との認識がなく、無届けで販売しているところもあります(カラスの項参照)。さらに、農薬もどきの製品を農業資材としてうることも見受けられますが、なかなか取り締まれません。個人的輸入については、実態すらつかめません。
農薬自体や法規制のことをよく知った資格のあるものが、購入者に説明して売り、許可をうけた有資格者しか防除業を営業できないといった制度が必要です。
★農家・一般の使用者も免許・資格制度にする
いままでの農薬取締法では、農家や一般の農薬使用者についての法規制はなきに等しく、何を散布してもよいということになっています。
これでは、あんまりだということで、都道府県が「農薬管理指導士」、農薬業界や農業団体が「緑の安全管理士」、「防除指導員」、「農薬安全コンサルタント」などの認定制度を設けて、主に指導者づくりを行なっていましたが、このような法の裏付けのない制度が、無登録農薬事件を防止しえなかったことを思えば、きちんと法律で免許資格制度をつくり、ひとりひとりが自動車の運転免許なみに、講習を受け試験に合格しなければ、農薬使用を認めない、違反をすれば、免許停止になるような制度を考える必要があります。
★非農耕地用農薬に農薬取締法適用
無登録農薬Bに述べたような非農耕地用農薬にも、農薬取締法を適用するよう、法改定すべきです。農水省は、いままで、非農耕地用除草剤も農薬登録をとるよう行政指導を実施するのみで、効果はあがっていません。都道府県による販売店の立入検査にも対象が多過ぎて限界があります。法律に、非農耕地用農薬も農耕地用農薬に準ずるとの一文をいれればすむことです。
★生活環境での農薬散布規制
北海道静内町にある特別養護老人ホームでの農薬室内散布事件は論外として、農住接近のせいか、農耕地からの農薬飛散による健康被害の訴えが増えています。農薬空中散布もそうですが、地上散布も問題です。有機栽培圃場への農薬飛散防止のためには、緩衝地帯設置が必要ですし、今回の無登録農薬事件でも、問題農薬を使用した農地から20m以内のところでの収穫物は、飛散のおそれがあるとして出荷停止措置がとられた地区もあります。
ところが、人の場合は、どうでしょう。農地で散布された農薬を空気を通じて取り込む量は、農作物に残留した農薬の摂取より、多いにも拘わらず、住宅近くでの農薬使用についてなんら規制がないのは、おかしなことです。公園や街路樹での農薬散布を含め、農家が生活環境周辺で行なう農薬散布も規制をすべきです。
★残農薬などの廃棄の適正化、回収の義務づけ
農薬の空容器は廃掃法による産業廃棄物として処理されますが、農水省は、残農薬について、その実態を見ようとせず、農薬を余分に買うな、残さずに使いきれと指導するのみです。農家が使用仕切れなかった農薬をかかえ込んでいることは、農業現場では、大きな問題となっています。
法律では、販売が禁止された農薬について、製造業者や販売業者などに使用者から回収するようにとの努力規定の条文があるだけです。廃・残農薬、期限切れ農薬、登録失効農薬などの回収を義務づけた上、廃農薬の回収・処理制度を設ける必要があります。
★安全使用基準と適用方法の遵守を義務づけ
安全使用基準違反及び適用外使用は、明確に農薬取締法違反とすべきです。法改定でどのような案がでるか不明ですが、安全使用基準違反や適用外使用も処罰の対象になるとしたら、農業現場は、無登録農薬の比ではない、混乱になるかも知れません。しかし、農薬を使って栽培し、安全なたべものを消費者に提供する上で、法律や基準を守るということは必須の事項でしょう。
ただし、使用基準を守っても、他の農作物に適用された農薬が、適用外の農作物に飛散する場合がみられます。例えば、福島県JA伊達みらい出荷のサヤエンドウのアセフェート残留基準超えのケースでは、柿へ散布した農薬の飛散が原因でしたし、長野県信濃朝日農協出荷のグリーンリーフレタスに残留基準を超える14ppmのプロシミドン汚染は、レタスへの散布農薬が飛散したものでした(レタスへのプロシミドンの使用時期は収穫7日前までとなっていますが、畑の通路に植えた成長の早いグリーンリーフレタスが、多分7日が経過する前に収穫されたのでしょう)。
使用時期に関していえば、農水省の告示する農薬安全使用基準には、前日まで使用可能な農薬がいくつもあります(記事t11303参照)。ところが、この前日までとい語句の意味が、9月5日の農水省通知の中で、はじめて、24時間前であることが明らかにされました。前日の午後に農薬散布した農作物を翌日の午前に収穫するということは適用違反となるわけですから、生産者は注意を要します。
★農薬取締法改定を実効性のあるものに!
−前略−
前述のように農薬メーカー大事、生産者大事とする農水省が農薬取締法改定において、安全使用基準違反や適用外使用者に罰則を科するかどうかが、行政がどの程度変わったかを判断するのポイントになるでしょう。
また、厚生労働省は、食品衛生法による残留基準を、今後3年以内に約300種ふやし(合計で500種以上の農薬になる)、ポジティブリスト制にするといっています。いままで通り、残留基準を超えた場合はもちろん、残留基準にない農薬を使用した農作物は、市場への流通が許されないことになりますから、今後、農薬取締法と食品衛生法の整合性をきちんとすることも忘れてなりません。
今回の農薬取締法が実効性のあるものに改定されるよう、私たちの主張が浸透するよう運動を展開していきたいと思います。
私たちが、上に挙げた事項以外にも、改定すべき点が多々あります。特に、毒性・残留性試験成績や情報公開は重要ですし、現在、適用除外になっている輸出用農薬への法の適用を求めねばなりません。さらに、農薬取締法で規制できない部分については、現在立案中の「生活環境で使用する殺虫剤等の規制に関する法律(仮称)」でカバーしていきたいと思います。
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作成:2002-09-25