環境汚染にもどる
t13503#つぎつぎ明かになる埋設有害物質の汚染と健康被害#02-12
★福島県:有機塩素系農薬埋設個所からBHCらが漏洩
 農水省は、使用禁止となったBHCなど有機塩素系農薬の土中埋設を、1971年に指示していましたが、昨年、ようやく埋設個所の実態調査を実施しました(記事t12403参照)。
 福島県では、県農業短大の敷地内に191トン(BHC:135t、DDT:38t、アルドリン:15t、ディルドリンほか3t)が埋設されていました。県は、校内の井戸水検査を95年から実施していましたが、分析結果は毎年ND=検出限界以下となっていました。
 本年9月に実施した調査では、校内及び周辺の井戸水から、該農薬類は検出されなかったものの、埋設地点の調査孔のたまり水から、BHCが最高値で200μg/L、DDTが最高値で0.6μg/L、ディルドリンが最高値で1.3μg/Lの濃度で検出されたことがわかりました(環境省の管理指針値)。
 埋設方法は、有機塩素系農薬を容器ごとビニール袋を貼ったヒューム管に入れ、コンクリートを流し込み、上部にボンドモルタルを塗布、さらにコンクリートの蓋で覆い密閉後、その管30本を深さ3.9m、縦4.4m、横33mの直方体の穴に入れて、床面は砂利等で固め、その上をコンクリートで覆い、管の隙間にコンクリートを流し込む、だったそうですが、それでも、周辺に漏洩があったわけです。付近の井戸水や土壌からのBHC等が検出されていないというのが、せめてもの救いです。
 農水省の計画では、来年中に処理技術の実証試験を行ない、04年から本格的な処理を実施するそうです。福島県は、処理方法が決まるまで、掘り起こした埋設農薬を、大学内に一時保管するとしていますが、汚染が拡大しないよう、環境省の暫定マニュアル通りの作業を願いたいものです。

★山形県:クニミネ工業敷地で、高濃度ダイオキシン汚染
 ダイオキシン連載の最後にふれた山形県のクニミネ工業左沢工場敷地のPCP汚染調査で、県は周辺の4個所の井戸水を分析した結果を11月8日に発表しました。PCPは0.03μg/L以下、MCPは0.5μg/L以下、BHCは0.025μg/L以下とそれぞれ検出限界以下でした。ダイオキシンは0.030及至0.031pgTEQ/Lで、環境基準の1pgTEQ/Lはクリアしていました。
 一方、クニミネ工業が工場敷地内を調査した結果は、地下水中のPCPが16000μg/L、ダイオキシンが970pgTEQ/L、土壌中のPCP136μg/g、ダイオキシンが3500pgTEQ/g(各最高値)で、ダイオキシンは、同社に詳しい分析結果を明かにするよう求めましたが、さらに調査を実施中で、来年2月頃にならないと公表できないとのことでしたが、左沢工場では、現在農薬の製造をしていないものの、化粧品用原料を製造しており、ダイオキシンなどの二次汚染が起こらないか心配です。
 さらに、クニミネ工業常陸太田工場でもPCP漏洩の疑いがあり、茨城県は周辺の井戸水調査をはじめています。

★神奈川県:旧日本軍が埋設した化学兵器で、建設作業員8人が被害
 133号の事故報告で紹介した神奈川県寒川町の三光化学の敷地は、もとは相模海軍工廠という毒ガス工場の一角だったのですが、その近くにある国道橋脚工事現場で、旧日本軍が土中埋設したと思われる化学兵器イペリット(別称マスタード、びらん性の致死性毒物)とクロロアセトフェノン(催涙性物質)をいれたビール瓶が割れ、ガスや液体に触れた下請の建設作業員8人が、発疹・かぶれなどの中毒症状を示していることが明かになりました。
 被曝は9月下旬でしたが、発症したのは10月初めで、イペリットが原因であることが判明したのは、11月6日です。
 現場は、旧相模海軍工廠跡地で、1943年頃、イペリットほかの毒ガス兵器が製造されており、作業中に被害を受けた多数の元従業員が、長年、国に補償を求め、99年から救済措置がとられてもいますから、事前調査で、安全性を確認しておけば、このような事態にならなかったと思うと、工事施工主である国の責任が問われていいと思います。
 今後なすべきこととして、他の作業者や周辺住民の健康調査、発見された化学兵器や野積みにされたイペリット汚染土壌の処理、跡地の徹底調査などがあります。また、日本軍による遺棄化学兵器は中国で大きな問題となっており、化学兵器禁止条約にもとづき、原因発生国である日本が処理対策を講じつつあることも忘れてならないことです。
 【関連サイト】環境省の旧軍毒ガス弾等の対策について

★現行法では対処できない埋設有害物質
 本年5月に公布された土壌汚染対策法は、来年2月から施行されることになっていますが、同法関連の政令で特定有害物質として規制されるのは25種(内対象農薬5成分)にすぎず、農薬のほとんどは、規制対象になっていません。
 DDTなどについては、残留性有機汚染物質(POPs)禁止条約が今夏締結されたものの、関連国内法の整備はまだ検討中の段階です。
 また、化学兵器禁止法では、廃棄埋設化学兵器の処理をどうするかについては、触れられておらず、発見された場合、どの省庁が担当するかすら、決まっていません。
 ダイオキシン類対策特別措置法には、土壌汚染一般についての条文がありますが、かってPCPを製造していた工場などは、環境調査すべき特定施設にはいっていません。
 上述のBHC、ディルドリン、PCP、化学兵器などの廃棄埋設物について、環境汚染や健康被害防止の観点から、早急に法の網をかぶせる必要があります。
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作成:2003-05-25