ダイオキシンにもどる
t13504#パラジクロロベンゼンとダイオキシン#02-12
★タンスにダイオキシン含有衣料防虫剤
 当グループは、昨年6月に、東京都消費生活条例第8条に基づき、都にパラジク市販製品に含有されるダイオキシン類を調査するよう求めてきましたが、11月25日にやっとその結果が生活文化局より通知されました(東京都消費生活条例第8条による都の調査結果)。
 都の調査結果は表に示したように、全実測値でNDから1600pg/g、TEQ値でNDから27pg/gと大きな幅があるものの、衣料防虫剤4種とトイレ防臭剤2種にダイオキシンが検出されました。表下段には、市民グループが実施した衣料防虫剤中のダイオキシン調査結果では(記事t12803参照)、分析精度が高いため、ダイオキシン量がNDというのはなく、6種すべてに検出されていました。
 最高検出値を示した衣料防虫剤Bは、市民グループの最高値よりも、全実測値で約11倍、TEQ値で約27倍多いダイオキシン類を含んでいました。同族体の中でもっとも多く含まれていたのは、コプラナーPCBの一種3,3',4,4'-四塩化物で1100pg/gで、TEQ値に対する寄与の高いのはジベンゾフラン異性体で、2,3,4,7,8-五塩化物18.5、1,2,3,4,7,8-七塩化物4.6各pgTEQ/gでした。
 都の担当者の説明によると、この製品は、外国産のパラジク原体を原料にしたものだということです。国内のクロロベンゼンメーカーのうち、三井化学と保土谷化学は採算上の理由で、生産・販売を中止したため、海外からの輸入品が増大すると思われますが、その際、国産品よりも高濃度のダイオキシンを含有する製品が入ってくる恐れが現実のものとなってきました。
  表 パラジク製品中のダイオキシン類濃度(pg/g)

                      実測値*1 TEQ    全実測値*1
 衣料防虫剤 A         ND        ND          1.7>
              B       1500     27     1600
              C         ND        ND           0.70
       D     ND    ND       9.3
 トイレ防臭剤E         ND       ND           2.6
              F        370       0.065       550
       G         ND        ND          ND 
  6種の衣料防虫剤*2 0.96-130 0.011−0.99 2.0-140
 
 *1 全実測値は四〜八塩化ダイオキシンとジベンゾフラン及び12種のコプラナーPCBの合計
   実測値はTEFが設定されている17種のダイオキシンとジベンゾフラン及び12種のコプラナーPCBの合計 *2 市民グループ調査結果

★防虫剤工業会に10pgTEQ/g以上の製品回収を求める
 東京都はこの調査結果を踏まえ、情報誌「くらしの安全情報」やインターネットホームページで情報提供した上、日本繊維製品防虫剤工業会等に、既に業界が行なっている取組−原料購入先に少なくとも年2回パラジク中のダイオキシン分析結果などを求める。自社においても、年1回の購入原料のダイオキシン分析を行なう−を実施することと、品質に関する情報を消費者に提供することを求めるというアクションを取りました。
 パラジク中のダイオキシン含有量のバラツキは、原料の製法や精製の程度により異なるため、ロット毎の製品チェックが必要ですが、てんとう虫情報128号で述べたようにパラジク自体の生活環境汚染を深刻にしている衣料防虫剤・トイレ用品の製造販売の中止を求めるべきでしょう。
 また、メーカーの三井化学はダイオキシン濃度10pgTEQ/g以上の製品は販売しないといっていますので、当グループでは、とりあえず、防虫剤工業会に、輸入パラジクを原料とした衣料防虫剤Bのメーカー名を明かにし、該当製品を回収するよう求めました。

★日本軽金属の火災事故その後
 てんとう虫情報記事13210cで紹介した静岡県蒲原町の日本軽金属のパラジクプラントの火災事故(8月20日発生)について、その後の調査結果を県に問い合わせました。
 火災原因については、蒲原地区消防組合消防本部の報告概要によると『塩酸回収工程での液液分離槽上部で、原料のベンゼンガスと配管系からの空気の漏れ込みで、爆発性の気体が形成され、静電気着火により引火、爆発に至ったものであると推定する。』とのことでした。
 また、ダイオキシン類の調査結果(日軽金の報告)によると、9月6日採取の事業所総合排水口排出水からは3.2pgTEQ/L検出されました。
 工場敷地内外からの表層土4検体の分析結果は、下の通りでした。
    敷地外     21 pgTEQ/g
      同  風下  34
    敷地内    60
     同 風下  94
 敷地外(いずれも海側)よりも敷地内土壌の、また風下方向のダイオキシン濃度の方が高い傾向にあります。
 検体数が少ないので、断定はできませんが、現場近くの風下土壌が94pgTEQ/gと最高値を示したのは、火災でダイオキシンが発生したことの証しかも知れません。
 ドイツの基準でいえば、40pgTEQ/g以上の土壌汚染があれば、対策を実施することが求められますので、工場敷地全体が日常的にダイオキシンで汚染されている現状を改善する必要があると思います。
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作成:2003-05-25