食品汚染・残留農薬にもどる
t13604#たべものの安心・安全とは何か−厚生労働省の「食品衛生規則の見直しに関する骨子案」への意見#03-01
 2000年に起こった雪印乳業事件、そして、01年9月のBSE事件発覚とそれに付随した牛肉偽装事件につづき、昨年になってからは、中国産冷凍野菜の残留農薬事件や協和香料化学などの未認可食品添加物事件、さらには、無登録農薬販売使用事件が発覚し、たべものの安全性に対する消費者の不信の念が増幅される一方になりました。
 そんな中、この通常国会で、消費者の保護を基本とした包括的な食品の安全を確保するための法律としての食品安全基本法(仮称)の制定と、それに伴なう関係法の整備が行なわれ、前号で触れたように農薬取締法の改定のほか、食品の安全確保のための施策の充実がうたった食品衛生法の改定がめざされています。

 最近の食品行政の対応の仕方をみると、次のように、安全・安心をめざす規制強化と化学合成物質の使用拡大がワンセットとなって実施されつつあることに問題を感じます。
 昨年7月の食品衛生法の改定では、残留農薬については、包括禁止条項(個々の農作物の残留基準違反をチェックするのでなく、残留基準を超える農作物が5%以上ある場合、その産地からの該当農作物の流通を全面禁止する)が折り込まれ、中国産野菜の輸入にブレーキがかけられました。
 一方、食品添加物については、認可を出来るだけ減らしてほしいとする消費者の動きに反して、外国で使用を認められているものは、日本独自の毒性試験チェックをせずに、認可するという、緩和施策が取られ、欧米からの加工食品の輸入にアクセルが踏まれることになりました。
 また、臨時国会での農薬取締法の改定では、農薬使用者への罰則強化とひきかえに、マイナー農作物への農薬適用の拡大促進が計られようとしています。
 農薬残留基準のポジティブリスト制度(従来の基準がなければ、フリーパスという状況を改め、基準がない農作物の市場流通を禁止する)を実現させるものの、今の倍近くの500に及ぶ農薬成分について、残留基準の設定が目論まれています。
 昨年12月、厚生労働省は、「食品衛生規制の見直しに関する骨子案(食品衛生法等の改正骨子案)」なるものを示し、一般からの意見募集を行ないました。前述のような問題意識のもと、当グループは、次のような意見を述べました。
                         **************
T、食品衛生法改定についての基本的考え方
 【現状認識】
  食品のリスク評価・リスク管理が声高に叫ばれ、新たな法規制が実施されようとす
 る背景には、リスクの高いやり方でたべものを生産・供給しているという現実がある
 からです。
  最近の事例をみても、自然では起こらない共食いがBSEを拡大させたわけですし、
 薬に頼らざるを得ない水産養殖や家畜の飼育方法、海外からの食品の輸入増大が一層
 の薬剤残留、未認可食品添加物、カビ毒を産み出し、有害な菌の出現につながっても
 います。
  地球環境のことを考えずに、いままでと同じように、人工化学物質の過剰な使用や
 遺伝子組換え食品で、みかけの食生活を豊かにしても、それは、一時的なもので長続
 きしないでしょう。
  化学合成物質である、農薬・動物用医薬品・水産養殖用薬剤・飼料添加物・食品添
 加物の使用や種の異なる遺伝子を操作した新たな食品開発を前提にしていては、それ
 らの毒性評価や残留検査の義務付けなど、ヒトと金を必要とする監視・検査体制を強
 化せざるを得なくなるのは当然です。

 【意見1】
  ヒトの生命と健康を維持するためには、病原菌を含まず、有害な物質を含まない食
  べものが、生産・供給される必要がある。
  ヒトは地球上に生きる種のひとつで、食物連鎖の上位にあり、自然環境と切り離し
  て、安全・安心なたべものはあり得ない。
  自然環境や生態系への影響をできるかぎり少なくして、たべものを生産・供給する。
  人工合成した化学物質の使用をできるかぎり減らして、たべものを生産・供給する。
  異なる種の遺伝子組込みや自然の摂理に反するバイオ技術を利用して、たべものを
  生産・供給しない。

  ということを基本において、食品衛生法を改定すべきである。

 【理由1−1】安全なたべものは、安全な環境から作られる
  たべものの生産は環境と切り離して考えることはできません。有害なPOPs系農
 薬の使用が、地球規模の環境汚染をひきおこし、多くの種の生存に影響を与えるだけ
 でなく、たべものや空気を通じて、ヒトの体まで入り込んで、もはや除去できないま
 でになっている状況を思えば、あらためて、ヒトは地球に生きる種のひとつであり、
 自らの種を維持するために、食物連鎖の下位の種をたべものとしているという関係を
 思い知らされます。

 【理由1−2】化学物質の使用をできるだけ減らす
  20世紀はある意味では、化学の時代で、新たに合成された化学物質が、ヒトを病
 原菌の攻撃から救い、たべものの供給を増大させ、地球人口の増加につなげているこ
 とは確かですが、一方で、自然環境を汚染し、生態系やヒトの健康に悪影響を与えて
 きていることも事実です。
  人工化学物質は、それを作る過程でも、それを使用する過程でも、多かれ少なかれ
 環境負荷を増大させます。昨今、国や地方自治体、生産者団体などで、農薬や化学肥
 料の使用を減らした環境保全型農業が指向されるようになってきたのは、人工化学物
 質をいままでのように使いつづけることが懸念されているからです。

 【理由1−3】バイオ技術での食品開発をやめる
  異なる種の遺伝子を組み込んだ新生物、さらには、クローン・三倍体・ターミネー
 ターなどのバイオ技術により作られた食品は、人類を飢えから救うというよりも、生
 産の効率化や商品としての利益を目的に開発されたもので、決して、消費者が食べた
 いと望んだものではありません。
  これらの技術で得られた食品は、農薬・肥料の使用減少させたり、機能性が附加さ
 れたりして有用だといわれていますが、食としての安全が十分確認されていないだけ
 でなく、自然環境に取り返しのつかない影響を与える恐れがあります。

 【理由1−4】
  合成化学物質や遺伝子組換え食品の安全性を云々する前に、化学物質やバイオ技術
 でたべものをつくらなければ、毒性試験や監視・検査体制を強化する必要もありませ
 ん。

U、法の目的について
 【意見2】
  自然環境や生態系にできるかぎり影響を与えないで、たべものを生産・供給しその
 安全・安心をはかることを目的とする。
 【理由2】=【理由1−1】

V、国及び地方公共団体の責務
 【意見3】
  合成化学物質の乱用や異なる種間の遺伝子操作を避けたたべものをつくる技術を推
 奨し、その研究から実践までをサポートする責務を負う。
 【理由3】
  地球環境への負荷をできるだけ少なくするたべものの供給体制が必要です。
 そのためには、たべものを生産・供給する現在の栽培・養殖・飼育形態を踏襲するの
 でなく、根底から考え直すことが求められます。
  出来るだけ農薬や食品添加物を使用せず、安全性が確認されていないバイオ技術に
 たよらないで、安全な食品を生産・供給するような施策をとることが重要です。

W、販売業者等(生産者、製造業者、輸入業者、流通業者等を含む。)の責務
 【意見4】
  薬剤を出来るかぎり使用しないたべものの生産・製造・保存・輸入・流通をめざし、
 地産地消、旬のものをたべることを原則とする責務を負う。
 【理由4】
  地球環境への負荷をできるだけ少なくするたべものの生産・供給体制が必要です。
  輸入品にたよらず、食糧自給率を高めることは、自国の法律で食の安全・安心を確
 保しやすくし、ポストハーベスト剤や食品添加物の使用量を減らし、地域の環境保全
 に農業を役立てることができます。
  単作連作による大規模産地による生産をやめ、地産地消、季節にあったものの生産
 ・供給を原則にすることが、薬剤の使用を減らすことにつながります。

X、規格・基準
 【意見5】農作物の規格・等級などでみかけ重視の現状をあらためる。
 【理由5】等級をあげるための農薬の乱用を抑制できます。

 【意見6】食品添加物の認可数を減らす。
 【理由6】
  化学物質をできる限り摂取しないようにすべきです。他国で使用されているという
 理由で、安易な食品添加物の認可をすべきではありません。
  国際的にも食のグローバル化に疑問がもたれ、WTOのやり方が批判されるように
 なってきたのは、WTOが食品の商品化と流通の拡大をめざしたもので、飢餓対策や
 食の安全・安心を保証するものでないことにも一因があります。
  遠距離輸送や長期保存のための酸化防止剤・保存剤・防黴剤、みかけをよくする着
 色剤・着香剤、その他の食品添加物の数・使用量を減らすことは、食の安全だけでな
 く、毒性試験にかかる無駄な投資をやめ、流通食品の監視・検査の経費を減らことに
 もつながります。

 【意見7】
  たべものに残留する薬剤(残留農薬ほか)の摂取量を減らすことをめざして諸基準
 を設定する。

  農薬の場合以下のように基準を設定する(動物用医薬品、水産養殖用薬剤、飼料添
 加剤についての基準の策定においても基本的には同じ)。

  (a)残留基準を設定する農薬の数を減らし、ポジティブリスト制にする
  (b)毒性評価だけでなく、残留実態をも加味した残留基準を設定する
   (ADIから得た数値と実態から得た数値で、低い方を採用する)
  (c)個々の農薬の残留基準だけでなく、同じ作用をする農薬をグループ化
   して、残留基準をきめる(たとえば、総有機リン剤残留基準のように)
  (d)ポストハーベスト使用を前提とした、高い残留基準値を設定しない。
  (e)農作物だけでなく、魚介類、畜産品、乳製品、油脂、飲料品、加工食品、飼料に
   ついても残留基準を設定する
  (f)発育途上の子供に対する影響を評価した基準を策定する
  (g)動物実験で発癌性、催奇形性、生殖毒性、環境ホルモン作用が認められた
   薬剤は残留基準を設定しない
  (h)残留基準を設定する根拠となった毒性試験データ及び文献はすべて公開し、
   公開されないものについては、残留基準を設定しない。

 【理由7】農薬摂取量を減らすような施策をとることが基本です。

  いままで、残留基準のない農薬についてはフリーパスでしたが、ポジティブリスト
 制度にすることにより、基準のない農薬が使用されたものは、食品として流通できな
 くします。残留基準を設定する農薬数が多かったり、基準値が高くては、総農薬摂取
 量を減らすことにつながりませんから、できるだけ農薬数を減らし、基準値を低くす
 る必要があります。

  現行の残留基準は、毒性評価をもとにした数値であり、国内流通品の実測値よりも
、
 高い値に設定されています。国際平準化と称して、外国の高い数値に合わすのでなく、
 残留実態を配慮して、日本独自のものであっても低い値をとり、輸入品についても、
 国産並の値を求めるべきです。

  たべものには、複数種の農薬が残留している場合が、しばしばみられます。個々の
 農薬が基準以下でも、総農薬残留量が高いこともあり、化学構造や作用機構が類似し
 た農薬は、グループ化して、総残留基準として規制すべきです。

  ポストハーベスト使用される殺虫剤や発芽防止剤は、高い残留値が設定され、農薬
 の摂取量を大きくしています。いままでも、臭化メチルやEDBなどは薬剤を使用し
 ない保存方法に代わってきました。国産、輸入品を問わず、ポストハーベスト使用を
 禁止し、残留基準を下げるべきです。

  中国産冷凍野菜にみられたように、加工食品にも農薬が残留していました。また、
 水田除草剤などが魚介類へ、殺虫剤などが畜産品に残留していも基準がありませんで
 した。農産物以外の食品についても基準を設定する必要があります。

  たべものに残留する農薬の毒性については、ヒトの健康に影響を与えることを思え
 ば、できるかぎり、安全サイドで、評価すべきです。
  また、毒性試験データについては、メーカーが実施したものを含め、その農薬に関
 する文献調査結果が、公開されていることが重要です。

Y、監視・検査体制について
 【意見8】
  たべものの生産履歴を記録しておく必要がある。農水畜産品については、それがど
 こでどのようにして生産されたか(栽培歴など)、どのような薬剤が使用されたか(
 農薬の使用履歴など)がわかるよう記録を残しおくことを義務づける。
  輸入品についても、生産履歴の添付を義務づける。
 【理由8】消費者が口にする食の安全・安心について、その情報を得る手段として、
 トレーサビリティーは有用です。既に、BSE事件をきっかけに、牛については、誕
 生から食肉になるまで、個体番号で管理されることになっていますが、他の農水畜産
 物についても実施すべきです。
  輸入品についても、生産履歴を添付さすことにより、日本で使用されていない農薬
 などをチェックできます。

 【意見9】
  たべもののカビや細菌汚染、薬剤残留、遺伝子組換え食品などの調査を実施した場
 合、産地を含むすべてのデータを迅速に公表することを義務づける。
 【理由9】
  調査で判明したデータを公表することは、消費者に安心をあたえることになります。

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作成:2003-06-28