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t14002#薬剤に頼らない松枯れ対策を! 地上散布・伐倒駆除も問題−空中散布は31県で約8万haの予定#03-05

 松枯れ対策の農薬散布が始まろうとしています。反農薬東京グループにはあちこちから相談の電話が入ってきています。今年の松枯れ農薬空中散布面積に関して林野庁から資料が届きました。
 今年度の国庫補助分の空散面積です。未だに松枯れ農薬空散をしているのは31県で、面積は3.17万ヘクタール。これは実面積です、松枯れ空散は、通常、2回行われますから、これの約2倍が延べ面積になります。そのほか、県や市町村の補助金で行う空中散布もありますから、実質的には8万ヘクタールくらいではないかと林野庁は言っています(2003年度都道府県別防除計画へ)。

 松枯れ空散に関しては、長年、林野庁との交渉を続けてきました。林野庁は97年の森林病害虫等防除法の改定時の国会の附帯決議に従って、空中散布は将来的になくす方向とはっきり言っていますが、今年度の予定をみるとさっぱり減っていません。
 また、空中散布は中止になっても、地上散布、伐倒駆除、樹幹注入など相変わらず薬剤に頼っての対策が多く、周辺住民の健康被害も報告されています。地上散布に関しては、本誌に何度も報告された神奈川県真鶴公園、金沢市の兼六公園など不特定多数の人が訪れる場所で無造作に散布されています。
 また、通学路の松林に警告もなく散布され、子ども達が知らずに通るなど、相変わらず、ずさんな散布も報告されています。
 さらに、最近問題になっているのは枯れた松を伐倒して、そこに薬剤を散布し、林内に放置してあるものです。スミチオン油剤などは98%が灯油であり、山火事が起こったりしたら、非常に危険です。また、シートをかけない場合は、そのまま農薬が揮発して付近の空気を汚染することも考えられます。

 林野庁は毎年この時期に出している「松くい虫特別防除の適切な実施について」という森林保護対策室長の事務連絡を5月9日に出しました。この内容について、私たちは、空中散布は将来的になくすという林野庁の方針をきちんと示すべきと主張しましたが、「この通知には馴染まないので、他の会議などできっちり伝える」からという理由で、拒否されました。従って、今年の通知も、森林病害虫等防除法に基づく防除実施基準、都道府県防除実施基準等、農薬取締法の農薬の使用する者が遵守すべき基準、農林水産航空事業実施ガイドラインを守るようにとの通り一遍のものになっています。
 しかし、「特別防除の実施に当たっては、これらの基準等に基づくほか、平成9年5月8日付事務連絡「特別防除の医療関係機関等への周知徹底について」にも留意するとともに、「農薬中毒の症状と治療法 第9版」を医療関係機関等に配布し、万一の事故に備えるなど、適切に実施されるようお願いします。」という一文を入れてもらいました。この平成9年の通知は健康被害を防ぐために、97年に、私たちが主張して出してもらったものです。
 なお、今後の松枯れ対策で薬剤使用を減らすよう、林野庁に要望することになりました。
 参考までに、平成9年の附帯決議を掲載します。
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     森林病害虫等防除法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
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                        (1997年3月6日 衆議院)

    政府は、森林の機能の高度な発揮に対する国民の要請が高まっていることにか
   んがみ、本法の施行にあたり、松くい虫をはじめとする森林病害虫等の被害対策
   を効果的に実施するため、左記事項の実現に遺憾なきを期すべきである。

                   記

   1,森林病害虫等の防除の実施に当たっては、地域における被害の発生状況に応
   じた機動的な防除を的確に実施できるよう、国、都道府県、市町村等を通じた実
   施体制をさらに充実・強化するとともに、地域の自主的な取組を促進するための
   支援を強化すること。また、そのために必要な予算の確保に努めること。

   2,特別防除の計画・実施に当たっては、今後とも、地域住民の意見が十分に反
   映されるよう、関心を有する広範な関係者で構成される協議会を開催し、事前の
   周知徹底を図るとともに、環境保全に留意して慎重に実施すること。また、万一
   被害が発生した場合には、直ちに特別防除を中止し、その原因究明に努め、適切
   な措置を講ずること。さらに、事業の効果及び環境に対する影響についての必要
   な調査を行うこと。

   3,松くい虫の防除に当たっては、将来的に被害水準がさらに低下するなど、特
   別防除を実施する必要がなくなるような条件を整備しつつ、伐倒駆除、樹種転換
   等の方法を可能な限り選択するとともに、松林の健全化のため適切な森林施業を
   併せて推進すること。また、天敵の利用等環境保全に配慮した新たな防除技術の
   研究・開発を進めるとともに、マツノザイセンチュウに抵抗性のある松の選抜育
   種を推進し、早期にその供給拡大を図ること。

   4,特別防除については、住宅、宿泊所その他の家屋及び公園、レクレーション
   施設その他の利用者の集まる場所の周辺の松林においては、原則として、これを
   実施しないこと。

   5,松の枯損メカニズムについて、引き続いてその徹底糾明に努めるとともに、
   松の枯損被害についても、手入れ不足等による松の不健全化や酸性雨等の影響に
   ついて調査研究を推進すること。

   右決議する。

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作成:2003-05-25