食品汚染・残留農薬にもどる
t14105#連載:水道水中の農薬規制について 最終回#03-06
 厚生労働省は5月30日付け省令で50項目の水質基準を定めました。「見直し案」だった基準は、04年4月1日から実施されることになります。水道の水質基準から、農薬の項目はなくなり、今後は、水道事業者が、総農薬方式により、任意に分析等を実施すれば、よいことになりました。
【参考資料】
 厚生労働省の水質基準の見直し等について
 水質基準に関する省令(平成15年5月30日厚生労働省令第百一号)

 私たちは、パブリックコメントで「農薬については、グループ別と総農薬の水質基準をそれぞれ0.1μg/L、0.5μg/Lとする」という具体的な提案を行ないましたが、これに対する回答はなきに等しく、厚生審議会は、はじめから、生活環境水道部会案を実施するという路線をつっぱしていたわけです。
 今後、水道水中の農薬分析がなされ、その結果が示されることは、少なくなると思われます。水道受給者は、地方衛生研究所が公表する農薬環境調査結果などを参考に、汚染が確認できた農薬について、水道事業者に、水道原水や浄水の分析を求めて行く必要がありそうです。

 ということで、省令がだされた後で、残念なのですが、パブコメに対する厚生労働省側の回答・見解を示しておくことで、この連載を締めくくりたいと思います。

★パブコメに対する厚生労働省の回答
 パブコメ募集に寄せられた意見・要望・質問は、105の団体・個人から402項目あったということです。そのうち、農薬については、40余件の意見等がありました。多くは、自治体の水道関係者のもので、分析手法に関するものや水源流域で使用される農薬についての情報を求める意見が大方でした。私たちの提出した意見に関連する回答を以下に示すとともに、9項目の意見のうち、8と9を次節に掲載しておきます。
 ○ 水道水源の保全対策についても言及すべきである。 
 (答)
  今回の主たる検討内容が水道水質基準の見直しであることから水質基準の設定に
  重点がおかれていますが、水道水源の保全対策の重要性は当然のことであり、本
  報告案においても、必要に応じ、水道水源対策及び水源の監視について言及して
  います。

 ○ 水質管理目標設定項目について、水道事業者等に(水質検査など)一定の義務づ
  けをする必要がある。 
 (答)
  水質管理目標設定項目は、水質基準としての設定を要しない(水道事業者等に水質
  検査等を義務付ける必要がない)と判断された項目です。従って、これらについて
  何らかの義務付けを行う必要はないと考えます。
   ただし、これらの項目についても、必要な項目は水質検査を行い、知見を集積し
  ていくことが望ましいと考えます。本報告案では、優先度の高い項目として、農薬、
  過マンガン酸カリウム消費量、ニッケル、亜硝酸性窒素、ジクロロアセトニトリル、
  抱水クロラールなどを掲げています。

 ○ 現在水質基準項目とされている農薬については、基準項目として維持すべきであ
  る。また、総農薬方式は化学構造による分類や濃度の足し合わせ方式を導入すべき
  である。 
 (答)
  今回水質基準として維持する必要はないとした農薬については、近年、ほとんど検
  出事例は報告されておらず、本報告案でお示した水質基準への分類基準に該当しな
  いことから、そのように判断したものです。ただし、農薬に関しては国民の関心が
  高いことから、現時点の知見を踏まえ、毒性の程度も勘案して重み付けをした総農
  薬方式を採用し、これを水質管理目標設定項目とすることとしました。
   なお、ご指摘の農薬も含め、上述の分類基準に当てはまることが明らかになった
  ものについては、当然のことながら水質基準とすることにしています。このために
  も逐次改正方式が有効に機能していくことが必要と考えています。

 ○ ニッケルや農薬補助成分などの物質についても水質基準等に位置付けるべきであ
  る。 
 (答)
  上述のとおり、水質基準への分類基準に該当することが明らかになれば水質基準と
  することにしています。逐次改正方式が有効に機能することが望まれます。

 ○ 水質管理目標設定項目とされている101の農薬に関して、水道事業者においてはそ
  の使用実態の把握が難しいことから、
   - 対象農薬の把握方法や分析方法等の提示をお願いする。
   - 測定項目を指定すべきである。 
 (答)
  農薬の使用実態は地域によって異なることから、各水道事業者において把握し、検
  査農薬を選定する必要があります。各地域で使用される農薬については、農協など
  で配付している防除暦などで確実に把握することが可能であり、既にこのような方
  法により農薬の調査を進めている水道事業者もあります。
  分析手法については、なるべく早い時期にお示しできるよう再確認の作業を進めて
  いるところです。
★当グループから提出した意見−前号のつづき−省略

 【参考】水道水質基準の見直しパブコメ募集 パブコメ結果回答


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作成:2003-11-25