行政・業界の動き
t14602#空中散布・住宅地周辺での農薬自家混合をやめさせよう#03-10
住宅地周辺での農薬散布について、9月に農水省より出された通知をふまえ、文部科学省、厚生労働省、国土交通省らから所管について、新たな通知がだされつつあります(各省通知参照)。これらの中には、私たちが、4月に農水省へだした要望書にある「複数農薬の自家混合散布を禁止し、夜間や降雨が予想される時の散布を禁止する」の項目が(てんとう虫情報139号)、まったく、盛り込まれていません。本号では、あらために、自家混合の問題を取り上げることにします。
★自家混合と登録混合剤
農水省は、農薬使用基準省令についてのパブコメ回答の中で、自家混合について『農薬の混用は省力化の面で有利であっても、効果・薬害・作業者の安全性が把握されておりません。製剤となっている混合剤を使用するよう指導してまいります。』としました。
農薬使用者は、容器ラベルに記載のある適用作物や使用方法(散布回数、散布時期、希釈濃度)を遵守するよう義務づけられましたが、農業現場では、登録された混合剤を使用するのでなく、いくつかの単剤を自家混合することが日常化しています。残留基準をクリアーするという観点からいえば、農薬の作物残留値は、かわりないかも知れませんから、使用基準違反となりません。
しかし、散布液の総農薬濃度についていえば、例えば1000倍希釈の単剤2種を混ぜた場合、500倍希釈となりますから、単剤を1000倍希釈で2度散布するよりも、毒性は増すことになります。また、通常、混合剤では、薬効・薬害試験、作物残留性試験、急性毒性試験、魚毒性試験等の成績を提出した上で登録されていますが、自家混合においては、単剤のみのデータしかないわけで、混合によって化学反応がおこれば、薬効や薬害はどうなるかわかりませんし、片方の剤に、界面活性剤などが添加されていると残留性も異なってきます。毒性については、新たな有害物質の生成とか相乗効果が不明なまま使うということになります。
★JA全農の混用適否表
自家混合は、登録された混合剤の使用とは異なり、栽培・管理上の不都合がおこる可能性が高く、その場合、すべて、使用者の自己責任ということになります。うっかり自家混合して、効果がなかったり、薬害がでては、使用者にとって、元も子もありませんから、現場で参考にする資料として、JA全農・肥料農薬部作成の「農薬混用適否表」が重宝さています。この適否表は、『効果・薬害等の試験例・事例を参考にまとめたものである』『混用した製品として保証するものではない』『地域・産地で経験や知見がある場合は本表より優先させる』
と記してある上、誰が、何時、どこで、試験をしたかについては、どこに書かれていない代物です。
適否表では、農作物毎に一覧表のかたちで、2種の農薬の組合せの適否が、混用して問題なかった/使用直前の混用なら問題なかった/混用で凝縮するが、撹拌すれば散布に問題なかった/物理性、効力低下などの問題がある/薬害の点で問題がある/混用できない/混用の意味がないか、機会がない/判定するに足りる知見や経験が乏しいに分類・記載されています。
対象作物は、水稲/ミカン/リンゴ/ナシ/モモ/カキ/ブドウ/キュウリ/トマト/ナス/ピーマン/キャベツ/ハクサイ/チャの14種で、例えば、ミカンでは、殺虫剤79種×殺菌剤46種、キュウリでは、殺虫又は殺菌82種×殺虫又は殺菌75種の組合せの一覧表に、上記の分類が●や×ほかの符号で示されています。
★JA全農への質問と回答より−省略
★農水省への新たな要望と質問
農薬を混合して使用する場合、薬効、薬害、作物残留性、毒性等がA剤+B剤=(A+B)剤とならないことです。そのため、農薬取締法では、製剤毎にきちんとした試験の実施を義務付け、登録することにしているわけです。しかし、登録に費用がかかるとして、農薬メーカーは、薬効・薬害・作物残留性試験、毒性試験をやらないで、すまそうとします。それどころか、自家混合を、長年、農薬を使用してきた農家の経験を集積した優れた農業技術であるとして、都道府県の農業試験場などが実施した混合使用のデータをそのままいただき、自家混合できることを、自社の農薬販売の宣伝にするメーカーもあります。
仮にそうだとすれば、「特定農薬」と同列に考えるべきで、最低限、薬害・薬効・安全性を示すデータを求めて、農業資材審議会が、可否の判断をくだすべきではないかと思います。
私たちは、このような問題のある自家混合について、下記のような、質問・要望書を
農水省に送りました。
農水省への要望と回答(04/03/10)
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作成:2004-03-27