行政・業界の動きにもどる
t14903#防除業者規制条例はなし−届出制実施は、滋賀県と兵庫県のみ〜都道府県知事へのアンケートその2〜#04-01
前号につづき、今号では、同時に実施した『防除業者の事前届出と記帳を義務づけ、その監督・指導できるような条例を制定してください。』という要望に対する回答をまとめました。
★届出制度志向が後退
改定農薬取締法の施行前の2003年2月に行なった都道府県知事へのアンケート調査では、届出制度にすべき:15県(岩手/神奈川/山梨/静岡/福井/岐阜/三重/滋賀/奈良/岡山/山口/高知/熊本/大分/鹿児島)、事後届出より厳しい制度にすべき:2県(京都/兵庫)の回答があったのですが、実際に、改定法に基づく農薬使用基準省令が施行されると、自治体の考えも、国に逆らわないという意識が強くなったのか、要望について回答しなかったり、単に聞き置くという県も多く、届出制度実施派は大幅に後退しました。回答のあった29県の内訳は以下のようです。
○条例ではないが、要綱で届出制度実施:2県
兵庫県と滋賀県*が罰則はありませんが、以前の農薬取締法の防除業者届出制度の内容
よりも詳しい届出内容で、制度を実施しています。詳しくは、後述します。
前回、厳しい制度にすべきと答えていた京都府は今回の回答では「造園業者と連携を
密にして指導している」と後退しています。
○条例は考えていない:14県
北海道/秋田/岩手/山形/神奈川/山梨/石川/福井/鳥取/広島/山口/
愛媛/佐賀/宮崎/
○条例制定は考えていないが、他の方法で指導する:12県
【福島】従来の防除業者を、今年度から認定制度としてはじまる農薬適正使用アドバ
イザーの対象者として、本制度の中で農薬の適正使用に関して啓発・指導していく
よう準備を進めている。
【群馬】農薬使用者の範疇として、防除業者への記帳等適正使用を確認するため、引
き続き立ち入り検査を行っていく。
【東京】農薬の安全・適正な使用については、毎年実施している農薬安全使用講習会
や農薬管理指導士養成及び更新研修などを通じて指導している。
【新潟県】防除業者については、県で農薬管理指導士として認定。
【岐阜】10月27日付けで「岐阜県農薬安全使用に係る指針」を県独自に策定し、
関係機関に周知した。また、同指針の啓蒙パンフを関係機関に配布予定。防除業者
の資質向上を図るために、県が認定する農薬管理指導士の資格を取得するよう指導
している。今後は防除業者の把握と指導強化を目的に、県や市町村等の委託業者に
対して、委託する要件として県の農薬管理指導士の有無をいれるように働きかけて
いく予定。
【奈良県】県知事が認定する農薬管理指導士を活用して、防除業者の農薬に関する知
識向上と安全使用の推進を図りたいと考えている。防除業者の多くは、すでに農薬
散布に伴う周辺への臭いやドリフト等に係る問題に直面し、散布前の周辺への周知、
散布方法の改善等に取り組んでいる。その一方で、季節的に防除を行う造園業者や
農家もあり、依然として農薬散布に伴う問題が生じているのも事実である。このた
め、より多くの造園業者に、これからの農薬散布には最低限みにつけていないとい
けない知識や情報があることを自覚させ、農薬管理指導士としての認定を受けてい
ないと商売もできない、管理指導士の認定を受けたのでうまくいったというような
認識を持つよう指導している。
【和歌山】防除業者に対しては、今後も農薬適正使用の啓発、指導をはかる必要があ
るため、定期的な研修会及び危害防止運動等の実施。
【島根】要望の趣旨については了解したが、現在のところ所属している団体等を通じ
防除業者を把握し優先的に指導をしている。無人ヘリによる農薬使用者は別途把握
する方向で検討している。今後、今の体制で不十分と判断されれば、条例化も併せ
検討する。
【徳島】本年度から農薬適正使用に関する地域のリーダーとして活躍をしてもらう方
(農業者、防除業者)を農薬適正使用アドバイザーとして県知事が認定している。
今後は、この農薬適正使用アドバイザーが中心となって、農薬使用者として適正使
用をすすめたいと考えている。
【熊本】農薬管理指導士の認定にあたって、県造園建設業協会や県造園組合連合会に
通知を行い、多くの防除業者の方に資格を得てもらうように働きかけている。今後
も、この農薬管理指導士制度を推進することによって、防除業者の農薬適正使用推
進、農薬に関する情報伝達、記帳推進等の指導が可能だと考える。
【長崎】農薬、動物用医薬品、肥料等の使用者への規制を含む「人と環境にやさしい
長崎県農林漁業推進条例(案)」を制定に向け準備している。
【鹿児島】県が有する防除業者名簿をもとに、法の遵守指導と情報提供をおこなって
おり、今後とも防除業者の把握に努めながら適正使用が徹底されるよう指導してま
いりたい。
○県独自では、防除業者の規制は考えないが、国の制度として求める:3県
【静岡】防除業者の届出・記帳に関しては、法で規定した上で、国、都道府県で取り
締まるべきだと考えており、今後、国に対し、全国一律に取り締まる制度とするよ
う全国会議などの場で働きかけていく。
【三重】全国的に統一した制度によることが妥当であり、県独自の条例化は難しいと
考える。
【高知】機会あるごとに以前から国へ防除業者を届け出制にするように要望する。
★役割があいまいな県認定の農薬管理指導士
いくつかの県では、防除業者に、独自に認定している農薬管理指導士や農薬適正アドバイザーなどの資格をとるように指導しています。
しかし、これらの資格は、研修や講習を受けることによって与えられ、その資質は個人によって大きな違いがあるでしょうし、不適正な農薬使用をしたからといって、資格がはく奪されるようなものではありません。
指導士の位置付けもまちまちです。群馬県では、「農薬の適正な販売、使用及び管理に関する条例」の第7条(群馬県農薬管理指導士の設置)で『販売業者は、その営業所ごとに、農薬に関する専門的な知識を有する者として知事が認定する群馬県農薬管理指導士を置くよう努めるものとする。』としていますが、防除業者には資格を求めていません。
昨年12月に269人が初認定された徳島県の「農薬適正使用アドバイザー」は、地域の農業従事者へ使用基準の遵守などを指導、助言をするにすぎません。
一方、福島、新潟、岐阜、奈良、熊本のように、防除業者に農薬管理指導士の資格をとるよう求めているところもあります。ただし、
「岐阜県農薬安全使用に係る指針」では、『C内分泌攪乱作用を有すると疑われる化学物質(環境省の環境ホルモン戦略計画SPEED98に掲載された物質 別表第1)として指摘された農薬や毒性の強い農薬については可能な限り使用しないよう努めること。』などを含む「農薬使用に係る安全確保のための基本的事項」と、そのための「具体的事項」が記載されていますが、対象となる使用者は『農家、防除を業とする者(委託する者も含む)、その他家庭菜園、芝等の農作物に農薬を使用するすべての者を対象とする。』とあり、防除業者は特別視されていません。
★滋賀県の防除業者届出制度
*
滋賀県は、防除業の届出を県の要綱で取り決め、防除業者を把握・指導しようとしています。
「滋賀県農薬安全使用対策要綱」の「U.推進方法−4.農薬取扱者等に対する報告命令 検査および指導−(3)」項、すなはち『県内に事業所もしくは営業所を置き、農薬を用いた防除を業とする者(ただし、倉庫内などの密閉された施設内における防除、航空機を使用した防除、ゴルフ場のみ防除するものを除く)は、氏名、住所および使用する農薬等をあらかじめ届け出るものとする。』によるもので、以下のような防除業届を知事に提出することになっています。届出内容は、旧農薬取締法の防除業届と似通ったものですが、業者の研修等に役立つと考えられます。
*:滋賀県は、06/6/23に新要綱「滋賀県植物防疫・農薬安全使用対策要綱」を策定し、防除届制度を廃止した。
★兵庫県の防除業者届出制度
兵庫県は、以下に示すような「防除業者に関する指導要綱」を定め、防除業者の届出制度を実施しています(届けの様式)。遵守事項には、『毒性の強い農薬を使用しないこと』『散布前後の周知』『防除日誌を作成し、3年間は保存すること』などが挙げられています。
特に、目に付くのは、無人ヘリコプターについてで、使用するすべての農薬名、ヘリの保管場所やオペレーターの氏名を届け出るようになっています。無人ヘリの場合、通常の地上散布液より100倍程濃度の高いものを散布しますから、監督をきちんとしようという意図でしょうが、県警あたりは、テロ対策に利用するかも知れませんね。
★罰則を伴なう防除業者取締りが必要だ
上記2県の要綱による防除業者届出制度では、届けなければ、営業できないという性格のものでなく、無届け業者に届出するよう指導するには役立つでしょうが、従来の農薬取締法のように罰則を科することはできません。
いままでも、防除業者による農薬受動被曝が多くみられ、今後も多種多量の農薬を扱う防除業者が増えることを考えれば、きちんとした法整備が必要で、罰則を伴なう県の条例にするか、いくつかの県が求めているように、防除業者を一般使用者と区別して、きちんと農薬取締法で、取締まるのが筋です。
以下に、03年農薬取締法改定時に、民主党が衆議院農林水産委員会に提出し、否決された修正案を参考として示しておきます。この案では、防除業者は登録制度をとり、都道府県が実施す農薬管理指導士の試験に合格したものを置くことが義務付けられていますが、さらに、厳しく、農薬使用履歴等の帳簿記載を義務付けたり、不適切な使用をした業者の登録の取り消しを含む罰則も必要ではないかと思います。
民主党の修正案
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作成:2004-6-27、更新:2007-07-11