行政・業界の動き
t15001#農薬現地混合についての農水省見解は?〜いいのか悪いのかすらわからない事務連絡を公表#04-02
 私たちは、昨年10月8日に、農薬の現地混用(散布場所で2種類以上の農薬を混ぜ合わせて使用する。自家混用、現地混合とも言う)について、農水省にその見解を質し、無人・有人ヘリによる空中散布と住宅地周辺等での混用禁止などの要望を行いました(記事t14602)。  なんども、回答を求めましたが、農水省は、しばらく待ってくれというのみで、まだ、正式な回答はありません。しかし、2月2日、私たちには何の連絡もなく、農薬対策室長名で、『農薬の現地混用について』という事務連絡をだしました(2月9日に、農薬対策室のホームページ「農薬コーナー」で公開)。文書の内容は、資料に示しましたが、非常にあいまいで、自家混合をしてもいいのか、悪いのかすらはっきりわかりません。私たちへの回答は文書で出すとのことですので、待っていますが、この内容なら期待できません。

★これでは、農薬受動被曝防止にはつながらない
 農水省は、いままで、現地混用をしないで、登録された混合剤を使用しろと指導してきましたが、今回の文書では、現地混用するなというのでなく、混用したときに、危害等が生じないよう注意して行なえとしています。その際、参考にするのは次節で述べるJA全農の「農薬混用事例集」です。
 ここに載っていない、事例のないものは、混用を避けろといっています。住宅地周辺では、飛散のないよう注意しろ−即ち、同省が出した局長通知「住宅地等における農薬使用について」を遵守しなさいというだけです。いずれも、混用するなとは指導していませんから、具体的には、どういうことを意味するのか明確ではありません。
 農薬混用事例集には、非食用作物への混用事例はほとんどありませんから、街路樹や芝では、勝手な現場混用はできないと理解していいのでしょうか。また、無人及び有人ヘリコプターによる空中散布用農薬の現場混用については、事例が少ない上、地上散布よりも100倍以上高い散布濃度で撒かれます。例えば、水稲のカメムシ対策に適用のあるMEP50%含有スミチオン乳剤は、地上散布ならば、1000倍希釈、無人ヘリならば8倍希釈です。こんな高濃度の農薬による吸入の危険性を考えると、登録された混合剤しか使えないと解釈していいのでしょうか。
 そもそも、登録に際して、混合製剤についての急性毒性試験実施が義務づけられたのは、千葉県における、混合剤の空中散布で農民が死亡した事件が契機になったのですから。
 現地混用する農民に対して、全農資料には、有機リン剤同士の混用や皮膚障害を起こしやすい農薬と乳剤との混用についての注意書きがみられます。しかし、前述の街中での散布や、無人・有人ヘリによる高濃度散布も含め、農薬散布に全く関係ない農薬受動被曝者(受動喫煙のように自分では使用しないのに農薬の害を受ける人)に対する配慮はみられません。防除業者が街中で劇物指定農薬を現地混用して散布した例もあります。
 単に「住宅地等・・・」の通知を守れというだけでは、現地混用しようとする人にインパクトを与えません。農水省の文書に、混用してはならないケースを明記すべきだと思います。

  ★JA全農の「農薬混用事例集」
 今回の事務連絡によって『生産者団体が発行している「農薬混用事例集」等を参考にすることも有効である』として権威づけられたのは、JA全農肥料農薬部が出している事例集のことでしょう。
 昨年4月の私たちの要望に対して、JA全農は「次回改訂時に混用を薦めているといった誤解を与えないようにする」といっていましたが、どのようになったか尋ねてみました。
 その結果、03年8月発行の混用資料では、従来『混用適否表』となっていたタイトルが『農薬混用事例集』と変わっていることがわかりました。また、冒頭の「混用事例集についての注意事項」の第1項が『この混用事例集(以前は混用適否表)は、使用者が混用する際の目安となるように薬害・物理化学性等(以前は効果・薬害等)の試験例・事例を参考にまとめたものである。【また、本事例集は混用事例を紹介するもので、混用を薦めるものではない。】』となり、「効果」という語句がなくなり、【】の部分が追加されていました。
 効果を確認したわけでなく、混用を薦めるものでもないということで、全農として、何かあった時の責任を回避しようとする姿勢がみてとれます。
 そんな、無責任なものを「参考にするのは有効」であるという農水省にも首をかしげざるを得ません。
 結局、農水省も全農も混用を禁止するわけでも、薦めるわけでもなく、薬害や健康被害が生じたらすべて、農家の自己責任にしてしまいたいようです。

★混合剤の農薬登録は推進されるか?−省略


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作成:2004-02-25