農薬の毒性・健康被害にもどる
t15201#山形白鷹町でのカラス大量死〜有機リン系殺虫剤MPPが原因だった#04-04
 鳥インフルエンザウイルスが問題となっていた3月、山形県白鷹町でカラス、岐阜県高山市でカラス、兵庫県伊丹市でハトの大量死が報じられました。高山市の場合は、有機リン剤EPNを含むトウモロコシが原因と疑われていますが、伊丹市の場合はどのような毒物か不明です。
 白鷹町の場合は、カラスが大量に死んだという通報があり、すわ、鳥インフルエンザかと大騒ぎになったと河北新報が報道しました。検査の結果、鳥インフルエンザウイルスは陰性であることがわかりましたが、では、なぜ、カラスが大量死したのでしょうか。
 原因究明がなされた結果、同町にある酪農業協同組合堆肥センターで、ネズミ駆除を目的として有機リン系殺虫剤のMPP(バイジット)を殺そ剤に混ぜて使用し、それをカラスが食べて死んだということがわかりました。昨年暮れに明らかになった北海道のタンチョウのつがいの死もMPPが原因でした。1988年には石川県で空中散布されたMPPによってツバメが大量死しています。
 今回、関係者は、鳥インフルエンザでなく本当に良かったと胸をなで下ろしていたということですが、とんでもない話です。山形県は2002年の無登録農薬販売で最初に販売業者が逮捕された県で、農薬使用については厳しく指導されていると思いましたが、まだまだのようです。詳しい事情と今後の対策を山形県と、堆肥センターに問いあわせました。紙面の都合上、短くまとめました。

★カラス74羽を回収
 まず、死亡した鳥の数と検出した農薬ですが、県の回答によると、カラス74羽を回収。県警察本部科学捜査研究所で3月9日に回収した死亡カラス2羽の胃内容物を検査した結果、バイジット乳剤に含まれる成分が検出されたということです。使用したMPP剤は、商品名がバイジット乳剤、登録番号は第4463号。他に殺鼠剤のクマリン系粉末(商品名:エンドックス。同系の農薬は、2002年9月に登録失効)を主に使用したとのことです。
 県は「当該使用者は、豆腐屋から豆腐カスを10リットルのバケツに3分の1程度譲り受け、これにエンドックスを約200g、バイジット乳剤を約50ml混ぜて使用した。エンドックスは昭和50年代に購入したものであり、殺鼠効果が期待できないと判断し、バイジット乳剤を使用したと説明している」と回答しています。
 昭和50年代に購入した殺そ剤が何故今頃使用されたのか、堆肥センターで聞いたところ、この堆肥センターは昨年から稼働していますが、建物自体は廃業した畜産農家のもので、そこに殺そ剤が残っていたので使用したとのことです。エンドックスのラットの半数致死量は16.5mg/kgであるのに対し、MPPはラットで190〜615mg/kgですが、野鳥のイエスズメ5.4mg/kg、ニワトリ28mg/kgです。MPPでネズミが殺せると思ったのでしょうか。何の考えもなく、手近にあった農薬を安易に使用したことがうかがえます。
 殺そ剤は野ネズミだと農薬取締法、イエネズミだと薬事法の対象になります。ネズミの種類を特定することは重要ですが、堆肥センターはそこまではわからないと答えました。ネズミによる被害があったのかという問に対して、県は「今年2月頃から、保管している堆肥を覆うビニールシートの紐がネズミに食いちぎられる被害が発生していた」と回答しています。それほどの被害とは思えません。
 それよりも、本当はカラスの被害の方が多かったのではないかと思い、堆肥の原料は何か聞いてみました。県は「原料は、牛糞、稲わら、水分調整剤」としていますが、それだと、ネズミやカラスが寄りつくとは思えないため、堆肥センターに直接問いあわせました。その結果、堆肥原料は牛糞が主だが、食品会社からの残渣も使っているとのことでした。また、近くにカラスのねぐらがあるようだとも言ってました。

  ★数ある法律に違反していないと
 では、このような農薬の使用方法や野鳥殺害はどういう法律に違反しているのか、可能性のある法律名をあげて聞いてみました。県の回答は以下のとおりです。−以下省略−

  【農薬取締法:抵触しない】

  【薬事法、毒物及び劇物取締法:抵触しない】

  【鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律:抵触しない】

  【動物の愛護及び管理に関する法律:抵触しない】

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作成:2004-4-26