ダイオキシンにもどる
t15206#高松市の公園でダイオキシン汚染 APCPによるダイオキシン汚染事件か #04-04

  前号記事@一般環境(土壌)調査でいままでの最高値検出

★ダイオキシンパターン解析はPCPの可能性を示唆
 当グループは、後述のようの質問・要望書を高松市に送り、土壌分析結果の詳細データを入手し、ダイオキシン同族体・異性体分布の解析を試みました。
 その結果、TEQ値の高い地点で、含有率が高いダイオキシンの同族体・異性体は、下表のように、八塩化ダイオキシン(=DD)、1,2,3,4,6,7,8-七塩化ダイオキシン、八塩化ジベンゾフラン(=DF)、1,2,3,4,6,7,8-七塩化ジベンゾフランであることがわかりました。
 表2 TEQ値の高い地点におけるダイオキシン同族体別の含有率
                      (地点番号は、前号の図参照)

	 地点                13       1       2        6      3      5 
	1234678-七塩化DF %    1.7      2.1     1.3     1.4     1.0   0.2
	八塩化DF         %    8.6     10.7     7.0     7.1     5.0   1.1
	1234678-七塩化DD %    7.3      7.3     6.3     7.6     3.9   2.3
	八塩化DD         %   68.2     66.3    73.9    71.4    83.3  93.9
	全DD+全DFpg/g     2200000  920000  460000  210000  240000 33000
	 pgTEQ/g             3200    1400     550     300     200   200
 公園土壌中のダイオキシンパターンは、比較のために離れた地区で採取された土壌検体のパターンに比べ、四塩化ダイオキシン、四塩化ジベンゾフラン、五塩化ジベンゾフラン、コプラナーPCBの含有比率が低いこともわかりました。
 最も汚染度が高かった地点13(実測値220万pg/g、3200pgTEQ/g)では、CNP由来と思われる1368-、1379-T4CDD(四塩化ダイオキシン)がみられますが、実測値への寄与率は、 0.025%と低いものでした。また、焼却系に多い四塩化と五塩化ジベンゾフランの比率も低い数値でした。PCBについては、コプラナー同族体パターンはカネクロール400に極めて類似したものでしたが、その全濃度は、17000pg/gで、全ダイオキシン類の0.77%、TEQへの寄与率は0.26%と低いことがわかります。
 この地点13について、「農薬毒性の事典」の著者の一人である冨田重行さんに依頼し、多変量解析という統計的手法により、既存のどのような汚染源がどのような割合で混ざりあっておれば、公園土壌のダイオキシン同族体・異性体パターンに類似したものになるかを調べてもらいました。ベースになるパターンとして、横浜国立大学の益永さんらが分析した除草剤PCP4種とCNP4種の計8種が選ばれましたが、解析結果は、3種のPCPの混合物から予測される同族体・異性体比率の分布パターンと極めて近いものであることがわかりました。
 以上のことからPCPがダイオキシン汚染源である可能性が強く示唆されました。

 PCPはペンタクロルフェノール系の農薬で、はじめて登録されたのは1955年です。60代から70年代初めにかけて、水田除草剤として多用され、魚大量死事件を全国でおこしました。殺菌剤や畑作用除草剤としての登録もありましたが、 1990年にすべての登録は失効しました。農水省は、2001年4月になって、不純物としてダイオキシン類を含むという理由で、登録失効後も農家が所有しているPCPの回収にのりだしました(52.177トンが回収)。PCPは、農薬以外にも、木材防腐剤やシロアリ防除剤、皮革防腐剤としての用途があり、身の回りでの監視が必要な薬剤の一つでもあります。

★PCPはどこから来たかの解明を
 高松市は、てんとう虫情報151号で紹介したように、公園土壌のダイオキシン汚染源について、PCP、CNPである可能性が高いと述べていますが、わたしたちの解析はPCPの寄与が大きいことを示しています。
 汚染の実測値が220万pg/gということですから、PCPそのものが、公園で使用されたことも否定できません。防腐剤処理した古枕木がガーデニングに使われますが、PCP処理した木材が花壇などで使われていないか。処理木材のチップが園芸資材として使用されていないか。PCP処理した皮革製品の廃棄物が肥料などに混合していないかなども気に懸かります。
 高松市は、汚染された土を入れ替えることで、収拾を図ろうとしていますが、その前に、このような高濃度のダイオキシンで汚染された原因を調査することが再発防止の観点からも重要です。公園関係者からの聞き取りをすすめ、汚染原因として考えられるPCPがどこから来たかはっきりさせるべきです。
 PCPは水溶性ですが、前号の表1にある三井化学やクニミネ工業の例をみると、公園の汚染土壌中に、まだPCPそのものが残っていても不思議ではありませんから、分析して確認することも重要です。

★高松市への質問と回答 −省略−


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作成:2004-9-25