農薬の毒性・健康被害にもどる
t15402#家庭用品による吸入事故−殺虫剤と防虫剤がワースト1−厚労省「家庭用品に係わる健康被害病院モニター報告」より#04-06
 厚生労働省の「家庭用品に係る健康被害病院モニター報告」の02年度のものが3月に公表されました(てんとう虫情報142号で、01年度の報告を紹介)。この調査は1979年から実施され、モニター病院として皮膚科領域8病院、小児科領域8病院が、1996年度からは(財)日本中毒情報センターが協力し、情報を提供しています。報告された健康被害の実態は専門家により検討され、その結果が毎年報告書としてとりまとめられています。
 2002年度に報告された事例の件数は、皮膚障害172件(前年度182件)、小児誤飲672件(同886件)、吸入事故等681件(同615件)で合計1,525件(同1,683件)でした。皮膚障害や誤飲事故は減少しているものの、吸入事故は増加しています。
 ここでは、日本中毒情報センターがまとめた吸入事故等に関する報告から、2002年度の原因製品別の件数を円グラフで示します。

図 2002年度の家庭用品等の吸入事故件数−省略−

★殺虫剤と防虫剤がワースト1
  02年度の総数は681件でした。原因製品別でのワースト1は殺虫剤で、昨年より38件増え171件で、全体の25.1%を占めています。これに、防虫剤の14県(前年比2.3倍)を合わせた185件の有症率(何らかの症状を訴えた人の比率)は73.5%です。
 報告では、以下のように被害状況を分析し、『使用の際には細心の注意が必要である』としています。
  1.乳幼児・痴呆症患者などのうち、危険認識能力が十分にないものによる事例 
  2.用法どおり使用したが、健康被害が発生したと思われる事例 
  3.燻煙剤を使用後、十分換気せずに入室してしまった事例 
  4.隣の部屋で燻煙剤を使用し、煙を吸入してしまった事例 
  5.適応量を明らかに超えて使用した事例 
  6.蒸散型の薬剤を使用中、入室してしまった事例 
  7.ヒトや動物の近辺で使用し、影響が出た事例 
  8.本来の用途以外の目的で使用した事例 
 事例をの一部を下記に示します。−事例省略(報告本文をみてください)

★農薬が52件で増加傾向
 上記の例は、家庭用の殺虫剤ですが、これとは別に園芸用殺虫・殺菌剤によるものが36件、除草剤によるものが16件があり、いずれも増加傾向になっています。
 薬剤の成分別では有機リン含有剤25件、グリホサート含有剤6件、ピレスロイド含有剤5件、尿素系除草剤含有剤5件でした。
 報告では、『屋外で使用することが多く、使用者以外にも健康被害が発生しているのが特徴である。家庭園芸用であっても十分な注意喚起を図る必要がある。』として以下のような原因をあげています。
  1.マスク等保護具を装着していなかったことによる事例 
  2.乳幼児・痴呆症患者など危険認識のない者による事例 
  3.用法どおり使用したが、健康被害が発生したと思われる事例 
  4.使用時に風下にいたため、吸入した事例 
 事例を下記に示します。−事例省略

★あいかわらず多い塩素系洗浄剤や漂白剤の事故
 洗浄剤(住宅用・家具用)と漂白剤の事故例は、それぞれ95件と43件で、そのうち次亜塩素酸系の製品が前者で53件、後者38件ありました。事例の一部を下記に示します。
 酸性物質(塩酸や食酢など)との混合による塩素ガス発生事例は21件にのぼり、「まぜるな危険」などの表示だけでは、事故を絶やすことはできません。

    以下−事例省略

★芳香・消臭・脱臭剤や蒸散型が前年比1.8倍
 芳香・消臭・脱臭剤に関する事例は70件と昨年より31件増加しました。エアゾール型の製品の噴射方向を誤ったケースもありましたが、蒸散型を車の中で、用法通り、使用したにもかかわらす、咽頭痛や眼の違和感を訴えた事例もありました。
報告書のまとめによると、事例の年齢別件数では、、9才以下の子供の事例が265件(38,9%)を、性別では、女性が372件と全体の54.6%を占めていました。
 製品の形態別では、「スプレー式」が254件(そのうちポンプ式が91件)、「液体」191件、「粉末状」109件、「蒸散型」60件、「固形」51件、その他14件、不明が2件でした。蒸散型は、閉鎖空間等において一回の動作で容器内の薬剤全量を強制的に蒸散させるタイプの薬剤で、くん煙剤−水による加熱蒸散タイプを含む、全量噴射型エアゾール等が該当し、2000年度22件、2001年度33件と年々増加している点が憂慮されます。
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作成:2004-11-25