食品汚染・残留農薬にもどる
t15503#残留農薬ポジティブリスト制度のパブコメまとめ〜農薬摂取を減らすために一層の運動が必要#04-07
   【第一次案参考資料】

    暫定基準(第1次案)に対して寄せられた主なご意見について(未定稿)
    以下、最終稿
    暫定基準(第1次案)に対して寄せられた主なご意見について
    暫定基準(第1次案)に対して寄せられた個別意見について
 緩い基準を大量に決めても農薬摂取量は減らない〜残留農薬等の暫定基準に関して意見提出     第二次案については連載中 記事t15902記事t16004
 昨年10月末から3ヶ月間、厚生労働省はポジティブリスト制度に関する暫定基準一次案についての意見公募をしましたが、その結果と行政側の見解が、5月26日に開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会で未定稿という形で、公表されました(当グループの意見はてんとう虫情報150号掲載)。
 意見数は延べ1180件で、国内外の農薬メーカー及びその団体、外国政府や穀物生産輸出団体、日本国内の加工食品メーカーや農作物の輸入業者及びその団体、地方自治体機関、消費者団体など226の団体・個人から寄せられています。なお、この回答案は個別農薬の基準への意見は触れられていません。
 その内容別内訳は、下記のようです。
   総括意見        :49
   一般規則        :29
   不検出         :17
   暫定基準設定方法    :98
   加工食品        :43
   基準値に係る個別意見  :664
   今回の意見募集の対象外 :280
    (1)現行基準の取扱い  :8
    (2)一律基準・対象外物質:29
    (3)分析法       :61
    (4)今後の検討方法・スケジュールなど  :45
    (5)監視指導関係    :50
    (6)残留基準設定方法一般:24
    (7)その他       :63
 これらの意見をみると総じて、消費者サイドは、基準をできるだけ低くすべきであるとしているのに対して、農薬業界・食品供給サイドは、厳しい部分の緩和を求めています。全体の56%を占める基準値に係る個別意見664件のうち、ダウ・ケミカル日本138件、アリスタライフサイエンス96件、バイエルクロップサイエンス48件など、外資系の農薬会社からの緩和要求が目立ちました。
 今後の残留基準の設定は、消費者にとっては、マイナスの方向へ行く気配が濃厚で、農薬摂取をできるだけ減らすための一層の運動が必要です。
 以下に、厚労省の資料から主に消費者サイドの意見をに対する厚生労働省の回答や他の気になる意見を示します。
<総括的な意見>
 パブリックコメント(意見公募)を求めた一次案には、何のために暫定基準を設定するかという理由について、流通を混乱させないためということしか書かれていませんでした。
【意見】暫定基準設定の方針の前提として、「国民の健康保護」の趣旨を明記すべき。(日本生活協同組合連合会)
【回答案】ご指摘のとおりですので、改めます。

【意見】総農薬摂取量を減らすため、総農薬基準を決めるべき。(反農薬東京グループ)
【回答案】(前略)なお、個々の物質の毒性・物性等が異なることから、国内的にも、国際的にも、原則として、個々の農薬ごとに基準を設ける方策がとられているところです。

<基準が設定されていない物質はNDにすべき>
【意見】 ポジティブリスト制とは、本来、残留基準が設定されていない物質は検出されてはならないとする制度である。したがって、毒性データがない場合には、原則不検出とすべきであって、検出を許される一定の量は、検出限界量とすべきである。(神山美智子)
【回答案】農薬等については、食品添加物とは異なり、環境経由等による非意図的な残留が想定されることなどを踏まえ、諸外国の事例も参考に、「人の健康を損なうおそれのない量」として基準値が設定されていない場合に適用する一定の値(一律基準)等を定めることとしたところです。残留農薬の規制としてポジティブリスト制を導入している国、例えばニュージーランドでは0.1ppm、ドイツでは0.01ppm、米国では明文化されていないが、運用上、農薬によって0.01ppm〜0.1ppm の範囲を目安に規制が行われていると承知しています。また、EUは0.01ppm で規制するという案を示しています。
 なお、検出限界をもって規制するという方策は、科学技術の進歩により検出限界は変わり得るものであること、人の健康危害のおそれと係わりなく検出限界を採用することは、あまりに過剰な規制になりかねないことなどから、平成15年5月の法改正において採用されていません。

<抗生物質について>
【意見】抗生物質等を「含有しないこと」ではなく、基準を決めるべき。((株)ニチレイ、(財)食品産業センター他)
【回答案】従前から抗生物質は動物用医薬品のみでなく、農薬として使用される場合においても、個別に基準値が設定されたものを除き、「含有してはならない」こととされています。ポジティブリスト制の施行にあたっても、これらの規定は従前のとおりとすることとしています。従って、抗生物質については一律基準は適用されず、基準がある場合には当該基準、基準がない場合には「含有してはならない」という規定が適用されます。なお、抗生物質についても、他の農薬等と同様に、我が国の基準、コーデックス基準、米国基準等があるものについては暫定基準を設定しています。

<不検出とする物質について>
【意見】これまでADI が設定されており、登録保留基準や残留基準が設定されている物質であっても、その後、発がん性がみつかったもの(DDVPなど)、内分泌かく乱性が動物実験により確認されたもの(ビンクロゾリン)、耐性菌問題を最も多く発生させており、人畜共用であって、現在定められている基準を変更し、本来使用禁止を決めてゆくべきもの(オキシテトラサイクリン)などについても、不検出とすべきである。また環境省が環境ホルモンとして疑われている化合物の例としてあげている物質(DDT他)は、原則として不検出もしくは検出限界を暫定基準値とするべきである。また同じく環境省が優先してリスク評価に取り組む物質は、不検出とすべきである。(神山美智子)
【回答案】(前略)ご指摘の化合物等については、国際的にも国内的にも不検出としなくてはならないする状況にはないと考えています。(以下略)

<暫定基準設定方法について>
 基準値の決め方に関して、厚労省は科学的に基準を設定しているものとして、@コーデックス基準、A日本の登録保留基準があればそれを横滑りさせる、Bこれらがない場合は、米国、カナダ、EU、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国の基準をもってくる、Cこの5カ国の基準が複数ある場合はその平均値を取るという方針を示しました。当然、これに対する意見は真っ向から別れます。以下、厚労省のまとめから大ざっぱに意見を分けます。
【意見】複数の基準のうち最も低い基準を採用すべき。(日本生活協同組合連合会、反農薬東京グループ、神山美智子、河道前伸子)
【意見】意見:最も高い基準を採用すべき(オーストラリア政府、EU、駐日大韓民国大使館、中華民国行政院、(財)食品産業センター、アメリカ穀物協会、飼料輸出入協議会、製粉協会、農薬工業会、メチルブロマイド工業会、メチルブロマイド工業会、Japan Food Information Center(JFIC)、Joh. Barth&Sohn GmbH&Co.KG、S. H. Steiner, Hopfen, GmbH、TOP HOP Ltd、U.S. wheat associates、シンジェンタジャパン(株)、大日本製薬(株)、(株)日清製粉グループ本社、日清製粉(株)、日本製粉(株)、バイエルクロップサイエンス(株)、堀池俊介、農薬工業会)
【意見】実行可能なものにしてもらいたい((財)食品産業センター、Japan Food Information Center (JFIC) 、バイエルクロップサイエンス(株)、堀池俊介)
【意見】平均値を用いた根拠は何か(米国大使館)
【意見】供給バランスに配慮して基準を決めるべき(アメリカ穀物協会)
【回答案】暫定基準(案)は、我が国、コーデックス、参考とする国等の様々な基準値を参考としており、国民の健康の保護や、不要な貿易障害の回避等の観点から、コーデックス基準、登録保留基準、JMPR 等と同様の科学的な方法により基準を設定されている外国の基準を参考に定めています。具体的には次のとおりです。(中略) その際、複数の国の基準がある場合には、それぞれの国では、それぞれの基準が国内産品はもとより輸入品にも適用されていること、これらの国では残留試験結果等に基づき科学的な方法によって基準が設定されていると考えられること、今回の暫定基準の設定は、ポジティブリスト制の導入のため数多くの農薬を対象としていることなどから、個々の農薬のADIと作物残留、摂取量の検討といったリスク分析を行うことが困難であることなどを勘案して、それらの平均値をとることを基本としています。
 その上で、コーデックス基準を採用した場合には国内産品について、わが国で設定した基準を採用した場合には輸入品について、生産・流通や農薬の使用実態等を勘案する必要がある場合は、それぞれ、国内基準あるいは外国基準を採用することにしています。(以下略)

<毒性データ公開について>
【意見】 ADI 設定の根拠である毒性試験データが開示されていないため、基準案の妥当性が検討できないのは、問題である。最終基準案の設定に際しては、登録時に提出された毒性試験、残留性試験のデータを開示すべきである。(反農薬東京グループ)
【回答案】暫定基準は、平成18年5月までにいわゆるポジティブリスト制を導入するために、農薬取締法における登録保留基準や国際基準等を参考として設定するものであり、(1)のご指摘に応えることは困難であるります。また、計画に基づき実施する予定の一日摂取量調査結果等を踏まえて、優先順位を付した上で、暫定基準について見直しを行うことを考えていますが、この際には、毒性試験データ等必要な資料を収集し、食品安全委員会にリスク評価を依頼することとしています。

<農薬弱者への配慮について>
【意見】 妊婦、心身発達途上の子供への影響を配慮した基準を設定するお願いする。(反農薬東京グループ)
【回答案】我が国及び今回基準値を参考とした国においては、動物を用いた試験において、繁殖毒性試験、催奇形性試験など、妊婦や胎児、乳幼児への影響を考慮した試験を含め、その他の様々な試験に基づき、毒性が認められない量に更に安全係数を考慮して基準値を設定されております。

<パンの基準について>
【意見】製パン業者がパン中の残留農薬をコントロールすることは、全く不可能である。残留農薬をコントロールできる段階で、基準値が設定されるべきであり、暫定基準の設定は小麦と小麦粉の段階とすべきである。((社)日本パン工業会)
【回答案】
 暫定基準の設定にあたって、加工食品については、コーデックスにおいて基準が設定されているものを対象に基準値を設定することとしています。製パン業者を含む食品関連業者にあっては、食品安全基本法(平成15年法律第48号)にも明記されているとおり、自らが食品の安全性の確保について第一義的責任を有していることを認識し、必要な措置を講ずる責務を有しています。

<農薬のグループ別基準の要求は無視>
 私たちが求めた化学構造類似の農薬グループ別による残留規制については回答なしでした。

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作成:2004-12-24