環境汚染にもどる
t15604#JR東日本、線路の除草剤散布で農作物に被害#04-08

 6月下旬、福島県田村郡のJR東日本磐越東線の要田〜川前駅間で、鉄道線路沿いの葉タバコや野菜畑で、農作物の生育不良が見つかりました。28日、県の田村農業普及所が萎縮症状を確認、JR東日本が6月1〜9日に沿線に除草剤を散布したという情報が得られたため、その影響が懸念されるに至りました。県は、29日に、影響を受けた農作物(家庭菜園を含む)を食べたり、出荷しないよう助言・指導を実施し、30日には、JR、JA、沿線自治体、たばこ耕作組合、病害虫防除所などと対策会議が開催されました。その結果、7月5日から、JR東日本が主体となり、自治体やJAとともに、被害状況の調査、残留農薬調査が実施されることなりました。農作物等135検体を採取し、分析したところ、7月26日現在、除草剤カルブチレートが水稲、インゲン、ジャガイモ、ネギ、カボチャ、ヒマワリ、食用菊、牧草、トウモロコシ、デントコーンに検出されたということです。
 JR東日本が使用した除草剤は、いずれも登録農薬で、バックアップフロアブル水和剤(カルブチレート45%)、バンベル−D液剤(ジカンバ50%)、フリーパス液剤(グリホサートイソプロピル塩40%)の3種だったということですが、散布に際しては、これら2又は3種を混用し、タンクを載せた作業車を時速6〜8kmで線路走行させながら、自然落下又は作業員による手動噴霧により、80L/分の量で、4〜6m幅で線路沿線の雑草に茎葉散布したそうです。JR東日本は、風や手動噴霧による農作物への飛散を認め、今後の対応策として、手動での噴霧中止する/農作物生育時期の除草作業を自粛する/作業車に飛散防止のための覆いを付ける―などを挙げていますが、除草剤以外の方法をとることについては、コメントしていません。

★関東の鉄道会社は,アンケートに回答拒否
 実は、当グループは、2003年11月18日付けで、関東の鉄道会社11−東武鉄道(株)、 相模鉄道(株)、東京急行電鉄(株)、京王電鉄(株)、京成電鉄(株)、小田急電鉄(株)、東日本旅客鉄道(JR東日本)、京浜急行電(株)、西武鉄道(株)、都営地下鉄、営団地下鉄(現東京メトロ)−に農薬使用についてアンケート調査を実施していました。農水省がだした局長通知「住宅地等における農薬使用について」を踏まえ、鉄道敷地における農薬飛散による被害防止を念頭においたもので、どのような農薬がどの程度使用されているかの基礎データを得ることも目的にしていましたが、各社は判を押したように、民間のアンケートには答えないとして、何度電話しても、回答は得られませんでした。2004年4月2日には、再度、文書を送りましたが、これも前回と同様でした。
 1995年に、車内消毒について、アンケートを実施した時には、回答があったのに、この変わり様は理解し難いものです。PRTR法が施行され、企業が自社で使用する化学物質の種類や数量を報告するという時代の流れに逆行する鉄道会社の態度の裏に、何か不都合なことでもあるのかと勘ぐっていたのですが、今回のJR東日本の件は、やっぱりと、思わせるものでした。

★関西の鉄道会社は、アンケートに回答
 一方、日消連関西グループが、関西の8つの鉄道会社に対して実施した同様なアンケート調査では、JR東海が文書回答を拒んだほかは、7社から回答がありました。
 農薬使用状況についての結果を表に示します(「草の根だより No.328号」より作表)。
 線路内での除草剤散布が圧倒的に多く、路線延長の長いJR西日本では年間約12トンが使用されており、同社は、農薬登録のある除草剤を必要最小限使用するとしています。京阪は、住宅地や農地に隣接しているところでの農薬の散布は実施しておらず、草刈りによる対応をしていると答えていいます。阪神は、農薬代替物への切り替えを検討すると、南海、近鉄や阪急は、効率的な散布に努めるとか使用量を最小限にするとの考えを示しました。
 また、農薬散布に伴う苦情について、南海と阪急は、除草剤散布により草木が枯れたとの申し出があったと答えています。鉄道線路への除草剤散布については、農耕地でないため、登録のない薬剤を使用しても、罰則はありませんし、登録農薬を使用して、何らかの被害を与えても、農作物への散布を目的としたわけでないため、使用者の責任を農薬取締法で問うことはできません。

     表 鉄道会社別の農薬使用実態 −省略−

★鉄道除草剤による被害
 鉄道線路に散布する除草剤の農作物への被害は、ずっと以前から問題になっていました。
 JRの前身である国鉄時代の1982年には、山形県遊佐町で、羽越線遊佐駅周辺の水稲3.85アールが被害を受けました。除草剤ブロマシル(ハイバーX)が原因と考えられました。
 1985年には、神奈川県藤沢市と海老名市の新幹線高架下に散布された除草剤 DCMU・DPA・2,4−PA混合剤(クサブランカー)とイソキシール(イソウロン)により、水稲2.4haが被害受けました。また、1988年には千葉県印旛郡と香取郡の三町四地区でJR成田線と京成線沿線で水稲被害がみられましたが、除草剤ブロマシルとテブチウロンが原因と考えられました。
その後、JRや私鉄各社がどのような対策をとったか、さだかではありませんが、1990年代から最近までは、表だった被害報道がマスコミを賑わすことはありませんでした。
 JR東日本の場合、その環境報告書によると、1999年の除草剤使用量は338t、2000年328t、2001年336t、2002年239tだったことがわかります。これら除草剤の成分別数量等については、問い合わせ中です。

★鉄道総研は使用量削減というものの
     JR東日本の社会環境報告書2003年2004年 にある「沿線での環境活動」の節参照

     鉄道総合技術研究所 早川 敏雄さんの報告
      環境への配慮と経費の削減を目指した雑草防除技術

      化学物質による雑草管理

 −前略−

 鉄道各社には、環境や農地汚染につながる鉄道除草剤の使用削減だけでなく、一般人が立ち入る駅構内や線路際の樹木・花卉などへの殺虫剤、殺菌剤また、車内消毒用薬剤についても、一層の削減を求めることが必要です。

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作成:2005-01-24