環境汚染にもどる
t15804#これでいいのか、外務省がアフリカのバッタ対策で農薬援助をきめる#05-03
   【関連資料】外務省のプレスリリース
         FAO日本:アフリカにおける砂漠バッタの異常発生と懸念される食料被害
         FAOのニュース:9月2日 9月17日

 9月14日、外務省は、FAO(世界食糧農業機関)の要請を受け、北西アフリカにおける砂漠バッタ対策として、3億3,000万円の食糧増産援助を行うことを決定しました。
 この事業内容は、次節に示す通りですが、農薬関連の援助が大半を占めます。
 外務省は02年12月にODAによる食糧増産援助方針の見直しを行い、農薬供与の原則中止を決めましたが、但し書きにあった「国際機関が責任をもって農薬を供与する場合には、我が国としてもこれに協力することを検討する」との 一文を根拠に(t13606参照)、今回の援助に踏み切ったものです。

★FAOの要請は農薬援助が主体
 今回のバッタの大発生について、FAOからの要請のあった砂漠バッタ対策事業は、以下の内容で、農薬による対策が援助の80%以上を占めています。

   【関連資料】9/14プレスリリース

 1 .緊急防疫対策事業 −省略−

 2 .中長期的対策事業 −省略−

★異常気象が砂漠バッタ大発生の一因
 バッタの異常発生について、FAOは、03年の夏、前例のない降雨があり、そのためバッタの産卵に適する土壌条件が整った上、監視システムがとられていたものの、現地のインフラの脆弱性から、制圧の対応までに時間がかかり、処置が遅れる国が相次いだことやバッタ制圧に必要な人的・物的資源(資材等)が大幅に不足していたことを挙げ、04年になって、増殖に拍車がかかり、「最後の手段」としての農薬の緊急使用を許容せざるを得なくなったとしています。
 FAOは、農薬使用に際して、『緊急対策の実施---厳格な規制とモニタリング』と題して、次のような方針を挙げていますが、これらの内容が、1年間の緊急農薬散布事業で、どの程度実施されるのか、明確ではありません。
 (1) 農薬使用に関する基本原則の遵守
   農薬使用に当っては、>「農薬流通と使用に関する国際行動規範」による農薬使用に
   係る国際的枠組みを遵守する。
 (2)プロジェクトサイト等での農薬の使用に当たっての措置・工夫
  @農薬散布の具体的措置
   ・農薬使用は可能な限り最小限にとどめる
   ・FAO専門家により最も環境に優しい農薬の厳選
   ・散布に当たって、専門家による十分な監視と訓練されたオペレーターによる
      効率散布の実施
     ・微量農薬使用量を確実に散布させることが可能な計測機能が附設された霧機器
        の使用による農薬の厳正使用管理
     ・「バリアー散布」など効果実証済みの散布手法の採用
  A農薬使用中及び使用後の散布効果の監視・評価措置
   ・農薬の防疫の監視(モニタリング)
   ・人間、動物、及び環境・生態系への影響評価
   ・上記措置に基づく対策の検討と実施
  B廃・残不用農薬の発生防止措置
    ・対象国毎に状況を十分勘案した農薬必要量の算定と使用による不要な農薬発生
        防止
     ・散布手法の工夫や代替的防疫手法の実施を通じた農薬使用量の大幅削減
★外務省の対応は疑問
 FAOは、国際援助により供給され、途上国で放置されているPOPs系や有機リン系の廃・残不用農薬が、人や環境に悪影響を与えているとして、その処理を農薬を輸出したり供与した先進国に求めて来ました(t11502t12604参照)。9月9日のプレスリリースでも、FAOは、処理資金が不足になったとして、新たな支援を求めることを表明しています。日本は、この処理に約2億円を拠出しています。
 不用農薬の処理もままならないというのに、それ以上の金額の農薬援助をして、いままでの二の舞にならないかとの心配が起こるのは当然です。FAOもそのことを気にして前節にあるような農薬使用方針を掲げていますが、当該国で実際に散布する人達は、どの程度の知識と技術を持っているのでしょうか。散布用のマスクや防除着は十分でしょうか。また、散布地に住む人たちは、農薬の危険性についてどれほど知識を持っているのでしょうか。FAOには、現地での実情をきちんと説明してもらはないことには、単純に農薬を供与するとはいえないと思います。
 それに、これもおかしな話ですが、FAOがバッタ駆除に必要な農薬の種類や成分名を具体的に挙げていないのは、どういうことでしょう。単に環境にやさしい農薬というだけでなく、具体的に昆虫脱皮阻害作用のあるIGR系農薬や菌やウイルスなどの生物農薬名を挙げて、これこれの農薬を使いたいというべきだと思います。
 外務省もまた、FAOに農薬成分名も聞かずに供与を決めたのでしょうか。 環境にやさしいとされている生物農薬のメタリジウム系の菌は日本では、製造されていません。日本で購入して、該当国に供与するのか。購入費見合いの金額を援助するのか、不明です。 バッタの大発生は、気候因子が大きく、その沈静化も気候の影響が大で、農薬でバッタを絶滅できないことは、はっきりしています。
 力を注ぐべきなのは、中長期対策に挙げられている農薬を使用しない方法の研究開発であり、現地のインフラ整備や教育なのです。バッタを物理的に捕捉する粘着剤や網の類、さらには、気門を塞いで窒息させたり、羽を接着して、飛べなくするような散布剤、大型吸引装置、誘引剤の利用も考えられます。3億3千万円も援助するなら、緊急対策ではなく、中長期対策に資金の多くを投ずる方が有効であると考えます。また、すでに、バッタ被害を受けたところには、当然食糧援助を第一とすべきであることはいうまでもありません。

【参考資料】食糧増産援助を問うネットワークからの要請(04/12/20)
  アフリカにおける移動性バッタ対策事業について


購読希望の方は、〒番号/住所/氏名/電話番号/○月発行○号からと購読希望とかいて、 注文メールをください。
年間購読会費3000円は、最初のてんとう虫情報に同封された振替用紙でお支払いください。

作成:2005-03-24