環境汚染にもどる
t15805#ラウンドアップレディ大豆は日本で栽培できない〜北海道の農場が強行栽培計画#04-10
 このほど、北海道長沼町にある西南農場が、遺伝子組換え除草剤耐性大豆ラウンドアップレディの商用作付けを計画していることがわかりました。
 ランドアップレディ大豆というのは、アメリカのモンサント社が開発した遺伝子組換え大豆で、グリホサート系除草剤「ラウンドアップ」を散布しても枯れないようにしたもので、同社の除草剤ラウンドアップとセットして、売りこんいます。すでに、海外で生産された遺伝子組換え大豆が、わたしたちの食卓に入りこんでいますが、国内で商用栽培された例はありません。
 西南農場は、98、99年に、すでに、試験栽培して収穫したとしており、これがほんとうなら、消費者は、遺伝子組み換えではない国産大豆だと思って食べてしまったことになります。来年、本格栽培するということは、北海道庁が、在来種との交雑防止のため、遺伝子組換え農作物の屋外使用規制の条例を制定しようとしていることへの対抗策だと思われます。
 風評被害を恐れる地元ながぬま農協やJA北海道中央会農協などの生産者団体、交雑による遺伝子汚染の拡大を懸念する北海道消費者協会や環境保護団体、「遺伝子組み換えいらないキャンペーン」なども反対の声をあげています。農場側は「除草剤の数を減らすことができ、収益性が増す」として、強行の構えです。ここでは、農薬使用の視点から、ラウンドアップレディ大豆を日本で栽培することが可能かどうかをみてみました。

★大豆の発芽後にグリホサート系除草剤を散布すると農薬取締法違反になる
 現在、登録のあるグリホサート系除草剤のうち、大豆への適用可能な製剤としては、登録番号14360号のラウンドアップ 、同21013号モンサントラウンドアップ、同21014号モンサントラウンドアップハイロード、同21241号 キャピタルグリホサート41%などがあります。
 グリホサートは非選択性除草剤で、茎葉散布により、植物を枯らしますので、当然のことながら、発芽後の大豆に散布すれば枯れてしまいます。そのため、使用時期は、播種前10日以前とか播種後出芽前として、登録されています(使用回数は1又は2回以下です)。一方、ラウンドアップレディーは、芽がでてから除草剤散布しても、雑草は枯れるが大豆は影響を受けないことが特徴で、そのため、高い収量が得られると宣伝されています。
 もし、発芽前にしか使用出来ないグリホサート系除草剤を、発芽後に使用すれば、農水省・環境省共省令「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」の第二条四項の「使用時期以外の時期に当該農薬を使用しないこと。」を遵守しなかったということで、農薬取締法違反となり、懲役3年以下又は罰金100万円以下の罰則が、使用者に科せられます。

★グリホサート系除草剤を発芽後に使用するには農薬の登録変更申請をする必要がある
 現状では、ラウンドアップレディ大豆を国内で合法的に栽培する場合、普通の大豆と同じ方法で農薬使用するしかありません。
 グリホサート系除草剤の使用時期を変えることは、農薬の使用方法の変更にあたりますから、登録変更申請をする必要があります。
 その際、発芽前と発芽後の散布では、収穫物への農薬の残留量が異なるので、2ヶ所以上の公的機関で残留性試験を実施せねばなりません。いままで、国内では、開花前までしか栽培されていないので、今後、どこかで、収穫までの試験を行ない、その残留性試験データが提出され、農薬登録の変更がなされない限り、除草剤耐性大豆最大のメリットとされている発芽後のラウンドアップ使用はできません。

 消費者や地元の大豆農家の反対を押し切り、北海道も中止を求めている中、西南農場が、遺伝子組換え大豆の栽培をするには、花粉の飛散防止対策、風評被害に対する補償問題にも対応することが必要です。このようなマイナス面にも拘わらず、利益を度外視して、あえて栽培を強行しようとする裏には、どんな事情があるかわかりません。国と北海道には、農薬取締法違反の栽培が行われないよう、当該農場に対して、厳格な立ち入り検査を行うよう求めましょう。

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   【関連資料】北海道提の条例(2005/03/31公布、2006/01/01施行)
     北海道遺伝子組換え作物の栽培等による交雑等の防止に関する条例本文


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作成:2005-03-24