残留農薬・食品汚染にもどる
電子版「脱農薬てんとう資料集」No.3
<残留農薬ポジティブリスト制度について>
t15902#残留農薬ポジティブリスト暫定二次基準案の問題点
、
その1 国民の健康よりも農作物輸入を優先#04-11
【参考資料】
食品中に残留する農薬等の暫定基準(第2次案)等に対する意見の募集について
食品中に残留する農薬等の暫定基準(第2次案)について
★はじめに
03年6月に、厚生労働省は、残留農薬ポジティブリスト制度についてその概要を、10月末には、動物薬195、農薬452種についての残留農薬等の暫定基準一次案を提示しました(記事t14103、記事t14201、記事t15003参照)。本年8月には、一次案のパブコメ結果(記事t15503)を踏まえ、暫定基準第二次案(総薬剤数670、うち農薬468と増えている)が示され、そのパブコメ募集が11月末まで実施されています。
私たちは、農作物の残留農薬基準について、消費者の立場から、@残留基準の数を増やさず、残留実態をみて、安全サイドにたった数値を設定する。A国内登録のない農薬・農作物について、海外に合わせた残留基準を設定しない。B毒性・残留性試験データのない農薬・農作物について、一律残留基準を設定しないことを残留農薬ポジティブリスト制度の柱にすべきだと主張してきました。
東京都の2001年度の調査によれば、なんらかの農薬が0.01ppm以上残留している農作物は、国産で13%と外国産で19%となっています(この点に関していえば、厚生労働省が、報告書「食品中の残留農薬」の中で、農薬検出数/検体数×分析対象農薬数の比率をもとに、農作物における残留農薬検出率を0.5%としているのはまやかしです)。幸い、残留基準超えの農作物の比率は低いですが、今後、残留農薬検出率を真の0.5%に近づけるとともに、農薬総摂取量を減らすためには、残留基準をできるかぎり低い数値に設定すべきであることはいうまでもありません。
特に、@輸出国に配慮して日本登録保留基準より緩い基準を設定したもの。A農薬取締法違反で国内適用できない農作物に登録保留基準をそのまま援用したもの(農薬取締法との整合性がとれない)。B日本で登録失効して使用できない農薬に残留基準を設定したものは問題です。
また、ポジティブリスト制度のもとで、残留農薬の監視を効率的かつ厳正に実施するためには、残留基準を設定するだけでなく、@「不検出」農薬リストをネガティブ農薬リストとして拡充する、A農薬使用履歴の添付を義務づける、B国際的に統一された残留農薬分析法の確立する、ことが必要であると考えます。
今後、この観点から暫定二次案を見なおし、提出したパブコメの内容を連載のかたちで、紹介していきたいと思います。なお、ポジティブリストには、農薬だけでなく、動物薬が、農作物だけでなく、畜産や水産物の基準の設定案も提示されていますが、ここでは、農薬の農作物への残留に限って論じていきます。
【1】国際基準・外国基準の援用〜なぜ低い数値を採用しないのか
私たちは、いままでもずっと、外国の高い残留基準を援用することには、反対してきました。暫定二次案では、国際規格=コーデックスが最優先とされたため、この値が日本や参考とする外国(=アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、EU、カナダの五カ国)の基準に比べて、低い場合は良しとして、高い場合には、従来からの日本登録保留基準は無視されることになってしまいました。
いままで、毒性試験データから得られたADIをもとに、日本での食習慣を勘案して、残留基準が決められてきたにも拘らず、外国からの農作物輸入をスムーズにするため、従来からある日本の登録保留基準よりも、高い残留基準の設定が提案されているのは、農薬総摂取量の増加につながることになり、憂慮される事態です。
★使用実態や毒性情報不明な外国基準を機械的に援用しない
厚生労働省の案では、日本でいままでに登録されたことのない農薬で、外国で使用実態や毒性情報が不明なものを、外国に残留基準があるというだけで、機械的に国内残留基準として援用されています。外国での登録実態及び使用実態を調査の上、毒性情報を求め、提案値を再検討して、残留基準を決めるのが筋です。特に、外国でしか使用されていない農薬で、基準値が高いものは、原則として、基準を設定しないという姿勢も必要です。
もし、問題があれば、日本の規格にあった農作物の栽培方法をとるよう外国に求めればよいのです。外国に対して、日本国内で安全性が確認された農薬の使用を求めることは、その国にとってもメリットがあると思います。
★どうして、コーデックス優先し、外国基準の平均値を採用するのか
厚生労働省がコーデックスを最優先にしたのは、1995年に発効したWTO関連協定のうち、国際間の農産物取引を円滑にすることを目的とした「衛生植物検疫措置の適用に関する協定」(SPS協定)を根拠にしているからです(てんとう虫情報31号参照)。同協定では「科学的に正当な理由がある場合、国際的基準等よりも高い保護の水準をもたらす衛生植物検疫措置を導入又は維持することができる」となっており、厚生労働省が援用することにしている外国基準は科学的理由に基づいて定められたものです。
ところで、コーデックスは、食品の安全性を確保することを基礎においた上、食品の世界貿易を促進するために決められるものとされており、人に対する安全性を最優先したものではありません。また、この食品規格を検討する委員会は、各国の行政機関や化学・食品関連企業の代表がメンバーとなっており、消費者サイドの意見が反映されにくくなっています。
厚生労働省案には、コーデックスがなく、いくつかの外国基準がある場合、残留基準として、それらの平均値を採用しているケースが多々あります。前述のSPS協定では、このような平均値の採用を求めていません。科学的根拠があって設定された値はすべて同等です。残留基準に対するクレームが来ないようにという魂胆から、外国の息をうかがっているだけで、基準値を低くすることにより、出来るだけ農薬総摂取量を減らし、自国の国民を守るという姿勢が、t提案では希薄です。コーデックスを特別視することなく、外国基準と同等のものとみなし、その中で、最も低い値を採用するのが妥当であると考えます。
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作成:2005-04-24