行政・業界の動きにもどる
t16006#試験目的での農薬使用で指導強化〜遺伝子組換え作物にも網#04-12
記事t15805で、北海道長沼町の農場が、遺伝子組換え耐除草剤性のラウンドアップレディー大豆の商用栽培を計画していることを紹介しましたが、長沼町、北海道庁、地元の農協、消費者団体、環境保護団体等の反対の声の高まりの中、強行栽培は断念されました。これとは別に、同様な栽培めざしていた十勝地方の農家も計画を中止しています。
ところで、長沼の農場経営者は、規制がなかった98、99年に試験的に遺伝子組換え大豆を栽培した上(必然的に除草剤が適用外使用されることになる)、出荷したと主張していましたが、このような不適切な試験栽培の再発を防止するため、農薬取締法による指導が一層強化されることになりました。
11月10日に農水省消費・安全局農産安全管理課長から、地方農政局や都道府県の担当部署宛てに、「試験研究の目的で農薬を製造等する場合の留意事項について」という通知がでました。
★試験栽培した農作物は、適切に保管又は処分しろと
実は、この「製造等」の中には、「使用」も入っています。通知の前文では、 「試験研究の目的で農薬を製造、加工、輸入又は使用する場合は、農薬取締法の適用除外となっているが、消費者の食の安全・安心に対する関心が高まっていることを踏まえ、試験研究の目的で製造、加工、輸入された農薬及び農薬使用に係る試験研究に供された農作物等について、一層の厳重な管理を行うことが必要である」と述べられ、
「下記事項を留意し、遺漏なきようされたい。」「農薬使用者その他の関係者に対して周知徹底するようお願いする。」として、以下の4点が挙げられています。
1、試験研究の目的で、登録を受けていない農薬を使用する場合及び登録農薬を
農薬使用基準以外の方法で使用する場合には、試験関係者の健康や人畜への影
響、環境保全等の観点から安全対策に万全を期すこと。
2、試験研究の目的で、登録を受けていない農薬を使用する場合及び登録農薬を
農薬使用基準以外の方法で使用する場合には、使用した農薬がほ場外に飛散及
び流出しないよう必要な対策を講じるとともに、試験終了後に当該圃場で農業
生産を行う場合には、試験に使用した農薬の農作物等への残留について、安全
性を確認すること。
3、省略
4、試験研究終了後は、使用した農薬、農作物等については、適切に保管又は処分
等すること。
これを、遺伝子組換え大豆の試験的栽培にあてはめますと、 登録のあるラウンドアップでも、大豆発芽後に使用することは、使用基準以外の方法による使用であるから、上の事項を守れということになります。
遺伝子組換え大豆の本格栽培は、もちろん農薬取締法違反ですが、試験栽培しても、罰則はないものの、環境保全をしろ、飛散防止をしろ、残留分析をしろ、保管・処分しろという指導内容ですから、こっそりと販売することはできないという、相当厳しい内容です。
★従来の通知では、試験栽培した農作物の扱いがなかった
03年3月にだされた改定農薬取締法の施行通知(14生産第10052号)では、農薬の使用の禁止に関する規定の適用を受けない場合として、試験研究の目的で農薬を使用する場合が挙げられ、以下のような記載がありましたが、今回の通知で、栽培された農作物の扱いまで、踏み込んだ内容となっているのが、追加指導された点です。
『試験研究の目的で使用する農薬とは、官公立又は民間を問わず研究所、試験場、大学、検査機関等において以下のような試験、実験、研究、開発、検査等に使用する農薬をいう。
ア.新法第2条第1項に定める登録又は第6条の2第1項に規定する変更の登録を受けるために必要な試験成績(薬効、薬害、残留性、毒性等)を作成するために使用する農薬
イ.上記以外の場合であって、農薬の成分、効果、毒性、残留性等を判断するための試験を行うために使用する農薬
なお、この場合に使用する農薬については、試験研究に必要な最小限度の量の使用に止めるとともに、当該農薬を使用する地域を適切に管理し、必要に応じて、閉鎖系での使用に限定する等、使用した農薬が当該地域外に飛散及び流出しないよう留意することが必要であるまた当該農薬の保管管理を徹底し紛失、盗難等があった場合には、速やかにその旨を農薬対策室に報告するよう指導されたい。』
★試験にも監視の眼を!
私たちは、2002年春、東京都が杉花粉症対策のため、都内の杉2万本に、マレイン酸ヒドラジドを試験的に樹幹注入するという話を聞き、このような登録のない薬剤の広範囲での使用は、許されるのかと、農薬対策室に尋ねたことがありました。この時、試験には、農薬取締法は適用されないという返事で、その規模については、基準がないということでした(記事t12802参照)。
幸い、この試験は、植物成長調製剤として登録されていたマレイン酸ヒドラジドに発癌性の不純物が含有されるということで、メーカーが製造中止、回収するという事態が生じたため、実施されませんでした(記事t12902、記事t13207参照)。
その後、無登録農薬事件がおこり、農薬取締法が改定され、試験目的での農薬使用についての指導がなされ、今度は、試験された農作物の処分にまで、網がかけらるようになったわけです。
新たな農薬の登録、新たな農作物への適用拡大、無人ヘリコプターなど新たな散布方法の適用などに際して、薬効・薬害・残留性試験データや環境への影響のデータ作成のための試験が実施されることになるでしょうが、農薬取締法適用の外にあるとされているものについても監視の眼を強めていきたいものです。
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作成:2005-05-25