環境汚染
t16102#遅れるオゾン層破壊ガス臭化メチル使用規制〜日本での例外使用は748トン#05-01
記事t15303で、オゾン層破壊ガスとして2004年末で全廃が予定されていた殺虫剤臭化メチルの規制が進んでいないことを紹介しましたが、04年11月22日からチェコのプラハで、開催されたモントリオール議定書締約国会議で、有効又は経済的な代替方法がないなどの理由で、新たに約3000トンの使用が認められ、2005年の例外使用の合計は1万6010トンとなりました。
例外使用は17ヶ国から申請されていました。このうち50トン以上の使用が承認された国は、表1のようです。最も多いのは、アメリカで全体の60%を占めており、日本が1991年レベルの12.2%となったのに対し、37.3%を維持しています。
表1 05年の国別例外使用認可量
アメリカ 9526.3トン
イタリア 2298.2
イスラエル 1075.3
スペイン 1059
日本 748
フランス 474.6
ギリシャ 227.3
オーストラリア 146.9
イギリス 134.3
ベルギー 59.8
カナダ 61.8
ポルトガル 50
ニュージーランド 50
以上は、土壌くん蒸に使用される臭化メチルであって、検疫くん蒸用のものの規制はありません。UNEPの推定によれば、梱包用木材に使用される臭化メチルは、2002年の1万1千トンから、04年には少なく見積もっても1万7千トンに増加しています。木枠の害虫駆除に使われるのですが、臭化メチル処理の代替である加熱処理がすすまないようです。
★臭化メチル使用者は前立腺がんが多い
臭化メチルはオゾン層の破壊による皮膚ガン増加や使用者の急性中毒の危険性のほか、前立腺ガンの危険因子であることもわかってきました。アメリカ国立ガン研究所等の農薬使用者の疫学調査によると、男性55,332人の調査対象者のうち1993-1999年の間に、新たに前立腺ガンになったのは566人で、一般人からの予測値よりも14%高いものでしたが、臭化メチル使用者についていえば、その使用頻度や被曝年が増すとともに、前立腺ガンの危険性は高まり、ガン発生率は未使用者に比べ、2から4倍高いということです。
★アメリカで環境保護団体がEPAを提訴
最多使用国のアメリカでは、フロリダ州のトマトとカリフォルニア州のイチゴ栽培に臭化メチルの4分の3以上が使用されるため、NPO団体であるEIAは、全米のスーパーマーケットに対して、臭化メチルを使って栽培したり、くん蒸処理した農作物(トマト、イチゴ、ナッツ類など)の販売中止を求めるキャンペーン運動をはじめています。
また、環境保護団体NRDCは、12月23日、コロンビア特別区巡回控訴裁判所に、EPAの方針(05年の臭化メチルの使用を03年よりも900トン多く認めたことや約1万トンのストックがあるにもかかわらず、7700トンの製造・輸入を認可したこと)に異議をとなえて、提訴しました。
★日本での例外使用の適用は7作物
日本の臭化メチルメーカーは04年末までに従来の製剤をすべて失効させ、「検疫専用」又は「不可欠用途専用」という名をつけた登録農薬に切り替えています。適用のあるのは、表に示した7作物で、05年には、29府県で748トンの例外使用が認められています。クリが収穫直後に使用されるほかは、すべて土壌くん蒸です。作物別申請量では、メロンが最も多く、ついいで、ピーマン、ショウガとなっています。作物別で、申請量の多い県は()内にその数量を示しました。
表2 臭化メチルの作物別申請量(単位:トン)
作物名 申請量 申請県(トン数)
クリ 7.1 秋田/茨城(2.831)/埼玉/千葉/神奈川/新潟/長野/静岡/石川/
岐阜/滋賀/京都/大阪/兵庫/鳥取/島根/岡山/山口/徳島/
愛媛(1.811)/高知/熊本(0.653)/大分/宮崎
メロン 194.1 福井/愛知(26.744)/京都/兵庫/島根/高知(38.504)/長崎/
熊本(46.402)/大分/宮崎/鹿児島(53.106)
スイカ 129.0 愛知/鳥取(30)/高知(21.564)/熊本(73.302)/宮崎
ピーマン 164.0 茨城(82.259)/愛知/和歌山/高知(29.792)/宮崎(47.187)
キュウリ 88.3 愛知/兵庫/高知(32.817)/宮崎(54.538)
シシトウ 23.2 和歌山/高知(22.280)/宮崎
ショウガ 142.3 和歌山(10.930)/高知(90.210)/熊本(36.254)/宮崎
臭化メチル使用合計量が100トン以上の県は、高知(235.325トン)、熊本(156.611)、宮崎(160.236)です。表3に示した02及び03年度県別出荷量と比較すると、これら3県は上
位で変りありませんが、03年に比べて増加している県もあれば、群馬のように使用がゼロとなった県もあります。
表3 県別臭化メチル数量(単位:トン) −省略−
★代替品による汚染が心配
臭化メチルの土壌処理代替方法として、物理的には、熱水や蒸気、太陽熱消毒方法、耕種的には抵抗性品種、センチュウ対抗作物の作付け、湛水処理、田畑輪換がありますが、主流はやはり農薬で、ダゾメットやメチルイソチオシアネート・D-D混合剤、クロルピクリン、カーバム、ホスチアゼート、微生物農薬などが使われます。また、検疫用の代替としては、ヨウ化メチル、弗化スルフリルなどがあります。化学合成農薬の多くは、使用者の健康や環境への悪影響、農作物への残留が懸念されるため、できる限り物理的方法や耕種的方法で対処してもらいたいものです。
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作成:2005-06-24