食品汚染・残留農薬
t16105#連載:残留農薬ポジティブリスト制度〜第二次暫定基準等の問題点〜その3:ネガティブリスト制度併用で使用禁止を明確に#05-01

  【参考資料】電子版「脱農薬てんとう資料集」No.3<残留農薬ポジティブリスト制度について>

【3】「不検出」農薬リストについて
 厚生労働省の提案する残留農薬ポジティブリスト制度では、食品中において「不検出」(以下NDという)とする農薬等として12物質(うち農薬5物質)が挙げられています。
これらの中には、毒性試験の結果発ガン性などがあり、ADIを決められないものも含まれています。
 しかし、5農薬以外にも、過去において毒性が問題になり、国内で登録失効したものや先進国で使用禁止され、しかもポジティブリストにも掲載されていない農薬があります。これらは、毒性・残留性データのない農薬と同等に扱われ、次回に述べる「一律基準」が適用される恐れが濃厚です。
 私たちは、有害性が判明している農薬については、提案のND農薬リストをネガティブリスト制度として拡充することを求めました。ネガティブリストにある農薬(以下NG農薬という)は、いままでに、使用されていたが、毒性が問題となり使用出来なくなったもので、ポジティブリストにない農薬よりも、有害性が高いものを対象とすることになります。

★NDの数値はどうなるのか
 ND(不検出)というのは、残留ゼロでなく、実際には検出限界以下ならいいということです。提案されているND農薬の検出限界は、現行公定分析法では、2,4,5−T:0.05、アミトロール:0.025、カプタホール:0.01、シヘキサチン:0.02、ダミノジッド:0.1各ppmとばらばらです。また、今回、提案された残留基準でNDと設定されている農薬は、エンドリンとディルドリン:0.005、トリアゾホス:0.02、パラチオン:0.01、二臭化エチレン:0.001各ppmで、0.001ppmが最低値となっています。
 一方で、残留基準が設定されない農薬・農作物については、食品衛生法にもとづき、「人の健康を損なうおそれのない量」を定め、それ以下なら残留してもよいとされることになっていますが、この量を「一律基準」として0.01ppmにするとの提案がなされています。
 つまり、NDといってもその濃度はバラバラです。このような矛盾点をかかえるND農薬については、検出限界に統一性をもたせるだけでなく、毒性故に販売・使用が禁止された農薬に対し、漏れなく食品衛生法の網をかぶせることが求められます。

★使用してはいけない有害農薬をネガティブリストに
 そのために、私たちは、NG農薬リスト制度の併用を提案します。この制度下では、毒性上問題があり、使用してはいけない農薬を指定し、残留分析を実施しなくとも、その農薬を使用した農作物の流通は無条件に規制できるというものです。
 該当する農薬は、農作物への残留についてだけでなく、国内外で製造に携わる労働者、使用する農業者や使用場所周辺の住民にも有害であるとの認識に立ち、食品衛生法上からも国内外での有害農薬の使用規制につなげていくことも目的にしてもいます。以下のような運用方針で実施すればどうでしょうか。
 (1)国内で登録失効した農薬については、原則として、残留基準を設定しないこと
    とし、その中で、外国で使用されていないものは、NG農薬候補とします。外
    国で使用実績があるもので、毒性・残留性評価が適正であるものについては、
    残留基準を設定することも可とします。
    ちなみに、厚生労働省が残留基準提案している農薬で、日本で登録失効したも
    のには、以下のものがあります。
             −農薬リスト 省略− 

 (2)NG農薬候補に指定された農薬は、その毒性についてのパブリックコメントを
    求め、『NG農薬』リストへの掲載の可否を決める。
 (3)『NG農薬』のうち、環境汚染が進行しており、使用しなくとも、農作物への
    移行がある農薬については、検出限界以下であることを基準とし、ND値を
    0.001ppm未満に統一する。
    なお、この制度の実施にあたっては、国内外を問わず、農作物の農薬使用履歴
    の記載実施が前提となります。わざわざ残留分析することなく、書類審査で済
    みます。
★POPs(残留性有機汚染物質)系販売禁止農薬  −省略−
     農薬の販売の禁止を定める省令

★非POPs系販売禁止農薬
 農薬取締法で販売禁止されている非POPs農薬(パラチオン/メチルパラチオン/TEPP/水銀剤/砒酸鉛/2,4,5−T/CNP/PCP/PCNB/ダイホルタン/水酸化トリシクロヘキシルスズ=シヘキサチン)については、原則として、残留基準を設定せず、『NG農薬』リストに掲載することを提案します。水銀、砒素、鉛等の重金属成分そのものについては、農作物以外からの摂取も含め、残留実態や摂取量調査をもとに再考する必要があるでしょう。
 厚労省案では、TEPP、水銀剤、CNP、PCPについて残留基準が設定されていません。、CNPとPCP、PCNBはダイオキシンを含有するとして、登録失効しているだけでなく、農水省が回収するよう指示している農薬です。
 PCP、CNPは、2,4,5−Tに準ずると考えて『NG農薬』リストに掲載すべきです。
 PCNB(キントゼン)は、コーデックスや外国基準を援用し、一部、日本の登録保留基準(野菜/果実0.08ppm)よりも高い数値が提案されていますが、ダイオキシンやヘキサクロロベンゼンを不純物として含有しますから、『NG農薬』リストに掲載すべきです。
 急性毒性の強いパラチオン、メチルパラチオンは、残留基準を設定しないで、『NG農薬』リストに掲載することにより、まだ、散布している外国での使用禁止につなげることができます。

★クロルデコン、DBCP、NIPなど有害農薬
 上記の農水省の販売禁止農薬や厚労省のNDリストにある農薬は、『NG農薬』リストにいれるのは当然ですが、いずれにも名前が挙がっていない、有害農薬で毒性が問題となり、国内で登録失効したり、海外で使用禁止となった農薬を調べ、『NG農薬』リストに追加する必要があります。
 たとえば、アメリカで使用禁止となったクロルデコン(製造工場労働者に、視神経異常や精子減少がみられた)、過去に日本で登録されていた農薬で、残留基準も登録保留基準もないまま登録失効し、かつ毒性に問題があったニトロフェン(別名NIP、ダイオキシンを含有する除草剤)、DBCP(アメリカの製造工場労働者や農業労働者、中米やフィリピンなどのバナナプランテーション労働者に男性不妊症。日本では、毒性が周知されることなく80年に登録失効となる)などもNG農薬リストに掲載して、監視の眼が行き届くようにすべきです。


購読希望の方は、〒番号/住所/氏名/電話番号/○月発行○号からと購読希望とかいて、 注文メールをください。
年間購読会費3000円は、最初のてんとう虫情報に同封された振替用紙でお支払いください。

作成:2005-06-24