行政・業界の動き
t16203#おまたせ、農薬工業会から回答はきましたが・・〜農薬の容器表示や宣伝・広告文の問題点〜#05-02
昨年12月の農薬学会レギュラトリーサイエンス研究会の席上で、反農薬東京グループに名指しで「質問や要望に回答したことがない」と批判された農薬工業会が「回答します」と約束しました。その後、12月21日に、2004年6月に出した質問と要望に対する回答はきましたが、こんな内容じゃあ、出しても出さなくても同じというようなものでした。
当グループの質問と要望は記事t15405に載せていますので、質問事項は簡単に記します。
【質問@:ラベルの使用上の注意について】
容器ラベルに「使用上の注意」として、「住宅地周辺で使用される可能性のある農薬(樹木に登録のあるものなど)は、登録時の申請書に、使用上の注意として、周辺への事前告知、飛散防止措置や、立入制限措置を具体的に書くべき」と「容器ラベルに関して、メーカーが異なっていても、同一剤型で同じ組成、同じ用途の製剤については、使用上の注意を統一すべきではないか」
【農薬工業会の回答】
「当会においては、農薬の安全対策に万全を期すこととし、会員に対してもその旨、広報活動の展開を図っているところです。また、同一剤型で同じ組成、同じ用途の製剤についての使用上の注意の統一についても農林水産省の指導をも踏え可能な限り、御指摘の点を尊重して行きたいと考えております。」
と、ラベルに書くべき内容についてはなにも答えていません。
【質問A:非農耕地用除草剤について】
農薬に該当しないいわゆる非農耕地用除草剤について、農薬取締法施行規則では、文字の大きさの規定があるだけで、文言についてはありません。農薬工業会としては、どのような表記が望ましいと考えているかというものでした。
【農薬工業会の回答】
「具体的な表記については、農薬取締法の一部改正の趣旨を明確に表現できるものが望ましいと考えます。」
だけです。だから、どういうものが望ましいかを聞いているのに。
【質問B:農薬の宣伝・広告について】
3つ目は「農薬の宣伝・広告について」です。FAO(国連食糧農業機関)の「農薬の流通と使用に関する国際行動規範」では、広告に関する具体的な規定があります。しかし、国内の宣伝状況は、農薬は「塩より安全」といったり、「普通物」などという語句を使用しています。「ぜひとも、FAOの広告に関する諸規範を取り入れる方向で、検討願いたい」と要望しました(宣伝・広告問題は次節以下に詳述)。
【農薬工業会の回答】
「当会においてもFAOの広告に関する諸規範等を参考としたコンプライアンスを推進することとしております。」
だけですが、FAOの規範を守ると言っているように見えます。よけいなことは言わずに「不言実行」でやろうとしているのかもしれませんね。
【質問C:誤表示防止について】
最後に「報道にあった貴工業会の誤表示防止の指針が出来ましたら、その内容をHPなどで、公開してください。」と要望しました。
【農薬工業会の回答】
「今後とも誤表示防止対策等の強化に努めて参ります。」でした。
★農水省と公取委で無責任キャッチボール
ところで、農薬、特に除草剤の宣伝広告に安全性を強調する文言が目立つため、当グループは、以前から農水省に善処を求めていましたが、1昨年、農薬対策室から公正取引委員会に申し入れたらどうかと薦められました。
「景品表示法」を管轄する同委員会が出した「環境保全に配慮した商品の広告表示に関する実態調査報告書(01年3月)」の中には、『「環境にやさしい」等のあいまい又は抽象的な表示を行う場合には、環境保全の根拠となる事項について説明を併記するべきである。』されています。
そこで、03年9月に、「グリホサート系除草剤及び農薬全般の宣伝及びラベル表示についての申し入れ」を行いました。
当時、販売されていたグリホサート系非農耕地用除草剤や登録農薬の宣伝広告を調べ、たとえば、製品容器ラベルには、「公園、堤とうなどで使用する場合、関係者以外は作業現場に近づかせない。小児、居住者、通行人、家畜などに留意する。散布後(最小限その当日)も散布区域に縄囲いや立て札をたて立ち入らせない。」と表示しながら、宣伝文句には『食塩や酢よりも、安全性が高い』『 散布する人はもちろんのこと、周りの動物や魚類など、自然環境にもやさしく、安心して使用できる除草剤です。』としていることや、犬のいるところで散布している図など、多くの具体例をあげて、
宣伝媒体及び容器ラベル表示において、『アミノ酸』『食塩や酢よりも、安全性が高い』『自然物に分解』『普通物』その他上で指摘したような、購買者に安全だと誤解を与える表現を行なわない、など、6項目の要望をしました。
しかし、03年11月に公取委から送付されてきた通知書では、「当該法律の監督官庁であります農林水産省に資料を添付の上通知しました。」というものでした。
事情聞くと、公取委が農水省に問い合わせたところ、自分のところで処理するといわれたための、丸投げだとわかりました。
農水省にいわれて、公取委にだしたのに、また、農水省に差し戻されたわけで、また、同省に善処法を求めるはめになっています。
農薬対策室はメーカーに注意したとのことですが、具体的内容は不明です。
★アメリカでは、農薬の安全性違法広告で罰金も
日本では、神奈川県民部消費生活課が 「農薬類似成分商品の調査」(2003年5月)の中で、『環境に優しい』等の表示のある除草剤について、公取委の『根拠となる事項について説明を併記すべきである』との見解に反する点があったことを報告しています。
アメリカでは、1991年、ニューヨーク州司法長官が除草剤ラウンドアップの宣伝文句に使用されている「生分解性」とか「環境にやさしい」という言葉に異議を唱えて提訴し、この宣伝文句を止めさせ、訴訟費用をメーカーのモンサントが払うことになりました。また、2003年12月には、やはり、ニューヨーク州で、ダウ・アグロサイエンス社が、1995から2003年に、クロルピリホスについて安全性を違法に宣伝したとして、200万ドルの罰金を科されました。アメリカでは、EPAが、農薬の安全性について、「安全」「害がない」「無毒」などの語句をたとえ、「指示されたように使用した時」という語句をつけて使っても、問題があるとしています。
カナダでは、環境団体アースアクションの要望を受け入れ、2004年、有害生物管理規制局が、「安全である」「国が認めている」ということを、農薬のラベルや宣伝に使うことをやめるように命令を出しています。
しかし、日本では、行政自体が「普通物」という言葉を使って、平気な顔をしています。
「普通物」にも「劇物」より低いADIが設定されている農薬があることを思えば、まずは、この用語の追放を目指さねばなりません。
★FAOの農薬についての国際行動規範
日本の農薬工業会の上部団体に世界農薬工業連盟ともいうべきクロップライフ・インターナショナル*があります。この連盟は、2004年3月3日、FAOの「農薬の流通と使用に関する国際行動規範」を支持する声明をだしました。
規範の第11条(広告)の訳を示しておきます。
*(注)CropLife Internationalは、1966年にヨーロッパの農薬メーカーが中心となって、設立したGIFAP(世界農薬工業連盟)を前身にもち、1996年にはGCPF(世界作物保護連盟)と改称、2001年6月、現在の名称になった。日本の農薬工業会は、1969年に加盟。
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作成:2005-07-24