行政・業界の動き
t16208#エトキシキン判決が意味するもの〜消費済み食品に代金返還命令#05-02
【参考資料】お詫びとお知らせ
ディーエイチシー、サントリー
05年1月12日、大阪地裁で、認可されていない酸化防止剤を含む健康食品を飲用した消費者が、販売したサントリー社ほかを相手に、既に消費した分の代金と慰謝料などの支払いを求めていた裁判で注目すべき判決がでました。
★債務不履行責任が問われる
問題の健康食品には、その原料であるアスタキサンチンに食品添加物未認可のエトキシキン*が入っていたということで、2002年4月に、サントリー社らが回収していたものです。当時、私たちは、厚生労働省と同社らに経緯を説明するよう求めましたが、まともな回答は得られませんでした。
裁判は、健康食品を購入した神戸と和歌山の消費者が、03年に提訴したもので、サントリー社らは、消費前の製品については、代金の返還に応じていたのですが、消費済み分については、返還を拒否していました。判決では、原告が求めた慰謝料請求は棄却されましたが、消費済み製品の代金については、サントリー子会社が債務不履行責任を負うとして、返還命令がだされました。
*注:エトキシキンはモンサント社が開発し、発癌性の疑われる物質で、リンゴや梨にポストハーベスト剤として使用されています。日本では農薬登録されていませんが、残留基準が設定されています。アメリカでは、ドッグフードなどの飼料に抗酸化剤として150ppm添加が許されているため、犬の健康に問題があるとして、ペット協会が基準をより低くするよう求めています。
★法令違反の農作物が代金返還可能になれば
この判決が確定したら、その意味は大きいと思います。
原産地表示やJAS規格表示がある多くの食品については、その内容に違反があると、メーカーは、行政指導を受け、ラベルを替えたり、販売を中止することになりますが、既に、その商品を購入し消費してしまった人には、何の補償もありませんでした。すでに食べてしまったし、体を害したわけでもないからというわけで、偽ものをつかまされた消費者は泣き寝入りしていたわけです。しかし、これからはそうはいきません。国産表示の品が、外国産であったことが判れば、たとえ、健康被害を受けなくとも、その代金の返還請求ができるわけです。
では、特に表示のない農作物の場合はどうでしょう。かりに、栽培に適用外の農薬を使用したことが判明した場合、生産者は、農薬取締法違反で、罰則の対象になりますし、残留基準を超えた農作物については、食品衛生法違反で法的に流通をとめられます。
また、使用基準違反があっても、食品衛生法の残留基準以下ならば、農作物の流通規制はとれません。よく出荷団体が、回収したり、出荷停止することがありますが、それは風評被害を恐れる単なる自粛で、法的にはなんら問題ないというのが大方の考えです。
これらの場合、販売中止前に購入し、消費した人には、何の補償もありません。
消費者は、残留基準以上の量の農薬や、残留基準以下であっても、使用基準を遵守して栽培したものより、余分な農薬を食べさせられていたわけです。残留基準を超えているとか、農取法違反で栽培されたという表示がない以上、生産者と消費者の間には、農作物は法遵守により栽培され、残留基準以下のものであるとの暗黙の了解事項があるのです。それを裏切る行為は、農取法や食衛法違反のものを買わされたということで、まさに民法でいう債務不履行になります。たとえ、その農作物を消費してしまっていても、その農作物を購入したとの証拠があれば、消費者は生産者に代金返還を求めることができるというのが、今回の判決のいうところです。
このようなことになれば、生産者は大きな損害を被ることになりますから、いままで以上に、農取締法違反や食衛法違反にならないよう努めることに力を注がねばならないでしょう。
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作成:2005-07-24