農薬の毒性・健康被害
t16404#フィリピンで有機リン剤混入の菓子で27人死亡#05-04
 【参考資料】NBI identifies pesticide that killed 27 kids in Bohol
       NBI: Pesticide killed Bohol kids

 フィリピン中南部にあるボホール島のマビニという町で、05年3月9日、キャッサバイモの揚げ菓子を食べた小学生100人以上が、次々と腹痛や吐き気などの中毒症状をしめし、うち27人が死亡するという事件がおこりました。
 当初は、キャッサバの根に含まれる天然成分シアン配糖体による青酸中毒と思われ、日本の厚生労働省も、翌3月10日、キャッサバ及びその加工品である輸入食品に検査命令が出されました。しかし、その後のフィリピン国家捜査局(NBI)や保健省(DOH)の調査で、菓子製造者の使ったフライパン、2人の死亡者の胃の内物や内臓組織などにクマホスという有機リン剤が検出されたため、殺虫剤中毒であった可能が高くなりました。
 クマホスは、MPPと同じくドイツのバイエル社の開発した殺虫成分です。急性毒性が強く、ラットの半数致死量はオス41mg/kg、メス15.5mg/kgで、日本では使用されていませんが、「毒劇法」でいえば「毒物」に相当する物質です。
 フィリピンでは、クマホス剤は、ゴキブリ駆除、家禽のシラミや犬などのノミやダニ駆除、トイレ散布剤などとして家庭でも使用されているようです。
 当局は、キャッサバ粉に似たクマホス粉剤を誤って、菓子原料に混ぜたのではないかとの疑いを表明しています。

 この事件は、99年10月ペルーで起こったパラチオン混入給食で、子供たち24人死亡、20人中毒したという事件を想起させます(記事t09607)。この時と同じく、フィリピンでも毒物管理体制の不備が指摘されていますし、同時に、早急に原因を究明し、治療に当たれなかった医療体制の貧弱さも問題となっています。しかし、根本原因は、このような毒物を供給しているメーカーサイドにあるのではないでしょうか。
 なお、日本でのキャッサバ製品輸入は、2004年1月1日〜05年3月9日で、ガーナ・タイ・フランス・フィリピンから8件7,941kgで、シアン違反は1件あったとのこと、検査命令は今後の継続するとのことです。

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作成:2005-07-24