行政・業界の動き
t16408#4月1日、ケルセン化審法「第一種特定化学物質」指定を公布・施行#05-04
記事t16206で述べた、殺虫剤ケルセン=ジコホルの化審法「第一種特定化学物質」指定が、4月1日付けの官報で公布・施行されました。2月初めに、私たちが、パブリックコメントで求めたことのひとつが実現したわけです。欧米に先んじての規制ですので、今後、POPs条約にも組み込まれ、国際的な使用規制が実施されることを願っています。
★農薬についてはあずかり知らぬと
私たちは、パブリックコメントとして、7つの意見を述べました。その回答を以下に記します。化審法は、環境省、厚生労働省、経済産業省の三省共管の法令で、農薬と医薬品は適用外となっています。それにしても、ケルセンは農薬以外の一般化学品として使用実績がないから、その回収・処理などの行政指導をする必要性はないという、縦割り行政には、驚きです。せめて、農水省にその旨伝えますぐらいは、いってほしかった。
【意見1】ジコホル(ケルセン)及びヘキサクロロ−1 ,3 −ブタジエンを
第一種特定化学物質として指定することに賛成します。今後、指定の手順
はどのようになりますか。即施行となるようお願いします。
【回答】速やかに政令指定を行うこととなります。当該政令指定については公
布即施行とする予定です。
【意見2】ジコホルを含む製剤は農薬取締法で1956年12月から2004年3月まで
農薬登録されていました。農薬は化審法の適用対象外とされています。今
回は、化審法試験で、難分解性かつ高濃縮性が判明し、規制につながった
わけですが、化審法と農薬取締法の試験内容に違いがあり、環境への影響
やヒトでの有害性評価が異なっては問題です。両法の運用で、整合性がと
れるようお願いします。
【回答】今回のパブコメ対象外のご意見ですが、今後の法施行に当たって参考
とさせていただきます。
【意見3】両物質は、いままで、日本国内でどの程度生産、使用されましたか、
累積量を教えてください。また、輸出入累積数量はどの程度でしたか。
【回答】経済産業省が行っている化学物質の製造・輸入量に関する実態調査
(平成8 ,10 ,13 年度実績)によると、一般化学品としての製造・
輸入の実績はありません。よって、この期間の使用、輸出も無かったもの
と考えられます。
【意見4】農薬有効成分であるジコホルについては、昨年3月、農薬登録が失
効し、メーカー各社は自主回収していますが、回収及び処理状況はどうな
っていますか。
【回答】化審法では農薬は対象としていないため、自主回収等については農林
水産省農薬対策室にお問い合わせください。
【意見5】指定に先だって、出来るだけ早く行政指導で、両物質の回収・処理
を行なってください。その際、POPs系化学物質の場合と同様に扱ってください。
【回答】3への回答のとおり、これら2物質の最近の一般化学物質としての製
造・輸入の実績は無いことから、両物質の回収・処理を行政指導する必要
性はないと考えます。
【意見6】両物質の外国での規制状況はどのようになっていますか。また、指定
に先だって、出来るだけ早く行政指導で、外国への輸出を禁止してください。
【回答】3への回答のとおり、これら2 物質の最近の一般化学物質としての製造・
輸入の実績は無いことから、外国への輸出もないものと考えています。また、
海外においては、現在、両物質ともに一般化学品としての製造、使用につい
ては確認されませんした。
【意見7】今後、両物質をPOPs 条約に組み入れ、地球規模に汚染が拡大し
ないよう、国際的な働きかけをしてください。
【回答】今回のパブコメ対象外のご意見ですが、今後の参考とさせていただきます。
★農水省には販売禁止農薬指定など要望
農水省へも、以下の要望・質問を行いましたが、回答をもらえないものが多くありました。
ケルセン製剤の回収について、メーカーは、これまでに、乳剤約35kl、水和剤約45トンを回収、これらのうち、有効期限内で未開封な乳剤は原産国に返送、その他のものは、焼却処分したそうです。原産国への返送以外については、原体、製剤とも輸出はないとしているそうです。
【要望】
(4)ケルセンを有効成分とする農薬を「農薬の販売の禁止を定める省令」で販売禁止農
薬にしてください。
(5)ケルセンの毒性等の問題点をただちに周知し、農家手持ちの含有農薬の使用を禁止
し、回収してください。
(6)回収した(既にメーカーが自主回収したものも含む)製品は、POPs系農薬に準じて、
厳重に保管し、安全処理してください。
(7)ストック製品や回収製品の輸出を禁止してください。
(8)化審法の有害性情報調査報告書で、ケルセンは前立腺ガンの危険因子とされてい
ますが、ケルセン使用者の健康調査を実施するお考えはありませんか。
(10)ケルセンは、農薬取締法による毒性・残留性試験が実施され、登録された農薬で
すが、化審法試験で、難分解性かつ高濃縮性が判明、さらに、ヒトに対しても有害
であるとされた上、魚類の環境調査でも高濃度で検出され、今回の「第一種特定化
学物質」に指定されようとしています。
化審法と農薬取締法の試験内容に違いがあり、環境への影響やヒトでの有害性評価
が異なっては問題です。
農薬取締法の試験内容を化審法と整合性あるよう改定すべきと考えますが、貴省の
お考えをお示しください。
【回答】
(4)〜(8)及び(10): 農薬は一般の化学物質とは異なり、登録に際して各種毒性評価
を行った上でADI、残留基準、使用基準等が定められ、リスク管理のための各種規制が行
われています。
さらに、codex委員会においてもケルセンについては毒性評価の結果、ADI及び残留基
準が定められており、これらの範囲内で使用すれば、リスク管理が可能とされています。
このため、化審法で一特指定がなされたとしても農薬について特段の措置が必要にな
るとは考えていません。
★食品安全委員会はADI再評価へ
厚生労働省と食品安全委員会の食の安全ダイヤルに、以下の要望をしました。
・ケルセンのADIについて再評価されるようお願いします。
・現在審議中の残留農薬等ポジティブリスト制度で提案されているケルセンの
暫定残留基準の見直しを行ってください。
私たちの要望で、食品安全委員会は独自に動いていれるかと思いましたが、結局、2月17日に厚生労働省から食品安全委員会に再評価を求める文書がだされて、初めて、論議されることになりました。(食品安全委員会資料)
購読希望の方は、〒番号/住所/氏名/電話番号/○月発行○号からと購読希望とかいて、
注文メールをください。
年間購読会費3000円は、最初のてんとう虫情報に同封された振替用紙でお支払いください。
作成:2005-09-24