農薬の毒性・健康被害
t16501#農薬危害防止月間を前に農水省へ住宅地通知の周知徹底など要望#05-05
 来月から、農薬危害防止月間が始まりますが、すでに、松枯れ対策や街路樹への農薬散布で、各地の住民からの悲鳴が当グループに寄せられています。そこで、農薬対策室に要望を行いました。まず、記事t15301につづく、農薬による被害状況をみておきましょう。

 【農水省・厚労省通知】農薬危害防止運動の実施について(5月30日公表)。
★厚生労働省の人口動態統計では、中毒死者は03年794人
 厚生労働省が発表する人口動態統計から、農薬による死者数を表1−アに示しました。この統計では、国際的な死因分類コードによるもので、個々の農薬名は不明です。 2000年以降は農薬による死亡者(主に自殺者)は年間1000人をきるようになり、02年は905人、03年は794人でした。農薬種別で最も多いのは、相変わらず除草剤・殺菌剤によるもので約45%、ついで、有機リン・カーバメート系殺虫剤が約30%分を占めており、このところあまり変化がありません。
 農水省による、03年の農業使用の死亡中毒者は、表1−イのようで、死者6人、中毒者28人となっています。誤用は誤飲・誤食で、農薬の管理が不十分がことを物語っています。散布中が死者1を含み26と約77%を占めていますが、強風又は風下散布や防護不備などが主因です。

 表1 農薬中毒者数 −省略−

★農作物等の被害件数は1桁台になったが
 農薬の飛散による被害について、農水省の調べでは、表2のようになっています。農畜産物や魚等の被害や物損被害は03年には減少しています。

表2 農薬による被害件数の推移(農水省調べ)

 2004年の夏には、JR東日本の鉄道除草剤使用によるドリフト被害が発生しましたし、今年の報道でも以下の例があります。4月28日におこった伊賀市魚毒事件では、池の水から0.09mg/LのPCPが検出されましたが、すでに、1990年に登録失効して久しいこの除草剤が、なぜ池に入ったのかわかりません。
 報道日 内容
  1/20 群馬県シュンギクにエチルチオメトン適用外使用
  3/03 長崎県セロリにプロシミドン他混入し散布 
  3/04 熊本県ニラにイプロジオン 噴霧器未洗浄 
  3/15 秋田県マッシュルームに医薬品ジフルベンズロン
  4/22 北九州市ミズナにシペルメトリンがドリフト
  4/28 高知県ピーマンにブプロフェジン適用外使用
  5/05 三重県伊賀市 PCP魚毒事件
★農薬対策室への申し入れ
 上述の被害の中には、受動農薬被曝による人の健康被害は入っていません。そこで、私たちは、農薬対策室へ以下の要望を行いました。
        ***********  農薬対策室への要望  ***********
 前文 −省略−

1、住宅地等における農薬使用についての通知がだされているものの、その内容が末端ま
  で周知・実行されていないケースが見られますので、地方自治体だけでなく、散布業
  者等も含め、さらなる周知をお願いします。私たちに新たに相談が寄せられたものと
  して、迎賓館、神社仏閣、遊戯施設、道の駅などがあります。
 ・散布前の告知や散布中の注意だけでなく、散布後も立ち入り規制を強化してください。

2、毒劇法の対象になっている農薬について、その管理が充分でない例がみられますので
 、販売店の立ち入り調査などを頻繁に行い、違反のないよう願います。
 <事例>
  ・愛媛県のJA越智では、長期にわたり、毒物劇物取扱責任者を置かずに販売していた。
  ・2004/11:毒物農薬エンドスルファンの豆腐混入事件がおこった。
 ・2005/02:臭化メチル剤の盗難事件がおこった。
  ・2005/04:クロルピクリンの盗難事件がおこった。
 ・2005/04:毒物パラコートがインターネットオークションに出品された
 ・各地で、DEP、MPP、メソミルほかによる犬、猫、野鳥被害が発生している。

3、北海道では特別天然記念物のタンチョウが、MPPにより複数羽死亡しております。
  鳥類への毒性の強いMPP剤の使用を規制してください。
  危害防止の通知にそのことを明記して下さい。

4、クロルピクリンの事故防止を徹底してください。
 <事例>
  ・2004/12:横浜市でハウス使用のクロルピクリン剤で住民被害がでました。
 ・2005/02:厚生労働省と環境省、クロルピクリン廃容器による被害防止の通知。

5、鉄道用除草剤の使用による農作物被害防止を徹底してください。
  昨夏、JR東日本の管内の2路線で、鉄道線路の除草に散布された農薬により、周辺
  農作物に被害を与えるという事件がおこりました。これは、複数の除草剤を現場混合
  し、飛散防止が充分になされないで(一部は、周辺状況がわからない夜間にも)散布
  されたためと思われます(記事t15604記事t15707参照)。
   このような事件の再発しないよう指導を強化してください。

6、農薬のドリフト防止を強化・徹底してください。
  5の例は、農薬のドリフトによる被害ですが、残留農薬検査でも、実際に使用してい
  ない農薬が農作物に残留している例がしばしば見られます。
  来年度から、残留基準ポジティブリスト制度が実施されることを踏まえ、隣接農地か
  らの農薬飛散防止のため、栽培方法も含め抜本的な対策をお願いします。

7、農薬はドリフトだけでなく、その成分の微細粒子や気化による大気汚染も懸念されま
  す。環境省では本年度から調査が実施されることになっています。
  貴省におかれましても、一斉広域散布、高濃度散布、無人・有人ヘリコプターによる
  散布、大型散布機による場合の、大気汚染による健康被害防止対策を強化してくださ
  い。

8、農薬使用基準省令にもありますが、有効期限切れの農薬の使用をやめるよう指導を強
  化してください。
  また、4月1日には、ケルセンが化審法「第一種特定化学物質」に指定されましたが、
  同剤が使用禁止となった旨、周知徹底してください。

9、インターネットによる農薬販売を規制してください。
  インターネットによる通信販売だけでなく、オークションで農薬が販売されている
  ケースが見られます。
  4月には毒物除草剤パラコートがヤフーオークションに出品されていました。また、
  オークションでは、有効期限切れの農薬も販売されています。
  毒劇物の譲渡に関しては、販売業者には登録が必要であり、交付相手の年齢等の確認
  も求められており、対面販売が原則です。
  また、農薬については、販売者の届け出が義務付けられています。
  わたしたちは、インターネットオークションを管理する会社に、農薬の出品を禁ずる
  ことを求めましたが、貴省におかれましても、関連業者を指導してください。

10、昨年11月貴対策室から「試験研究の目的で農薬を製造等する場合の留意事項につい
  て」の通知にあるように、農薬の試験研究においても、安全対策に万全の注意をする
  よう関係者に周知徹底させてください。

11、通知を出されましたら、すぐに、貴省のホームページに掲載し、広く周知を図って下
  さい。

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作成:2005-05-24