行政・業界の動き
t16602#農薬危害防止運動の本年度実施要綱より〜事故防止に地域住民の意見を#05-06

【関連記事】2004年の農薬危害防止運動については、記事t15302 記事t15401参照

 5月30日、農水省と厚労省から農薬危害防止運動の実施についての通知が公表されました。当グループは11項目の要望をしましたが(記事t16501参照)、その中の幾つかは、実施要綱の中にとりいれられました。以下に、昨年度の要綱から変更された点を示しておきます。

★講習会にはドリフト対策もいれるべき
 「実施事項 1 普及啓発及び関係機関との連携等」の項目では、講習会の内容として『農薬の適正な使用及び保管管理の方法、その危害の防止対策、事故発生時の応急措置、事故発生事例並びに関係法令等』に、『農薬の不適正使用の防止対策』が追加されました。
 しかし、ポジティブリスト制度実施に伴い問題となるとして、当グループが要望した農薬ドリフト防止対策については、『機会あるごとに徹底し、技術的な対策も引き続き検討する』と回答があったものの、講習内容として、列記されなかったは残念です。
 ドリフト防止に関して、「実施事項 2 農薬の適正使用等についての指導等」の(7)項に『農薬使用者等に対し、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律に基づく有機農産物の認証を受けようとする農家の生産ほ場周辺で作業する場合には、農薬の飛散等に十分注意するよう指導する。』となっているだけでは不十分です。

★実施事項で追加されたこと
 このほか「実施事項 2」で追加されたのは、
 (2)項で徹底指導事項として、『食用農作物等に農薬を使用するときは、農薬の容器等に表示されている事項を遵守すること。』
 (8)項で『 農薬使用者等に対し、次の事項について周知及び指導の徹底を図る。』として、
  ア  種苗法施行規則(平成10年農林水産省令第83号)、農薬取締法施行規則
    (昭和26年農林省令第21号)及び使用基準省令の改正により、本年6月2
    1日から指定種苗については種苗生産段階において使用された農薬の有効成分
    及び使用回数が表示されることとなるとともに、当該種苗を用いて農産物を生
    産する場合には、農薬のラベルに表示されている有効成分の総使用回数から当
    該種苗に表示されている使用回数を引いた回数を超えて農薬を使用してはなら
    ないこととされること。 
  イ 使用基準省令附則第3条に基づき承認していた約9千件のマイナー作物に対す
    る経過措置のうち、約5千6百件については、本年3月末日をもってその承認
    を取り消したところである。このため、当該経過措置の承認が取り消された農
    薬を使用しないこと。 
  ウ 農薬販売者の届出を行っていない者がインターネットオークション上で農薬を
    販売する事例が発生したところである。農薬の販売に当たっては、都道府県知
    事への届出が義務づけられているところであり、当該届出を行うことなく、農
    薬をインターネット等を利用して販売しないこと。』です。
 なお、 当グループのインターネットオークションでの農薬販売禁止の求めに対しては、農水省から、ネットオークション管理者等に対し、農薬取締法の遵守についての協力要請を検討しているところだとの回答がきています。

「実施事項 4 環境への危害防止対策」には『水質調査等の実施に際しては、水道事業者等関係機関との連携を図り、当該事業者等が実施する水質検査結果を活用する。』が追加されました。水道法では、101種の農薬が、総農薬方式による水質管理目標設定項目になっていますが、水源流域でどのような農薬が使用されているかの情報を水道事業者に提供するよう協力しろということでしょう。

★公園・学校等で散布後の立ち入り防止を求める
 別記1「農薬による事故の主な原因及びその防止のための注意事項」で、「1 農薬による事故の主な原因 」として、以下の3項が追加され、
  ・強風中や風下での散布等散布者の不注意により、農薬に暴露したこと。 
  ・散布途中で喫煙したこと又は散布後農薬が付着した手で食事をしたこと。 
  ・周辺に通行人がいることを十分確認せず散布したこと。 
「農薬による事故防止のための注意事項」として、
  ・公園、校庭等に農薬を散布した後は、少なくとも当日は散布区域に縄囲いや立札
   を立てる等により、関係者以外の者の立入りを防ぐようにすること。
 また、別記2で「農薬の不適正使用の主な原因及びその防止対策 」が新設され、具体例が示されたことは、私たちの要望を聞き入れてくれたものでしょう。

★早くもクロルピクリン事故が・・・・
 土壌くん蒸剤クロルピクリンについては、毎年、「農薬による事故防止のための注意事項」として『揮散し周辺に影響を与えないよう風向きなどに十分注意し、被覆を完全に行うこと。 』と記載されています。今年は、特に通知の前文にまで、『昨年度においては、土壌くん蒸剤による周辺住民への被害、リン化アルミニウム製剤の発火事故、劇物に指定されている農薬の盗難等の事例がみられた』との一文が入りました。
 しかし、はやくも、6月2日、青森県八戸市の養鶏場で約2300羽の採卵鶏死亡するという事故が起こりました。鶏の肺に水泡がみられ、原因は隣接するゴボウ畑で、前日に土壌注入されたクロルピクリン液剤が気化し、鶏舎に流入したためと考えられています。さらに、9日には、神奈川県でメソミルによる鳩の毒死が発生しています。

★地域住民の意見を危害防止運動に
農薬危害防止運動の実施については、従前から、『地域の特性を活かした運動方針、重点事項等を掲げた実施要領を作成し、関係機関及び関係団体が一体となった協力体制の整備を図るとともに、農薬使用者及び地域住民の意見を採り入れ、運動の活発化を図るよう努めるものとする。 』となっています。特に、住宅地周辺や生活環境での農薬散布で、受動被曝者になる住民が、危害防止運動に積極的に参加していきましょう。
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作成:2005-09-24