食品汚染・残留農薬 ポジティブリスト制度の厚労省資料
電子版「脱農薬てんとう資料集」No.3
<残留農薬ポジティブリスト制度について>
t16604#農薬等に関する残留基準ポジティブリスト制度の最終案について−その1 「一律基準」がいつの間にやら「残留基準」となった#05-06
【参考資料】最終案のパブリックコメント募集
当グループの提出した意見と厚労省の見解その1 その2
食安委のポジティブリスト制度についての意見
【関連記事】その2
厚労省は、5月31日の食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会を経て、6月3日にポジティブリスト制度の暫定基準などに関する最終案を示し、パブリックコメントを開始しました。まず、二次案と最終案の主な違いをみてみましょう。
★最終案では791種に基準が
最終案では、二次案から削除されもの(参考とした基準が廃止されたもの9種含む)や、逆に、追加されたもの(定量限界を基準としたもの53種含む)もあり、暫定基準が設定された農薬等は714種になりました。現行基準を含め、表1に示す農薬等791種(うち農薬579種)に残留基準が設定されることになり、従来の275種(うち農薬244種)に比べ、その数は、大幅に増加することになりました。
表1 最終案に基準を示された農薬等の数
農薬 動物薬 飼料添加物 合計
暫定基準 515 197 2 714
追加内数 (60) (7) (67)
現行基準 58 3 1 62
不検出リスト 6 9 15
合計 579 209 3 791
★残念ながら、低い基準設定を求めた意見は無視された
農薬摂取量を減らすことを目標にして、出来るだけ、低い基準を採用するようにという私たちの二次案に対する意見は、いくつかの個別の農薬の暫定基準等について、かなえられただけでした。例えば、基準を設定しないことやネガティブリストにすることを求めていた、DNOC、アレスリン、グアザチン、四塩化炭素、トリジファン、フェンリダゾンカリウム塩、プロファムが基準から除外されたり、「不検出」リストにはいりましたが、一方で、農水省、食品・農薬業界、他国がパブリックコメントで緩和を求めた意見の多くが受け入れられました。
「不検出」リストには、クマホスとプロファム(食品安全委員会の意見により、国際リスク評価機関が毒性上ADIを設定することが出来ないとしているものを見直した結果)、ジエチルスチルベストロール(DES)が追加されましたが、それぞれの検出限界値については、はっきりしません。
また、「人の健康を損なうおそれのないことが明らかである物質」については、これも、食品安全委員会からの意見もあってか、イミダクロプリド、ワクチン類、インターフェロン、ホルモン系は『残留しないとの理由』で削除、さらに、微生物農薬と天敵農薬も削除されました。
★自己矛盾に陥った「一律基準」
「人の健康を損なうおそれのない量」については、食品安全委員会が何も意見を述べなかったため、厚労省は、残留基準が設定されていない農薬−農作物の組合わせについて、「一律基準」0.01ppmが承認されたと考えたのでしょう。私たちの0.001ppm未満にしろとの意見は無視されたかたちになっています。なお、食品安全委員会は、私たちの前号に示した要望について、未だ回答をくれませんが、国会の質疑で、今回、意見を述べなかっただけで、今後、意見をいう余地を残しているとしています。
厚労省は、4月の部会で、分析精度が低く、0.01ppmまで検出できない農薬等は、「一律基準」の運用を一部緩和するとの見解を示しました(てんとう虫情報164号参照)。私たちは、0.01レベルでの分析方法が確立するまで、残留基準が設定されていない農薬と農作物の組合せについては、より高い分析可能な値を暫定的「一律基準」とすると理解しました。
しかし、最終案をみて驚きました。これらは、「一律基準」でなく、残留基準になっているではありませんか。
そもそも残留基準は、食品衛生法第11条第1項による食品規格ですが、「一律基準」は同条第3項の「人の健康を損なうおそれのない量」を1.5μg/人・日と仮定して決めた数値のことで、残留基準が設定されていないものに適用されます。
それなのに、厚労省は、農作物と畜水産物に分けて、それぞれ定量限界値を残留基準として設定しました(類型6−4)。
本来、毒性や残留性データがなく、残留基準を設定しようがないものに、残留基準を設定するのですから、自己矛盾も甚だしい、といえます。
最終案では、、表2にあるように、農薬と動物薬を合わせ、95種に0.02〜1ppm(最大値はシアン化水素)の暫定基準が設定されました。このうち、農作物についての基準が設定されたものについて、次頁の表3に、その基準をあげました。97種の農薬のうち、0.01ppmより高い値のものが86種あります。
表2 検出限界0.01ppm以上の農薬等の数−省略
★困った!0.01ppm未満の基準のあるものはどうする
もうひとつ困ったことが生じました。逆に、0.01ppmより低い基準を設定したものをどう扱うかということです。厚労省の方針はこうです。
『一律基準案(0.01ppm)未満の基準が一部の農作物等に設定されている農薬等については、特定の値をもって残留基準が設定されている農作物等以外のものに関し、当該農薬等に既に設定されている最小の基準をもって暫定基準とする。』 わかりやすくいえば、既に、0.01ppm未満の基準が採用されている倍、設定されている基準の最小の値にしろということです。最終案では、農薬13種と動物薬39種について、0.009〜0.0001ppmの基準が設定されました(類型6−5)。
表3では、▼印をつけた13種の農薬が、0.001ppmのオーダになっています。農水省や農薬業界、食品業界のように緩和を求めている団体は、パブリックコメントでクレームをつけるでしょうね。
表 「一律基準」の例外となる農薬とその基準(単位:ppm)
品目名 基準 品目名 基準
1-ナフタレン酢酸 0.1 テルブホス ▼0.005
2,2-DPA 0.05 テレフタル酸銅 0.5
4-クロルフェノキシ酢酸 0.02 デメトン-S-メチル 0.05
DBEDC 0.5 トリアゾホス ▼N.D.
Sec-ブチルアミン 0.1 トリクラミド 0.1
アシュラム 0.02 トリクロピル 0.03
アセキノシル 0.02 トリシクラゾール 0.02
アゾキシストロビン 0.02 トリネキサパックエチル 0.02
アバメクチン ▼0.008 トリフルミゾール 0.05
アロキシジム 0.1 トリフルムロン 0.02
イオドスルフロンメチル 0.02 二臭化エチレン ▼0.001
イソウロンI 0.02 ニテンピラム 0.03
イプロジオン 0.05 ノバルロン 0.02
イマゼタピルアンモニウム塩 0.05 ハロスルフロンメチル 0.02
イミノクタジン 0.02 バミドチオン 0.02
エチクロゼート 0.05 バリダマイシン ▼0.007
エチプロール 0.02 ヒドロキシノニルフェニル硫酸銅 0.04
エトキシキン 0.05 ヒメキサゾール 0.02
エトプロホス ▼0.005 ビアラホス ▼0.004
エマメクチン安息香酸 ▼0.001 ピラゾリネート 0.02
エンドリン ▼N.D. ピリダリル 0.02
オキサジクロメホン 0.02 ピレトリン 0.05
カルプロパミド 0.1 フィプロニル ▼0.002
クミルロン 0.02 フェノトリン 0.02
クロジナホッププロパルギル 0.02 フェンチン 0.02
クロフェンテジン 0.02 フェンピロキシメート 0.02
クロルフルアズロン 0.05 フラザスルフロン 0.02
酸化フェンブタスズ 0.05 フラメトピル 0.1
シアン化水素 1 フルオメツロン 0.02
シクロキシジム 0.05 フルオルイミド 0.04
シクロプロトリン 0.02 フルフェノクスロン 0.02
シフルトリン 0.02 プロヘキサジオンカルシウム塩 0.02
シモキサニル 0.05 プロベナゾール 0.03
シラフルオフェン 0.05 ヘキサフルムロン 0.02
シロマジン 0.02 ベンジルアデニン又は 0.02
ジアフェンチウロン 0.02 ベンジルアミノプリン
ジウロン 0.02 ベンスリド 0.03
ジクロメジン 0.02 ベンスルフロンメチル 0.02
ジチオカルバメート 0.02 ベンタゾン 0.02
ジフェンゾコート 0.05 ペンシクロン 0.1
ジフルフェニカン ▼0.002 ホキシム 0.02
ジフルフェンゾピル 0.05 ホセチル 0.5
ジフルベンズロン 0.05 ポリオキシン ▼0.008
ジベレリン 0.02 マレイン酸ヒドラジド 0.2
ジメチピン 0.04 ミルベメクチン 0.02
スルフェントラゾン 0.05 モリネート 0.02
テフルベンズロン 0.02 リニュロン 0.02
テブチウロン 0.02 リンデン(γ-BHC) ▼0.002
テプラロキシジム 0.05 ルフェヌロン 0.02
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作成:2005-11-26