ダイオイシン
t16705#東京都北区の団地内のダイオキシン汚染〜日産化学の農薬工場跡地#05-07
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東京都北区にある豊島五丁目団地で、土壌のダイオキシン汚染が発覚し、団地住民の間に不安が広がっています。同地は、農薬メーカー日産化学工業渇、子工場の跡地だけに、汚染源が何か、健康被害が出ていないかが注目されます。
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★ダイオキシン土壌汚染調査結果は最高20万pgTEQ/g
現在までに、北区のホームページで公表されている土壌のダイオキシン汚染調査結果は、表1に示した通りです。最高濃度は、20万pgTEQ/gで、その他にも環境基準の1000pgTEQ/gを超えた個所がいくつかあります。
日本油脂渇、子工場跡地およびコスモ石油竃L島団地前給油所跡地の土壌汚染については、一般人が立ち入る恐れのないということで、すでに、土壌の入れ替え工事が行なわれています。
東保育園など3カ所では、ブルーシートで覆うなどの対策がとられており、北区はダイオキシン類の詳細調査を実施し、8月中に中間報告するとのことです。
表1 北区のダイオキシン土壌汚染調査結果(単位pgTEQ/g) −省略−
★戦前から農薬製造してきた日産化学王子工場
上記ダイオキシン汚染個所は、現在、都市再生機構(旧日本住宅公団)の所有地で豊島5丁目団地があり、さらに、4丁目の日本油脂とコスモ石油跡地も、同機構の所有となっています。これらの土地は、いずれも、1968年まで、日産化学王子工場でした。
同社の社史(1969年発刊)を調べたところ、王子工場では、戦前から、多くの塩素誘導品(液体塩素、さらし粉、三塩化フェノール、塩素系農薬、フェノール系農薬ほか)の研究や製造が行われていたことがわかりました。
さらに、農薬検査所に問い合わせると、表2のような農薬の製造場所在地が豊島5丁目の王子工場になっていました。ベトナム戦争で使用された枯れ葉剤「オレンジ剤」と同類の2,4,5-T系除草剤もあるため、ダイオキシン類の中で最強毒物の2,3,7,8-TCDDの汚染が懸念されます。
ダイオキシンの発生源を推定するには、実測値をもとに、同族体・異性体分布パターンの解析を行わねばなりませんが、現在、TEQ値しか公表されていません。当グループが北区に実測データの公開を求めたところ、いずれ、文書で公開するから、見に来てほしいとの杓子定規な答えでした。
表2 日産化学王子工場が製造場所となっている登録農薬
登録 農薬の種類 農薬の名称 登録日 失効日
番号
140 DDT乳剤 日産DDT乳剤20 S23.10.30 S46.5.1
781 BHC粉剤 日産BHC粉剤1 S25.3.10 S46.3.10
1152 銅剤 特製王銅 S26.4.23 S41.4.23
1818 MCP除草剤 日産MCPソーダ塩
「ウィーデックス」 S28.12.28 S43.12.28
2073 2.4−D除草剤 2.4−D「日産」アミン塩
(ウィーダー64) S29.12.12 S41.12.12
2866 エンドリン乳剤 エンドリン「日産」
乳剤 S31.10.27 S40.10.27
2868 クロルデン粉剤 クロールデン
「日産」粉剤5 S31.10.27 S40.10.27
6433 2,4,5−T除草剤 日産ウィードン
2,4,5−T乳剤 S39.9.9 S48.9.9
6434 2,4−D・ 日産ウィードン
2,4,5−T除草剤 ブラシキラー乳剤 S39.9.9 S48.9.9
★日産化学は調査中との回答
当グループは、日産化学に、下記の要望を出し、回答を得ました。
*********** 日産化学への要望と回答 ***********
1)王子工場の敷地面積はどの程度でしたか。工場建屋、研究施設、プラント等の
配置図もお示しください。
2)王子工場敷地内に産業廃棄物の埋設・投棄場所や廃棄物焼却炉はありましたか。
あれば、設置場所をお示しください。
また、排水はどこに放出されていましたか。排水プラント、排水経路をお示しく
ださい。
3)操業当時、王子工場からの産業廃棄物はどのように処理されていましたか。
種類別に年間数量と処分先をお示しください。
また、当時、農薬取締法、毒劇法、水質汚濁防止法、大気汚染防止法、廃掃法等で
違反を指摘された事はありませんでしたか。あれば、時期と内容を教えて下ださい。
4)貴社が王子工場で研究や製品製造のため取り扱われた農薬や塩素系誘導品には、ど
のようなものがありますか。
下記のものについて、年度別の生産量や使用量がわかれば、教えてください。
王子工場で、製造又は使用がない場合は、どこで取り扱われたか工場名をお示しく
ださい。
なお、これ以外に研究や製品製造のため取り扱われた農薬や塩素系誘導品がありま
したら、追加してください。
液体塩素、塩酸、晒粉類、王銅(塩基性塩化銅)、BHC、DDT、2,4−D、
MCP、MCC(スエップ、3,4−ジクロロアニリン含有)、PCB
2,4,5−T、PCP、クロルデン、ヘプタクロル、エンドリン、ケルセン、
PCNB、NIP、MCPB、IPC、リニュロン、クロルベンジレート、
ジクロルフェノール類、トリクロルフェノール類、塩素化ベンゼン類、
5)王子工場跡地でのダイオキシン汚染の件で、いままでに、東京都、北区、都市再生
機構から貴社に問い合わせや事情聴取がありましたか。あったとすれば、その時期
と内容について教えてください。
6)このたびの王子工場跡地におけるダイオキシンの土壌汚染の原因について、貴社は
どのようにお考えですか。
【回答(6月3日)】
貴殿がご指摘の豊島5丁目団地の敷地は、弊社が昭和43年及び昭和44年の土地売
買契約により日本住宅公団(現在の都市再生機構)に売却したものでありますが、爾
来、約36年を経過しており、当時の工場の詳細などにつきましては、現在のところ、
充分に把握できておりません。
弊社は、都市再生機構が行っている調査につき、同機構の要請を受けて、協力を開始
しましたが、調査には今しばらく時間がかかるかと存じます。
判明しました情報につきましては、都市再生機構に提出いたしますので、ご了承賜わ
りますようお願い申し上げます。
★都市再生機構は、情報公開するというが
一方、5丁目団地等の土地所有者である都市再生機構は、団地内57ヵ所の土壌のダイオキシン調査を行い、その結果を6月15日報告しました。環境基準を超えた7ヶ所(1,200〜3,000pgTEQ/g)では、緊急対策として植木を伐採し、不織布シートをかけ、20cmの覆土工事がなされましたが、汚染土壌を隠すだけでは根本解決にならないことはいうまでもありません。その後の調査で、団地西側のトンボ鉛筆跡地でも、最高20万pgTEQ/gの汚染が見つかっています。
同機構にも要望を出し、回答を得ましたが、以下のようなものでした。
*********** 都市再生機構への要望と回答 ************ −省略−
結局、現在のところ、ダイオキシンの同族体・異性体の実測値の数値は公表されておらず、パターン解析から発生源を推定することはできません。日産化学が開示した資料とともに、出来るだけ早く、データを公開してほしいものです。
高松市新開西公園のダイオキシン汚染地は、ダイオキシン類対策特別措置法の「土壌汚染対策地域」指定を受け、PCPの不法投棄者が不明のまま、浄化処理計画が進められています。7月から土壌を掘削・搬出して直島町の中間処理施設で溶融処理、8月中旬に公園使用再開を目指すとなっています。東京都北区の団地も、土壌浄化については、特措法の適用がとり沙汰されています。高松市の場合よりも汚染規模が大きく、農薬工場跡地で生活している約5千世帯の住民や企業で働いてきた人たちに健康被害がでていないことを祈るばかりです。
【参考資料】
東京都北区のHPにある豊島5丁目団地及び近隣の区有施設の土壌汚染について
・4丁目汚染1 4丁目汚染2 旧豊島東小学校跡地
・8/19中間報告
コスモ石油のプレスリリース
都市再生機構のHP
・6/18公表文書、7/09公表文書、7/28公表文書、
・8/15公表文書、8/29公表文書、9/23公表文書、9/30公表文書、
・10/28公表文書、11/10公表文書
福島宏紀北区議会議員のHPにある
豊島5丁目団地のダイオキシン類等の土壌汚染問題についての活動日誌
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作成:2005-10-29