行政・業界の動き
t16803#厚労省:虫除け剤ディートを6ヵ月以下の赤ちゃんに使うなと規制予定〜目に余る殺虫剤・虫除け剤等のテレビCM#05-08

【関連記事】記事t16901
【参考資料】国民生活センターの調査報告発表(05/06/03)
      厚生労働省の8・15検討会資料議事録及び8・24通知

 毎年、夏になると殺虫剤等のテレビCMが目立ち始めます。わずか一匹の蚊を退治するのに、強い噴射力のあるスプレーを撒き散らしたり、芸能タレントを使ったダニやゴキブリ駆除剤の宣伝には辟易します。
 8月2日には、東京都大田区の雑居ビルで、発煙騒ぎが起こり、何台もの消防車が出動することとなりました。スナックの経営者が閉店後、12個ものくん煙剤をしかけて、帰宅したのですが、その煙が火事と見間違われたのです。他の店の店員や客、消防士ら12人がのどの痛みや息苦しさを訴え、一部は病院に搬送されたとのことです。
 テレビCMにより、知らず知らずのうちに、殺虫剤使用を刷りこまれたことが、こんな事件の背景にあるのではないでしょうか。

★自社の使用方法にも反したスキンガードのCM
 木陰で、幸せそうに幼女を抱く母親。巨大な蚊が子どもを狙っている。そこで、胸元から腕にかけて、シューとひとふきの虫除けスプレー。蚊も寄りつくことはない。  ジョンソン社虫除け剤「スキンガード」の15秒のこのテレビCMの途中、2秒ほど画面の下に白字のテロップが流れます。『顔にかかったり、むせたりしないよう充分注意してお使いください』と書いてあるのですが、とても、読めたものではありません。実は、このテロップは、私たちの要望に対する、ジョンソン社の回答でした(ジョンソン社の見解(2005/07/22)参照)。

 最初このCMを見た時、驚きました。スキンガードの主成分はディートですが、同剤を含む虫除け剤については、国民生活センター が、6月3日に 「虫よけ剤−子供への使用について−」という報告を公表し、業界に対しては、「エアゾールタイプは、付着効率が悪く、吸入すると思われることから子供への使用について再検討することを要望する」などと申し入れをしていたからです(記事16605参照)。
 しかも、ジョンソン社のホームページにある「よくあるお問い合わせ」の項には、
 Q:乳幼児にも使えますか?
 A:小さなお子様は大人に比べて肌が非常にデリケートです。前もっ
 て皮膚の薄いところ(二の腕の内側など)に少し塗って、赤くな
 ったりしないことを確認してから使ってください。
 使う時は、直接スプレーせず、手のひらにスプレーしてからロー
 ションを塗る要領でお肌に塗ってあげましょう。
 また、使う目的を決めて、外出から帰ったらすぐに洗い流してあ
 げるなど、長時間続けて使わないようにしましょう。
 となっています。乳幼児には、直接スプレーするのはやめ、手のひらにスプレーしてから肌に塗るようにしなさい、ということです。まさに、CMの映像は、自らの使用方法に反する内容であったわけです。
 私たちは、7月20日に、ジョンソン社に対し、当該CMの放映中止と子どもに直接散布しないよう具体的な注意事項いれるよう求めました。その結果が、読めもしない上記のテロップだったわけです。
 8月15日には、厚労省がディートの毒性についての検討会を開き、神経毒性を懸念するカナダの規制を参考に、製品には含有量を記載する、6ヵ月以下の赤ちゃんに使用しないなどの添付文書改訂方針を決めました。

★携帯虫除け、虫除けうちわ、防虫服・・・新製品が続々
 先日、幼稚園児のお母さんから、携帯蚊取りを首からぶら下げた子がいるが、大丈夫かとの問い合わせがありました。
 そこで、腕や腰など身につける製品にはどんなものがあるかと調べましたが、実は、これらは「蚊取り」ではなく、不快害虫用の製品であることがわかりました。

 大日本除虫菊鰍フ製品にはおでかけカトリスがあります。同社が蚊に対する殺虫効果をうたい『蚊に効くカトリス』という商品名で販売しているファン式の一連の製品にはピレスロイド系のトランスフルトリンが使用されていますが、『おでかけ・・・』の方は、対象害虫はユスリカ、チョウバエ、ヨコバイ、アブで、成分もメトフルトリンとなっています。前者は、適用が衛生害虫で薬事法の対象製品なのに、後者は、適用が不快害虫で法対象外の「雑品」です。蚊取り用と同じ「カトリス」との商品名がはいっていますので、携帯『蚊取り』との誤解を生むでしょう。
 フマキラー鰍フどこでもベープNo.1も適用害虫はユスリカ、チョウバエで、成分はメトフルトリンです。アース製薬鰍フおそとでノーマット携帯用も不快害虫用で、成分は、トランスフルトリンとなっていいます。

06年には、上記、製品の適用害虫や雑品扱いに変更がみられたものもあります。

さらに、今年の新製品には虫除け剤を放出する団扇もありました。サクラクレパス社から虫除けうちわとして3種が販売されています。印刷インキにピレスロイド系の薬剤を添加しているところが画材メーカーたる所以でしょうか。野外催し会場やキャンプなどでの使用を想定しているようです。その効果の持続は開封後三日程度だそうで、適用対象は、ユスリカ、チョウバエ、イガとなっていますから、これも「雑品」です。

 記事t14505(2003年6月)で、帝人とアース製薬が共同で殺虫剤入り防蚊服「スコーロン」を開発していることを紹介しましたが、いよいよ製品が、今夏から販売されることになり、帝人ファイバー社が防虫ウェア「スコーロン」として、パーカーや園芸用エプロンなど6種の製品を、楽天市場などで期間限定の通信販売が始めました。(フォックスファイアのHPスコーロン製品)

 ポリエステル繊維にピレスロイド系化合物(成分名不明)を固着させたものを使います。メーカーは、蚊に対する効果を宣伝していますが、防蚊服とはいわず、防虫服といっていますから、「雑品」になるのでしょうか。それにしても、虫除け成分が、直接肌に触れても安全だという証拠を示してもらいたいものです。

 確かに、蚊に刺されるとひどくはれたり、アレルギー症状を示す「蚊刺過敏症」の方もいますが、そうでもないのに、むやみやたらと、殺虫成分で身の回りの空気を汚染するのも考えものです。特に、閉め切った室内に、何人もがそれぞれ、携帯虫除け剤などを身につけていたら、どうなるか心配です。
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作成:2005-11-26、更新:2006-07-13