行政・業界の動き
t17001#鉄道車両での殺虫剤散布について国交省と話し合い〜薬剤や化学物質過敏症についての知見を得てできることをやりたいと回答#05-10

 前号で、鉄道車両での殺虫剤等の散布に関する質問と要望を国土交通省に出したことを報告しました。この要望は19団体と24名の個人が賛同して名前を出しています。その回答を10月12日に、参議院会館会議室で岡崎トミ子議員とともに国交省から聞きました。要望団体からは6名、国土交通省からは鉄道局業務課から課長補佐、係長合わせて3名がきて説明しました。
 国交省業務課というのは、鉄道局で旅客サービスを扱っている部署で、殺虫剤等の薬剤散布の担当になったということです。鉄道局にはもともと殺虫剤などについての知見はなく、要望事項をみて初めて勉強したということです。
 その勉強の結果として、鉄道局が認識している内容を以下のように説明しました。

★鉄道局の説明
 公共的スペースの衛生環境の基準は、建築物衛生法(ビル管理法)があるが、この法律は鉄道車両には当てはまらない。また、この法律の基準には殺虫剤の使用に関しては、明確なものはなく、建物管理者の判断による。環境空間で薬剤の使用について定めているのはこれくらいしかない。
 鉄道局としては、全部の事業者に聞けないので、一部の事業者に聞いた。まず、JR各社だがゴキブリ等がよく発生するということもあり、定期的に薬剤を散布しているという回答だった。

★殺虫剤散布してない鉄道会社
 他方、メトロ数社では薬剤散布をしていない。特に東京メトロでは、平成2年5月から、従来散布していた期間を徐々に延ばしていき、その結果を踏まえて、車内清掃を十分やれば薬剤はなくても大丈夫だろうということで、平成10年4月から全線で薬剤の散布を止めている。
 東武電鉄では、普通の車両は平成12年10月から止めている。ただし、特急車両はまだ散布している。車両で食事をしたりするので食べ物が床に落ちたりすると虫が発生するので散布しないといけないということだった。
 要望に資料として提出していただいた中に、関西での農薬散布の調査があったが、農薬散布については平成10年以降、農水省から鉄道局に依頼がきており、毎年、各営業局に通達を出して被害防止に努めている。しかし、それでもJR東日本のように被害(注:除草剤飛散による線路周辺の農作物被害をさす記事t15604記事t15707参照)を出しているところもある。

★事業者が健康被害を把握してない
 また、車両内の薬剤で健康被害を受けてお客様窓口などに苦情を申し出ても、文書で出せとか言われてやめたケースもあるなど要望書に書かれていたが、実際に事業者が健康被害について把握しているのはほとんどない。逆に言えば、そういう意見が事業者に伝わっていない。JR各社に聞いたところ、年間数件しかないということだった。
 一番多かったJR東日本では、年間20件程度だったというが、そのうち「清掃をしっかりしてほしい」というのが13件だったという。事業者がどれくらい被害があるのかという認識は持っていないというのが実情だ。窓口の対応が悪いところがあったら具体的に指摘してほしい。
 縦割り的な話で恐縮だが、われわれは化学物質についての知見がないし、そもそもそういうものをやるべきノウハウ、人材、研究機関を持っていないので、鉄道事業者に使うなという指導はできない。そこは化学物質に知見を有する機関に整理していただく必要があると考えている。

★知見を得た上で検討したいと繰り返す
 以上のような説明でした。その後、参加者から「鉄道車両内で殺虫剤をまけという法律はない。実際に清掃で対応できるところがあるのだから薬剤の危険性の勉強以前にまず、必要ないという指導はできるのではないか」「ビル管理法でも、IPMの考え方が広がっている。生息調査をした上で適切な防除をしましょうということだ。今の話ではゴキブリが出るかもしれないから薬剤を撒くということだ。そこのところを国交省としてどう考えているのかを聞きたい。」など聞いたところ、
「実際的には知見がないので、知見のある人にご意見を聞いた上で、何ができるか検討してゆきたい。」と述べるだけでした。「知見のある人」というのは、どうやら厚労省のようでした。
 また、「薬剤を撒くときに事前調査をした上でやりなさいということになった場合に、事前調査をしている間に大量にでた場合、逆に一般の方からクレームが付く。そういうことを踏まえてメトロは時間をかけて薬剤の散布を延ばしてきた。
 役所は根拠がなくてこれをやりなさいとはなかなか言えない。調査をするのはいいが、私どもが考えているのはすべて国が情報収集してやるということじゃなくて、各事業者ができないか。自分たちがこういう薬剤を撒いていますとか、こういうことをしてますということができないかを踏まえて、事業者と話をしていきたい。検討したいというのはそういうところがある。」と述べました。

★いつまでにやるかは明言せず
 また、化学物質過敏症患者という部分を抜きにしても、鉄道車両の殺虫剤散布は問題だ。いつまでに調査してくれるか言ってほしいとの質問には、「私どもはやらないとは言ってない。ただ、そんなに長い年月をかけてやる問題でもない。」としか回答しませんでした。
 鉄道会社はどんな薬剤を使用しているのかという質問に「基本的には一般の市販品ということでやっている。バルサンみたいなものとか、何とか乳液を100倍に薄めてやるとかいうのもあった。ゴキブリとか害虫によって使い分けている。」とのこと。

★化学物質全般も問題だというが・・
 さらに「ただ、殺虫剤といわれているが、私どもが考えるとすれば、過敏症の方は殺虫剤だけでなくて、消毒剤、清掃剤、ワックスに反応する人もいる。だから殺虫剤だけで決めちゃっていいのかとか、全体を含めてどうしていくかということを話をしないと殺虫剤だけやっても、ダメではないかと思う。化学物質過敏症の人が車内にいるかどうか事前に知る方法も考えなきゃいけない。そういうのを全部含めて話をしていかないといけない。どこまでできるのかを検討していくということが、今日お答えできる話だ。」と、化学物質全般も問題にしたいというようなことを言っていました。
 たしかにそうですが、これはなかなか難しい問題で、これが解決しないと何もできないということになれば、いつまでたっても何もできないことになります。それがあるから、私たちは、とりあえず、減らすことができる殺虫剤や殺菌剤を問題にしているのですが。

★事業者が公表するようにしたい
 とりあえず、現状はどうなっているかということについて、国交省の方で調べるのかという質問には「それを知った上で、ただそれを私どもが発表する方がいいのか、事業者が発表する方がいいのか。事業者自ら積極的にしてくれますかという話もあり得る。」とのことでした。
 そして、「どこまでできるかわからないが、今申し上げたようなことをできるだけやるが、お願いとしては、本音を言えば、上流というか、薬品のサイドでもっと細かに基準を決めていただきくよう要望してもらえないだろうか」とお願いされました。言うまでもなく、私たちは厚労省に働き続けているので、その点は説明しました。
 いずれにしても、鉄道局も鉄道事業者ももっと薬剤について勉強すべきだと指摘し、今後、情報交換しながら、前向きに進んでいこうということで、第一回目の話し合いは終わりました。
購読希望の方は、〒番号/住所/氏名/電話番号/○月発行○号からと購読希望とかいて、 注文メールをください。
年間購読会費3000円は、最初のてんとう虫情報に同封された振替用紙でお支払いください。

作成:2005-10-29