農薬の毒性・健康被害にもどる
t17601#農薬危害防止運動を前に農水省に要望#06-04
 農薬危害防止運動は、6月から始まりますが、昨年、農水省が通知を出したのは、ぎりぎりの5月30日、都道府県は、それから通知内容を徹底させるというのでは、遅すぎます。そこで、私たちも、昨年より1ヶ月早く、アクションをとりました(昨年の関連記事:t16501t16602)。

 このところ減少傾向がみられた農薬による事故件数は、2004年度には、前年に比べ、7件増加して、33件となりました。内訳は、散布中の死亡1件(1人)及び中毒17件(39人)、誤用による死亡1件(1人)及び中毒14件(15人)となっています。また、2004年度の農作物や自動車等への被害は、前年の2倍の18件です。なぜ、件数がふえたか、原因をはっきりさせたいものです。

★農薬のドリフト対策は万全か
 今年は、農薬等の残留基準ポジティブリスト制度の実施をひかえていますから、ドリフト防止対策が、重要になると思います。農水省や厚労省は全国各地で、ポジティブリスト制度についての意見交換会を開催したり、ドリフト防止対策の指導やパンフの配布を行なっていますが、末端の農業者に、どの程度、情報が伝わっているか疑問です。
 一般農家向けに、農水省が配布しているパンフレットには、
 「散布時に守りたいこととして」、
   ・散布量が多くなりすぎないよう気をつけましょう
   ・風の弱い時に風向に気をつけて散布しましょう
   ・散布の方向や位置に気をつけて散布しましょう
   ・細かすぎる散布粒子のノズルは使わないようにし、
    散布圧力を上げすぎないようにしましょう
   ・タンクやホースは洗いもれがないようきれいに洗って
    おきましょう
 などを挙げているのは、良しとして、こんな対策も有効として、飛散しにくい剤型の使用や、遮蔽ネットらの利用、境界区域の散布をやめることのほかに、『まわりの作物にも登録のある農薬を使用する』を薦めていることには、首をかしげざるを得ません。これは、飛散防止ではなく、飛散しても、基準超えにはなりにくいという、いわば、ごまかしの手なのですから。
 それに、私たちが心配している、無人ヘリコプター散布によるドリフト防止対策については触れられていません。
 そこで、もっとしっかり、指導してほしいとの意をこめて、てんとう虫情報に連載してきた、「住宅地等における農薬使用について」のアンケート調査結果も添付して、農薬対策室に、4月11日付けで、下記の要望を送付しました。
           ********** 要 望 **********

1,2005年度の農薬の使用に伴う事故及び被害の発生について、内容別件数及び死亡・
  中毒の原因農薬と発生状況を教えてください。また、その状況を通知に書き、事故
  防止の教訓にしてください。
  昨年もこの質問をいたしましたが、秋にならないと前年の集計ができていないとし
  て、回答いただけませんでした。前年のものは、危害防止運動の前にだし、教訓に
  すべきだと思います。また、2004年度は2003年度に比べれば、事故例が増えていま
  す。件数だけでなく、散布中の死亡や中毒の状況を詳しく知らせてください。

  ちなみに、2005年度の事件事故として私たちが把握している主なものに、クロルピ
  クリンによる健康被害(06/02=石川県志賀町)、水道水汚染(05/09=愛媛県伊方町)、
  水系汚染(05/10=さいたま市有機リン系農薬廃棄で魚毒事件、05/10=秋田県殺菌
  剤流出)、野鳥被害(05/01=長野県塩尻市ハト、05/03=北海道タンチョウの死因
  MPPと判明)、ミツバチ被害(05夏=岩手県)、クロルピクリンによるニワトリ
  大量死(05/06=青森県)、ネットオークションで毒物販売(05/04)等あげられま
  す。また、農薬散布による周辺住民の健康被害に対する損害賠償事件の判決として
  千葉地裁の原告勝訴判決、公害等調停委員会の事案として、日野市の住宅隣接地で
  の農薬散布原則中止の調停があり、これらの事例、状況の資料をつけ、事故防止に
  役立てられるよう通知に掲載してください。
  ポジティブリスト制度実施を前に、ドリフト防止対策の指導が実施されていますが、
  農作物だけでなく、ヒトの生活環境への汚染も減ることが期待できますので、徹底
  指導していただきたいと思います。ただし、貴省の指導パンフにある「まわりの作
  物にも登録のある農薬を使用する」は、ドリフトを減らす対策とはいえませんので、
  削除してください。

2,2003年9月に出された局長通知「住宅地等における農薬使用について」(以下、
  「通知」)を全国で遵守させるために罰則を設けてほしい。
  この通知の周知徹底については、貴室もさまざまな努力をされておられることは知
  っておりますし、感謝もしています。しかしながら、まだ不十分で、いまだに街路
  樹や公園、学校、病院などで定期散布が行われている事実があります。
  昨年11月、私たちは当会のメンバーを中心に通知の周知状況や農薬散布による健康
  被害についてアンケート調査をいたしました。その結果を資料として添付いたしま
  す。
  このアンケートで、通知を守らせるにはどうしたらいいかという質問に対して「罰
  則を設けてほしい」という声が圧倒的に多くありました。どうしても守られないな
  らば、罰則を検討すべきと思います。
  さらに、造園業者・防除業者が通知を知らない例が多々あります。これら業者に対
  する指導を徹底してください。

3,有人・無人ヘリコプターによる農薬散布に厳しい基準を設けてほしい。
  無人ヘリコプターによる農薬散布に関して、貴省植物防疫課がパブリックコメント
  をしたり、林野庁が検討会を設けたりしていますが、まだ、対策は立てられており
  ません。ポジティブリスト制度で問題になっているドリフトは、地上散布に比べ、
  上空から高濃度で農薬散布する有人、無人ヘリによる農薬空中散布の方がドリフト
  や大気汚染がずっと深刻と思われます。この点について、特に厳しく農薬危害防止
  月間で対策を明示してください。

4、非農耕地での、除草剤使用に規制を。
  植物栽培に使用しない除草剤については、農薬取締法の対象とならず、なんら使用
  規制はされません。通知も、農薬としての使用しか指導できません。同じ成分が住
  宅地周辺で使用されても、農薬でないということで、危害防止指導もできないのは、
  どう考えても問題です。貴省が指導できないというのであれば、環境省に対して、
  使用規制強化をはたらきかけていただきたいと思います。

5,国土交通省にも以下内容を含めて、危害防止通知を周知させること。
  河川敷は、管理者が市町村等に占用許可を出し、公園・運動場等に利用されています
  が、ここでの農薬使用は、
  1)散布後の降雨で農薬が河川に流出するおそれがあること。
   その下流域で水道事業者が取水するケースがあるほか、水棲生物への影響が心配
   なこと。
  2)葉に残留した農薬が、人や犬等に付着しおもわぬ事故になるおそれがあること。
   などの危被害が予想されます。
   出先の河川事務所のほか、河川管理者である都道府県にも、国土交通省を通じて
   の周知が必要です。なお、国土交通省は道路や公園も管轄していますので、さら
   に周知を徹底してください。

6,夜間の農薬散布を禁止すること。
  夜間の農薬散布は、ドリフトの方向や範囲がつかめない。天候の予測ができないな
  ど、安全確認ができません。
  農薬散布の条件として、最低限夜間の散布は禁じるべきです。
 【真鶴町の例】
  例年、庁内の松林に5・6月に1回づつ行われる散布は午前1時から朝8時までで、
  「ヒトがいない」との前提で散布が続いています。

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作成:2006-04-26