農薬の毒性・健康被害にもどる
t17605#タンチョウは堆肥場のMPPで死亡と推定〜環境省、北海道地方環境事務所が発表#06-04

   【参考資料】    北海道地方環境事務所発表資料

 2002年に死体で収容されたタンチョウの死因が有機リン系殺虫剤フェンチオン(MPP)による急性中毒であったことがわかり、2005年7月に、環境省と厚労省は、野生鳥類へ悪影響を与えることから、使用に注意するよう通知を出しました(記事t16804)。
 タンチョウは羽を広げると2メートルを超える大型の鳥です。その鳥が急性中毒で死亡するというのはよほど大量かつ高濃度のMPPを摂取したものと思われます。私たちはタンチョウはどこでMPPを摂取したのか、道東のMPPの使用状況がどうなのか調査するよう要望していましたが(記事t14905c 記事t16405)、ようやく2006年3月22日に、「道東地域におけるフェンチオン製品の使用実態について」と題して環境省北海道地方環境事務所が記者発表しました。

★農薬でなく医薬品の殺虫剤使用が原因
 それによると、農薬としてのMPPはバレイショ等に使用されているが、タンチョウによる作物の被害はないので、MPPが残留した作物をタンチョウが摂取した可能性は低い。
 一方、防除薬(医薬品の殺虫剤=衛生害虫駆除)は、取扱実績517件のうち、31件が使用していた。内訳は一般家庭又は農家の汲取槽の害虫対策に22件、堆肥場の害虫対策使用が2件。不明が5件。水産加工場の害虫対策としての使用が4件。(複数回答のため、合計が一致しない)
 MPP製品が使用された汚物又は廃棄物を取り扱っている、し尿処理場、水産加工廃棄物保管施設、廃棄物処理場のいずれにおいても、タンチョウの飛来は確認されていないため、汲取槽及び水産加工場の害虫対策で使用されているMPP製品がタンチョウの急性中毒に結び付く可能性は低いものと判断された。
 一方で、堆肥場での害虫対策として使用される場合は、タンチョウが堆肥場に飛来する可能性もあることから、タンチョウへの悪影響が懸念された。
 という内容でした。

★厚労省も指導すると国会で答弁
 以上のように消去法で、タンチョウの死因のMPPは堆肥場で使用されたものと推定しています。電話での問い合わせの結果、「防除薬」というのは、衛生害虫駆除用の医薬品の殺虫剤のことだということでした。使用されたMPPが衛生害虫駆除用のものなのか、農薬を転用したものか、疑問は残ります。
 環境省は、今後、関係機関を通じて農家に対して堆肥場でMPP製品を使用することのないよう要請していくとのことです。
4月13日、参議院厚労委員会で、谷ひろゆき議員が薬事法改定に関連して、タンチョウとMPPについて質問しました。厚労省は、タンチョウの死因が農薬でないとは言い切れないとしながらも、当該地域の薬局や防除業者などにMPPの用法用量を守るよう指導すると約束しました。
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作成:2006-07-26