行政・業界の動きにもどる
t17802#ポジティブリスト制度実施とドリフト対策#06-06
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 5月29日から、農薬の残留基準等のポジティブリスト制度が実施されましたが、 同日付けで、厚労省と農水省が通知をだしました。

★厚労省は、食品取扱施設での殺虫剤使用にも言及
 厚労省は、食品安全部監視安全課長名で都道府県の担当部署へ「食品に残留する農薬等の監視指導に係る留意事項について」という通知を出しました。
 そのポイントのひとつは、収去検査をした食品に残留基準を超える農薬等を検出した場合の対応についてで、結果の公表は、分析が出てすぐにやるのではなく、原因究明と再発防止対策を決めてから行い、風評被害がおこらないように、慎重にやれということとです。  もうひとつは、加工食品について、原材料で基準超えがあっても、製造加工された後のものに、基準超えがなければ、食品衛生上問題にする必要はないということでした。  あまり、厳しい対応をしないようにということでしょうか。
 この通知には、その他の留意点として、食品等事業者が実施すべきそ族及び昆虫対策について『食品取扱施設において殺虫剤等を使用する場合には食品への汚染防止対策を行う等、適正に使用されるよう指導すること。』との記載があります。
 私たちが、食品の衛生管理のために使用される農薬類似成分の飛散防止対策の指導強化を求めたこと(てんとう虫情報176号参照)に対する答えのようですが、もっと、具体的な指導をしないと効果がないと思います。

★農水省は、三局長連名通知その3
 農水省のものは「農薬適正使用に係る対応の強化について」という消費・安全局長生産局長、経営局長三局長連名通知で、地方農政局宛てのものでした。いままでの2つの連名通知(記事t17702参照)の内容について、その指導を強化することを求めるものですが、「地域における積極的な指導の展開」の中に、
『農薬登録、農薬残留基準等に関する最新の情報を踏まえて、隣接するほ場に栽培されている作物に対しても一律基準以外の基準が設定されている農薬の選定、防除暦の見直し等を積極的に行う。』という一文がありました。
 私たちは、農薬危害防止運動への要望の中に、同省のパンフで、ドリフト防止対策としてあげている『まわりの作物にも登録のある農薬を使用する』の削除を求めましたが、このことは無視され、より緩い指導がなされることになりました。
 パンフでは、隣接農作物に登録がある、すなはち、農薬取締法で適用が認められている農薬を使用して、それが残留しても、適正使用か、ドリフトかの区別がつかないようなものにしろということでした。
 通知の『一律基準以外の基準が設定されている農薬』というのは、『高い暫定基準が設定されている農薬』を意味し、農薬取締法でその農作物に適用のあるなしにかかわらず、0.01ppmより高い残留基準が設定されている農薬を使えば、残留していても、適正使用か、不適正使用か、ドリフトかの区別がつかないから、いいよという指導です。
 農水省は、ドリフトがなければ、ゼロであって然るべき農薬が、一律基準を超える高い濃度で残留していても、流通させることに手を貸していいのでしょうか。こんなことを、『積極的に行なう』というのはどういうことでしょう。積極的にすすめるのは、農薬の使用をできるだけ減らし、対象外作物へのドリフトそのものをなくすことであり、国民の農薬摂取を減らすことではないでしょうか。

★農林水産航空協会のドリフト対策
 上空から高濃度の農薬を散布する空中散布は、ドリフトの危険高い散布法で、日本農業新聞によりますと、東北や九州で、航空防除そのものを見直す動きも出ており、愛知県JA豊橋は水稲の共同防除で、無人ヘリコプターや大型送風散布機(スーパー・スパウター)による散布を中止し。粒剤散布に切り替えたそうです。
 ところで、農林水産航空協会が、『無人ヘリコプター防除〜周辺の他作物への飛散低減対策』というリーフレットを関係者に配布しています。
 以下に対策として、記載されている諸注意をいくつか紹介しましょう。
散布者が行なう散布作業前の対策として、【事前確認調査の徹底】があげられ、『実施主体とともに「散布周辺の他作物」に関する情報と除外地区、飛散を防ぐべき圃場の防護状況の確認を行うようにしてください。』とあります。
 また、散布者が行う飛散低減対策として、【他作物の栽培されている圃場に平行散布も徹底】があげられ、『散布を行いながら、前進散布から機体の引き起こし、旋回を行わないこと』『他作物の栽培圃場へ向けた散布飛行を避けてください』『他作物の栽培圃場に向かって散布しなければならない場合は、風の状況に応じて数回、枕地をとって平行散布を行うようにしてください』『他作物の栽培されている圃場が、風上にあるときに散布を行なうよう努めてください』『散布時の風向や風の強さに応じて、散布基準の範囲内で「速度を下げる」「高度を下げる」散布を行なってください』『実施主体とともに、気象条件(風の強さと方向)を記録し、一定期間保管しておいてください。』
 さらに、実施主体にお願いする対策として、【他作物が栽培されている圃場の所在の確認】があげられ、『他作物が栽培されている圃場を示した散布作業地図を作成してください』『周辺の他作物栽培者などの関係者へチラシなどで事前の連絡をしてください』『除外地区、飛散を防ぐべき圃場の防護状況の確認を、散布者とともに行ってください』などとあります。  これらは、いずれも、農作物への飛散防止対策ですが、すべて、住宅地域にもあてはまる注意事項です。農作物の場合と違って、人が健康被害を受けた場合は、とりかえしがつきません。そこでは、無人ヘリによる散布自体の是非が問われることになります。次ページのように、群馬県では、有機リン剤に限っているものの、無人ヘリコプター空中散布自粛要請がなされました。このような動きが、全国に広がるようがんばらなくちゃ。
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作成:2006-11-26