食品汚染・残留農薬にもどる
t17902#厚労省の食品健康影響評価予定、今年度は146物質#06-07
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   【参考資料】食品安全委員会:ポジティブリストの食品健康影響評価の実施手順案パブコメ結果

ポジティブリスト制度実施に伴ない、残留基準を設定した799の農薬等のうち、食品安全委員会による食品健康影響評価(ADI=一日摂取許容量の設定)がなされていないもの評価手順について、前号で、私たちのパブリックコメントへの意見を掲載しました。その中で、農薬等の評価順序を決めるに際して、国民に情報を提供し、その意見を聞くよう求めましたが、厚労省が、既に、5月30日に開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会で、06年度の評価予定物質を示していることがわかりました。

★優先評価物質アレスリンとは
 評価が全く実施されていないとして、当初から挙げられていた5物質の中には、ピレスロイド系殺虫剤のアレスリンがあります。アレスリンは、67年に登録された農薬成分で、バラ、菊、つつじ、つばき、さくらなど花卉や樹木にしか登録はなく、食用農作物に適用されていませんでした。厚労省のポジティブリスト制度の二次案では、アメリカの基準を採用し、22の農作物に2又は4ppmの基準値が設定されましたが、私たちは、慢性毒性試験結果などが不明であるため、残留基準を設定しないよう求めました。その結果、国内で家畜用の殺虫剤として適用があることから、乳、卵を含む畜産品に0.04ppmと設定されただけで、農作物についての基準は撤回され、「一律基準」0.01ppmが適用されました。
 アレスリンは、ハエ・蚊駆除のための家庭用殺虫剤や蚊取り線香にも使用されており、食品残留だけでなく、生活環境での空気汚染が懸念される物質です。このような殺虫剤が、いままで、ADI評価がなされることなく、使われてきたことは、おおいに問題にすべきでしょう。

★99種の農薬のADI評価が
 厚労省は、国民に情報を提供することも、国民の意見聞くことも、端から考えなかったようで、食品安全委員会のパブコメ募集中に、はやくも、06年度の評価予定物質を示していたことには、憤りを覚えます。
 同省が挙げたのは141物質で、そのうち、農薬は表に示すように、アレスリンを含め、99種あります。表には、農薬成分名と用途のほか、オーストラリアが公表しているADIリストにある数値を載せました。 殺鼠剤ブロディファコウムのADIは0.0000005mg/kg体重/日で、厚労省がいう「ヒトの健康を損なう恐れのない量」に対応する0.00003mg/kg体重/日よりも低い値です。そのためか、農作物の残留基準値は米など穀類や豆類で0.0005ppm、野菜や果実で0.001ppmと「一律基準」よりも低く設定されています。
 *印をつけたのは、国内登録農薬で43あります。残りの56は、国内で使用すれば、農薬取締法違反で、処罰されることになる農薬で、海外に多くの食料を依存しなければ、残留基準を設定する必要のないものです。食品安全委員会は、海外にADIがあるものは、その設定根拠となる情報をもとに、評価をすることになるでしょう。その際、オーストラリアの数値も参考にされることになると思われますが、このようなADI情報は、なにも私たちが、調べるまでもなく、既存情報として、明らかにしておくのが、厚労省の役割ではないでしょうか。

表 06年度の評価予定農薬リスト −略−


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作成:2006-12-26