農薬の毒性・健康被害にもどる
t18003#くん蒸殺虫剤フッ化スルフリルについて〜急性中毒死と残留基準の問題#06-08
★埼玉県の博物館で、フッ化スルフリルにより作業員が急性中毒死
6月22日、さいたま市にある県立歴史と民俗の博物館の地下資料収蔵庫で、毒物指定のフッ化スルフリルくん蒸剤を用いて殺虫処理をしていた防除会社の作業員が手足のしびれを訴え、9時間後に死亡しました。排気作業中にホースのつなぎ目から漏れたフッ化スルフリルガスを吸入したのが原因でした(同館からのお知らせ)。このくん蒸剤は、独立行政法人文化財研究所(東京文化財研究所のHP参照)が認定している薬剤で、モントリオール議定書で使用規制された臭化メチルの代替品です。
同類事故としては、02年12月の 福岡県豊津町の歴史民俗資料館でのエキボン(臭化メチルと酸化エチレン混合剤)による作業員3人の中毒(記事t13607c参照)があります。また、04年7月、高崎市の観音塚考古資料館で、くん蒸処理後、ボヤ火災が発生しています(記事t15608a参照)。
博物館側は、数年前から文化財の害虫被害防止に総合的有害生物管理(IPM)を導入し、定期的な収蔵庫の殺虫作業は停止していたが、今回は、先年度大量に受け入れた民俗資料に害虫による被害の恐れが懸念されたため処理を委託した、としています。
★ダウ社の意見でポジティブリストに<br>
フッ化スルフリルは、日本では、02年4月1日に木材くん蒸用殺虫剤として農薬登録されています。食用作物に適用がないにも拘らず、ポジティブリストでは、33の農作物について、0.04〜3ppmの残留基準が準が暫定的に設定されました。
これには、以下の経緯があります。もともと、フッ化スルフリルはポジティブリスト一次案にはなく、パブコメの際、ダウ・ケミカル日本は次ぎの意見を提出しました。
『フッ化スルフリルはダウ・アグロサイエンスが創生したフッ素系化合物であり、日本では種類名「フッ化スルフリルくん蒸剤」名称「バイケーン」として木材のカミキリ類、キクイムシ類、マツキボシゾウムシ類のくん蒸のために農薬登録されている剤で、穀物の貯蔵害虫を駆除するために臭化メチルの代替剤として期待されるくん蒸剤です。本剤は今回の第1次案には含まれておりませんが、米国では2004年11月22日に下記作物に残留基準値(略)が設定されました。日本は下記作物の輸入を米国に大きく依存していることを考慮し、日本においても同作物に米国での残留基準値と同じ暫定残留基準値を設定をしていただくようお願いします。』
厚労省は、『ご指摘の通り、修正します』として、二次案では、残留基準が設定されました。これに対して、私たちは、アメリカしか使用しないフッ化スルフリルの残留基準を設定をしないよう求めましたが、受け入れられませんでした。
★アメリカの環境保護団体は食品への残留を懸念
アメリカでは、今年の3月、NAS(科学アカデミー)が、飲料水のフッ素化についての報告をだしました。アカデミーは、EPA(環境庁)のフッ素濃度基準4mg/L以下(日本では、フッ素の水道水質基準は0.8mg/L以下)に対して、2〜4 mg/Lでも健康への影響が無視できないと指摘しました。CDC(疾病予防センター)は、虫歯予防を目的とした飲料水のフッ素添加濃度1ppmは、体に影響を与えないとしており、既に、水道水のフッ素化が実施されているところが多々あります。
アメリカの3つ環境保護団体は、EPAの残留基準設定は、法律に違反している。さらに、飲料水や他の食品中に含有されるフッ素に加えて、新たに、ポストハーベスト利用されたフッ化スルフリル由来のフッ素(フッ化スルフリル中にフッ素は37%含まれる)を摂取することは、問題だとして、フッ化スルフリルとフッ素の基準撤回を求める請願書を、6月1日、EPAにだし、この請願を受けたEPAは、パブコメで、国民の意見を聞くことになりました。
★厚労省まかせの食品安全委員会
アメリカでの動きを知って、私たちは、残留基準等のポジティブリストにあるフッ化スルフリルのリスク評価を06年度中に実施するよう食品安全委員会に求めました。同時に、厚労省がADI等に関する情報を公開せず、勝手に、評価予定リストを提示したことにクレームをつけました(記事t17902参照)。
7月11日出した意見に対して、18日届いた回答は以下のようでした。
*** 食品安全委員会からの回答 ***
1.「暫定基準が設定された農薬等の食品健康影響評価の実施手順(案)」に関する
意見募集の際には御意見をお寄せ頂き、ありがとうございました。貴グループから
頂いた御意見については、食品安全委員会としての回答を行うとともに、厚生労働
省にもお伝えさせて頂きました。
2.暫定基準を設定した農薬等の食品健康影響評価の依頼は、食品安全委員会におい
て了承した依頼計画及び各年度の開始前に提出された年度計画に従い、厚生労働省
が計画的に行うこととされていますので、頂いた情報については、フッ化スルフリ
ルに関する情報も含め、厚生労働省にお伝えいたします。評価の優先順位の妥当性
については、食品安全委員会としても情報収集に努め適切に評価を行う予定です。
一方、食品健康影響評価の実施手順についてのパブコメへの意見(6件22の意見があり、当グループの5つの意見は、記事t17805参照)への回答は、後日にホームページに掲載されました。
厚労省に、評価物質の順位を決めるため、同省が把握している各国のADIや残留実態ほかの情報を提供するように求めて欲しいとの意見については、『ADIが設定されていないもの、摂取量が多いと推定されるもの等を優先的に評価対象とするとしています。なお、御要望については、厚生労働省にお伝えします。』との回答です。
結局、食品安全委員会は、すべて、厚労省まかせにするということです。
せっかく、内閣府に設置されたのに、厚労省の下請け機関であることが、明白になったとえいば、それまでですが。これからは、厚労省へ直接注文をつけていく必要があります。
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作成:2007-01-27