行政・業界の動きにもどる
t18407#有機リン系農薬の最近の動向−出荷総量は減っているが・・#06-12
★月刊「地球環境」の特集
日本工業新聞発行の月刊「地球環境」07年1月号(1400円)が、有機リン系化学物質の有害性リスクと題する20ページにわたる特集を組んでいます。てんとう虫情報181号で紹介した日本テレビのドキュメンタリー番組「カナリアの子供たち〜検証・化学物質過敏症」の活字版といったところです。
有機リン剤による化学物質過敏症の事例、無人ヘリコプター空中散布を中止した群馬県(記事t18004参照)の行政当事者やその根拠となった研究の紹介、地元で患者を治療する青山美子医師、厚労省研究事業として「微量化学物質によるシックハウス症候群の病態解明、診断、治療対策に関する研究」の報告書をまとめた石川哲先生のインタビューや当グループの新法提案などが掲載されています。
農薬登録には約30種の毒性試験が実施されており、使用基準を守れば安全とする農水省や石川報告をひとつの研究にすぎないとして、施策に反映させない厚労省に対し、有機リン剤は、予防的取組みを原理原則として、もはや規制すべき段階にきているとの姿勢が伝わってくる特集号です。
★増加した有機リン系農薬もある
取材された農薬工業会は、有機リン系農薬の慢性毒性が科学的に証明されていないとの立場ですが、リン系農薬の出荷量は、減少しており、原体ベースで、87年の13010トンが、03年には5049トンになり、この10年間に半減したとしています。
ちなみに、農薬要覧にでている有機リン系原体成分の生産や貿易数量を成分別に調べてみました。90年度と04年度を比較した結果は以下のようでした。
【出荷が減少した成分】BRP*、CVMP*、CVP*、CYAP、DDVP、DEP、ECP、EDDP、EPN、IBP、MEP
MPP、PAP、PMP*、SAP*、イソフェンホス*、エチオン*、エチルチオメトン
エトリムホス*、キナルホス*、クロルピリホスメチル、サリチオン*
ジメチルビンホス*、ジメトエート、スルプロホス*、チオメトン*
トルクロホスメチル、ピペロホス*、ピラクロホス、ピリダフェンチオン*
プロチオホス、プロパホス*、ホサロン、ホスダイフェン*、マラソン
モノクロトホス*。(*は、91年以後、登録失効した農薬)
【あまり変わらない成分】DMTP、イソキサチオン
【増加した成分】アセフェート、アニロホス、クロルピリホス、ダイアジノン、ビアラホス
ブタミホス、プロフェノホス、ホスチアゼート、ホセチル、メスルフェンホス
確かに、有機リン系農薬は、総量として減少していますが、街路樹などには、MEPやDEP、アセフェートなどがよく使われます。また、室内の害虫駆除に使われる殺虫剤も非有機リン系に転換がすすんでいるというものの、DDVPなどまだみかけます。身のまわりの有機リン剤として、ほかにも、インテリアや家電への難燃剤としての使用があり、これらの室内空気汚染も懸念材料であることを忘れてはなりません(記事t14104参照)。
【関連資料】渡部さんのホームページより有機リン再評価 − 化学物質の状態 (2007年4月8日現在)
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作成:2007-04-28、更新:2007-05-12